奥山さんの合コン。2
奥山さんはモテたい。
「でもさ、やっぱり合コンと言えば第一印象だよね?」
「奥山さんにしてはちょっと真面目?」
ビール6缶とパーラメントのショートが2箱が入っているコンビニの袋をがさがさ鳴らしながら、夜道を奥山さんとあかりちゃんは並んで歩いていた。
「あかりちゃんみたいにふわふわした可愛い感じに私もなった方が良くない?」
「いつでも可愛い感じになれる前提なんだね」
奥山さんの着ている黄色に象柄のTシャツと黒のクラッシュデニムをあかりちゃんは見つめた。
「半分だけ笑った顔で私を見てるよ、あかりちゃん」
「全力で笑っても大丈夫?」
「半分だけに遠慮しておいて」
この世界に神さまがいるのなら、その神さまは理不尽この上ない。栗色の柔らかく長い髪の毛に、白いレースの飾りがついたオフショルダーから見える陶器の様な白い肌、淡いブルーのふわりとしたスカートと花飾りのついたパンプス。
それがあかりちゃんだ。神さまはあかりちゃんの外見に女の子物質をうっかりかなり投入してしまったのだ。
神さまは理不尽、奥山さんは神さまをそう解釈している。
「奥山さん、人には向き不向きがあるんだよ」
「いや、私もあかりちゃんの服着たらあかりちゃん瓜二つだから」
「私の服着れないでしょ?身長何センチだっけ?」
「165ぐらい」
ヒールを履いているあかりちゃんとジャックパーセルを履いている奥山さん。並んでいるとその身長差は5センチ程あった。
「奥山さんのサバ読み範疇の広さにはいつも感心するよ」
「読んでないから、サバなんて読んでないから」
「背が高いの、いいと思うけどな」
あかりちゃんは、自分の頭から10センチ程程上に向かって手を伸ばした。
「どさくさに紛れて私を通常より大きめにしないでくれる?」
「でもほら、奥山さんは痩せてるしスタイルいいから」
「胸見て言わないの」
「大丈夫だよ、きっとたぶんもしかしたらひょっとして稀に奥山さんのことタイプって人が奇跡的にいるかもしれないから」
「可能性の低さしか伝わってこないのは気のせいじゃないのかな?」
神さまさえちゃんと女の子物質をしっかりと分配してくれていれば、身長175センチAカップにはならなかったに違いない。
「さっきは第一印象って思ったけど、ビールで打ち解けたら中身が重要になる気がしてきた」
「中身?奥山さんの中身?奥山さんの中身って何?ちょっと待って、奥山さんの中身って、え?」
「なんだろう、あかりちゃんて無声映画向きだとたまに思っているんだけれどあかりちゃんはどう思う?」
「奥山さんのそういうとこ、私は好きだよ」
「嫌われてなくてよかったよ」
星の見えない空は白く霞んだ藍色で、寂しげな街灯に照らされた街路樹の影がねずみ色のアスファルトにぼやけた色で映る。
「合コンのとき、あかりちゃんの服貸してくれない?」
「ごめん無理」
「否定だけ言葉少なめって説得力あるよね」
「うん無理」
あかりちゃんはふわふわしていて可愛い。それは知っているし事実だし現実だ。
「でもなぜか素直に認めたくない時もあるんだよね」
奥山さんはモテたい。