9話 ギルド登録と説明
俺は村の中をのんびり歩いていくと――。
やがて総合ギルドが見えてきた。
周辺の家と同じような大きさで、こぢんまりとした建物だ。
なんか思ってたのと違う。
これがギルドの看板か―。
盾の上に、剣と杖が交差したエンブレム。
俺は隠密を再度かけ直してから、ギルドの中へと入っていく。
ふむ。
ギルド内は閑散としたものだった。
村の中があんな感じだから、ある意味納得ではあるが。
職員以外には誰もいないな―。
入って右手には大きな掲示板があり。
そこには依頼と思われる張り紙が多数貼ってある。
――へえ。これが依頼か。
俺はそれらの内容に、ざっと目を通していく――。
ふむ。
低級は雑用や簡単な仕事が中心。
上位にいくほど難易度は高くなっている――か。
まあ。当たり前だな。
一方、入って左手には小さめの掲示板があり。
いくつかの注意書きがある。
えーっと、なになに。
―ギルド内での喧嘩禁止。
―ギルドメンバー同士のトラブルは自己責任。
―新人は大切に。
――などなど。
他にも細かく書かれているが、大まかにはこんなものか。
尚、それらに違反した場合は厳しい制裁があるのだとか――。
まあ、他のギルドメンバーには関わらないようにしよう。
今のところパーティの必要性も感じないしな。
「こんにちは。ギルドの登録をしにきました。」
受付の女性職員に声をかける。
「新規登録ですね。こちらの用紙に記入してください。」
――紙だ。何気なく渡されたが。
うーん。
紙は作るのに高い技術が必要だったはずだが。
よくわからない世界だな――。
まあ。いいか。
よし。名前、年齢、性別、種族・・・、一通り基本情報を書いてっと。
備考――討伐から採取、雑用まで幅広く依頼承りますっと。
こんなもんかな。
まあ。建前だ。ほとんど討伐しかするつもりはない。
用紙を提出し、ギルド内にある例の水晶で盗賊かどうか確認をした後、
ギルドに関する説明があった。
①ランク
全10段階。
大まかに3階級に分けられ、10~7が下級、6~4が中級、3~1が上級。
この階級の差は隔絶している。
これは魔物の階級差が理由だ。
下級、中級、上級と強さが跳ね上がるらしい。
中でも特に意味のあるランクがあり、7は中級見習い、4は上級見習いとなっている。
見習いとなると上の階級の依頼が請けられる。
比較的、安全な依頼を紹介されるらしい。
いいシステムだな。
そして俺は10の初心者だ。
まとめると、6と7、3と4の間には大きな壁があるということだ。
ランクアップには依頼達成時に貰えるギルドポイントが必要になる。
そして階級が上がる際には、何らかの依頼が条件で加わるのだ。
誰かと手合わせするとかはない。
明確に、ギルドに貢献できるかを評価するようだ。
②預金
9級以上の全ての者はギルドに口座をつくる必要がある。
開設や年間にかかる費用はなし。
依頼達成の報酬と、素材の売却金額が一律20%自動的に預金されることになる。
なぜ、こんなシステムがあるかというと。
それは依頼失敗の違約金に当てられるためだ。
失敗には様々な理由がある。期限切れ、逃亡、死亡、など...。
これらにいちいち対応し、それを徴収するのは面倒である。
そこで失敗と認められた場合に、自動的に引き落とされるというわけだ。
依頼を受ける際には、違約金に相当する金額が預金されていないと、依頼を受けられない。
そして依頼遂行中はこの金額分がロックされ引き出し不可となる。
当たり前だな。
③ギルド各種施設
受付について。
ここアーレ村のギルドでは、受付は1つしかない。
だが町や都市に行くと、中級は優先的に通すため専用窓口がある。
上級は別室があり個別対応となるようだ。
素材売却所について。
基本的にギルドメンバーはここで素材を売却することになる。
価格はその時の需要によって多少変動するが、そこまで変わらないらしい。
異常な変動がある場合は、ギルド内掲示板でお知らせがある。
④緊急依頼
拠点としている町や都市にはギルドに届出を出す義務がある。
緊急招集がかかった場合、強制的に参加となる。
遠くに依頼に出ていたり、戦えない理由がある場合は免除可。
その場合は事前に報告義務がある。やむを得ない場合は事後。
免除の条件は厳しく設定されており、逃げた場合などは除籍処分となる。
ちなみにこれまでの結果では、緊急依頼の多くは死傷率が極めて高い。
こうしたことから、有事の際に町を守るギルドメンバーは尊敬されており、
税金も一部免除されているのだ。
余談だが、商業系ギルドも似た様な義務があるらしい。
売り物の装備や食料、場合によっては金銭を町に徴収され緊急依頼に使われる。
ひどい話だが、ある意味で町や都市の存亡の危機なので仕方ないのかもしれない。
☆ ☆ ☆
大体まとめるとこんなものか。
迷宮についても一通り説明があった。
この界隈だとアーレの村周辺の森がそれに当たる。
なんでも迷宮は放置すると、成長し続け魔物が強くなっていくらしい。
最後には迷宮がなくなり、その魔物が溢れ出す。
こうした背景からギルドも、そのメンバーも。
この世界とは切っても切れない関係なのだとか。
――なるほどね。
まあ。俺は魔物を狩ってお金が貰えるなら、それでいいや。
最後にギルドカードを受け取る。
このカードを所持して魔物を狩ると、その討伐数が記録されるらしい。
なので討伐系の依頼は事前に請ける必要がないようだ。
無事登録も済ませ、依頼掲示板を確認にいく。
大兎と耳馬の討伐依頼がないか探すと、それらしいものを発見。
「これかな。」
―ハムラビィ 30匹 銅貨30
―ワードン 10匹 銀貨2、銅貨10
依頼書の説明もあの魔物に一致する。
お金になる素材はしっかりとストレージが回収してくれたようだ。
再度、受付にて討伐以来の報告を行い――。
合わせて素材も売却してしまう。
とりあえず今回は大兎の依頼2セットのみにした。
あまり目立ちたくないしな。
―だが。
残念ながら、今回の討伐依頼は達成にはならなかった。
うん。
ギルドカードを持ってなかったせいだな。
惜しいことをしたか・・・。
まあ、いいや――。
俺は特に気にもせず、仕方ないと諦めて――。
素材売却の金額だけを受け取って、ギルドを後にしたのだった。