8話 はじまりの村へ
休憩をとった後、俺は耳馬狩りを再開していた。
しかし大兎とはポップ数が違うのか。
馬はなかなか見つからず、まだ2匹しか狩れていなかった。
それでも粘り強く歩き回り、更に2匹狩り終えるとSPが1増えていた。
「今回は5匹か。まあ妥当なところだろう。」
大兎は10、50、100…だった。
この値の変化はポップ数と関係がありそうだ。
合わせてステータスも確認する。
サトウ キヨシ ――
男 18歳 健康
旅人Lv3
Lvが上がっている。
なかなか2から3へ上がらずに、ヤキモキしていたが。
耳馬の経験値がいいのだろうな。
そしてLvUPのおかげか。あるいは耳馬に慣れてきたのか――。
その後は特に苦戦することなく狩れるようになった。
ふむ。地図もかなり埋まってきたな。
こうして見るとかなり広い森だということがわかる。
さて、少しばかり自信もついたことだし――。
「そろそろ村に行ってみるか。」
今なら多少のトラブルがあっても、逃げるくらいならできるだろう。たぶん。
だがトラブルはない方がいい。
うーん。
念の為、隠密スキルを取得してからにしようか。
やはり異世界人は怖い。
こんな魔物達が跋扈する世界で暮らしているのだ。
俺の不安は尽きない。
門番の見た目は俺とそれほど変わらなかった――。
だがスキルや魔法がある世界だ。
見かけに騙されてはいけない。
☆ ☆ ☆
とりあえず大兎は今、合計150匹ほど狩れている。
今日の残りの時間でもう50匹ほど狩ってみよう。
ポイントが増えるかもしれないしな――。
大兎のエリアへと戻った俺は、それらをさくさくと狩っていく。
耳馬との戦いに慣れてきた俺にとって。
それはひどく物足りないものだった。
やがて目標数を狩り終えると、ストレージを確認していく。
≪ストレージ≫
・兎の肉×200
・兎の皮×200
・馬の皮×5
1,150ゴル
素材とゴルが増えてるな。
ゴルを取り出してみると、やはりお金だった。
銀貨と銅貨だろうか。
それぞれ11枚と50枚ある。
なるほどな。
1ゴル=銅貨1枚。100ゴル=銀貨1枚か。
よしよし。村へいくなら必要な知識だったはずだ。
一通り確認を終えると、辺りはすっかり暗くなっていた――。
部屋へと戻り、いつもの流れから食事などを済ませる。
寝る前にSPを確認すると、やはりポイントが増えていた。
「うん、大兎は200で合ってたな――。」
これで現在のSPは2。
早速だが、隠密を取得しよう。
いよいよ明日だな――。
明日に備えて、いくつか考えを巡らせていると。
俺はいつしか眠りに落ちていた。
☆ ☆ ☆
朝になった。
さっさと仕度を終えると、昼前に到着するよう余裕を持って出発する。
とうとうこの時が来たな――。
俺は気合を入れて門番と対峙すべく。
先日様子を伺った木の影へとやってきた。
――。
門番は先日見かけた女だった。
馴れ馴れしすぎず、無愛想にならないよう。
そして目立たないように。
いざ――。
俺は何食わぬ顔で木の影から出ると。
村の入り口へと続く道に出た。
そしてしばらく歩いていき――。
「身分証を出しなさい。」
俺に気づいた女は、声をかけてきた。
よし。言葉はわかるな。
しかし、そうきたか――。
「持ってない。山奥の田舎から出てきた。」
そんなもの持ってるはずもないので、俺は正直に答える。
苦しいかな――。
「そうか。それだと仮の身分証を渡すことになる。銀貨2枚だ。」
「わかった。」
銀貨2枚を手渡すと、俺はついてくるよう言われる。
「この水晶に手をかざしなさい。盗賊かどうかわかる。」
不思議そうにしていると、それが何なのかを教えてくれた。
盗賊かよ・・・。
いるんだな、そんなのも。
まあ。悪いことはしてないし大丈夫だろう。
俺は迷いなく手をかざす。
すると水晶は淡く光った――。
おい!!
「よし。問題ないな。」
―おいおい。光ると問題ないのか。紛らわしいな・・・。
俺の心臓がばくばくとうるさいくらいに音をたてる。
いや。
異世界に来て、いきなり盗賊認定とか洒落にならないからね。
「これが仮の身分証だ。3日間滞在できる。それ以上は更新しないと捕まるから注意するように。」
「正式な身分証はどうすれば手に入るのか。」
「いくつかあるが―。手っ取り早いのは総合ギルドに登録することだな。」
「そうか。ならばギルドにいくことにしよう。」
なるほど。ギルドか。やはり定番だな。
門番の女性にギルドの場所を聞くと、お礼を言って立ち去る。
しばらく歩いて離れた所で――。
俺はすぐに隠密スキルを発動した。
どれほど効果があるのかわからんが。
一応念のためだ。
俺は村を見渡しながら、のんびりと進んでいく。
――。
あまり人は見かけないな。
たまに畑で農作業をしている人がいるくらいか。
長閑なものだ。
「―ふう。」
これだったら森へ行かずに、すぐ村へと来た方が良かったかもな。
少し警戒しすぎだったかと考えながら。
俺はギルドへと歩いていくのだった――。






