7話 森の奥へ
次の日、朝食を食べながら予定を立てる。
午前は大兎を50匹ほど狩ろう。Lvが上がるかもしれない。
そして午後は、森の奥へ。
うん。それでいこう。
「よし。出かけるか!」
俺はマイルームから森へ移動すべく念じると、周囲の景色は一変した――。
ここ2日篭った森は、今日も代わり映えしなかった。
慣れたもので我が家の庭のごとく進んでいく。
お、いたいた。
俺は見つけた大兎に真っ直ぐ向かっていき――。
勢いそのままに剣を振り下ろし、袈裟斬りにする。
一丁上がりっと。
油断しないようにしないとな。
同じことの繰り返しで、つい気が緩んでしまう。
さて、次だ次。
――。
その後もさくさくと狩っていった俺は―。
少し早めの昼食にするべく部屋へと戻った。
これで大兎は初日から合計150匹狩ったはずだ。
予想していた通りSPは得られなかった。
前回が100匹だったから次は200匹か、それ以上だろう。
剣術はスキルのお陰でかなり上達していた。
取得前は素振りをしても、剣に振り回されているような感じだったな。
まだ剣を自由自在に――、とまではいかないが
これならもっとましな戦い方ができる。
少しは剣士らしくなったかな――。
地図は一通りこの辺りのエリアを埋めた。
方角も示されるため、森の奥でも迷うことはないだろう。
☆ ☆ ☆
しっかり休息をとった俺は――、
新たな狩場を開拓すべく森の奥へと入っていった。
――。
ふむ。
森の様子にあまり変わった印象はないな。
しかし魔物の様子には変化が。
今まで狩っていた大兎は見かけなくなり、代わりに馬のような魔物を見つけたのだ。
うん。見た目は馬だな。
ただし耳以外は――。
耳だけ異常に大きく発達しており。
目に邪魔にならない様、やや後方に向いていた。
さらにその付け根も普通の馬とは異なり発達している。
そして――。
その耳で察知したのか、馬はすでにこちらの方を向いていた。
警戒しているようだ。
それに逃げる様子はなく、しかし向かってくることもない。
じっと、こちらの様子を伺っている。
やるか――。
俺は剣を取り出し構えて、馬へと近づいていく。
すると耳のでかい馬――耳馬がこちらへ体を向けるのが分かった。
ゆっくりと歩いてこちらへ向かって来る。
そう。
それは攻撃前の予備動作だ――。
耳馬は突進の構えをみせると勢いよく地を蹴った。
「フ”オ”ォォーー」
低くうなり声を上げると体を躍動させ向かってくる。
その首は軽く縦に上下しながら――。
しかし体の軸は全くブレない。
さらに耳は大きく揺れており、その姿には迫力があった。
ちょっと。
温厚な大兎からランクアップしすぎだろ。
その迫力に、後ろ向きになりそうな己の気持ちを必死に奮い立たせ。
集中を高める。
――突進をかわし、剣を奴の首筋へ
目前へと迫り、突進の命中を確信した耳馬が頭を僅かに下げ――
俺は体を捻るように、紙一重でそれをかわす。
いや。少しかすったか・・・。
さらに避けた勢いで転んでしまった。
急いで体を起こし僅かに距離をとる。
再度、突進してきた耳馬を再び右へかわし――
ここだ―!
体勢を崩すことなく全力で剣を振るった。
何かに食い込む感覚が手に伝わるが、そのまま振り抜く。
――。
ただ必死だった。
その心は無に近い状態だっただろう。
命と命の鬩ぎ合い。
俺はそれに勝利したのだ。
そして――。
気がつけば、俺は耳馬の首を切り落としてた――。
頭はその場にボトリと落ち、残った体が崩れ落ちる。
辺り一帯に血の匂いがムッと広がるのを感じた。
――。
えっ。
一撃かよ、すごいな俺。
じゃなくて。
剣術スキルの恩恵だろうか。それにしては・・・。
耳馬の体が光となって消えいく――。
うーん。
まあ。いいか。
うまくいきすぎた感じはあるが。
一休みして次だ、次。
俺は勝利の余韻もそこそこに、新たな獲物を探して。
その場を後にしたのだった。