55話 襲い掛かる森
これはマズイ。まさか対集団戦になるなんてな。
王都南の森の迷宮にやってきた俺は、今まさに死地にあった。
周囲は魔物の木である、3体の魔樹に囲まれ。
さらにそこへ2体の魔樹と思われる魔物が近づいてきていた――。
「くっそ・・・。ヤベえな。」
3方向からの攻撃に俺は回避に専念して、チャンスを伺う。
しかし地中からの根の突き刺し攻撃に、次第に追い詰められ――。
必然的に、残された1方向へ下がりつつあった。
今まで、まともな集団を相手にするような戦いはしてこなかった。
唯一は王都へやってくるときに戦った盗賊くらいか・・・。
しかし、あれは事前にそれを知っており。
こっちが先手で仕掛けられたことが大きい――。
それで約半数を無力化できたしな。
言ってみれば、運が良かったのだ。
だが、今回は――。
正直に言えば油断していた。
相手の姿が見えず、躊躇したことが今の状況につながっているのは明らかだ。
そして魔物の強さもエスタ北の迷宮に比べて、急に強くなった気がする。
おそらく、弱点と思われる火魔法の攻撃を受けて――。
杖なしとは言え、魔力を込めた一撃だぞ。
その耐久の高さは翼鹿に迫るものがある。
そうだ。
翼鹿だ。それを3体相手にしていると思えば、なんてことはない。
それほどの脅威は感じられないな。
だが今回は、更に2体が近づいてきている今――。
ここは引くしかないだろう・・・。
やられたぜ。完全に俺の敗北だ――。
「くっ・・・。よし、今だ。」
魔樹3体の攻撃に途切れが見えた一瞬を、俺は見逃さず。
敵のいない後方へ、その身を翻すと。
脱兎の如く駆け出した。
格好悪いが仕方ない。
ここは逃げの一手だな。
既に俺の太股は青ポーションを飲んでいたので、回復済みだ。
俺が逃げたことを察知した魔樹達は、その巨体を揺らして悔しがる。
やはり、その移動能力はかなり低いようだ――。
地中に根を張りながらどうやって動くのか疑問だが・・・。
よく見ると、水の中を泳ぐようにゆっくりと地面を移動している。
うーん。
魔法的な何かだろうな――。
まあ、いい。
一先ず撤退だ。
覚えておけよ!!
そう。
悔しいのは、オマエ達だけじゃないんだよ・・・!
――。
☆ ☆ ☆
十分に魔樹の集団から距離を取った俺は、一度気を落ち着かせるべくマイルームに戻っていた。
―ふう。
「しかし、ひどい目に遭ったな・・・。」
まあ。自業自得だが。
今回の敗因を挙げていくと――。
まず索敵の甘さが原因だろう。
まさか、迷宮に入っていきなり3体に囲まれているとはな。
さらにここの魔物は仲間を呼ぶ可能性が高い。
所謂、リンクシステムとでも言うべきか――。
近くにいたら大変なことになっていたが。
元々3体がいた場所だから、他の魔樹が離れた場所にいたのだろう。
唯一良かった点は。
早々に撤退の判断ができたことだろうか。
このエリアの特徴は掴むことができしな――。
次からはしっかりと索敵して、1体だけの魔樹と戦っていこう。
うん。
戦闘時間は極力少なくしないとな。
それと――。
初めて実践投入した新装備だが、その使い心地はなかなか良かった。
剣の斬れ味は明らかに増していて。
全体的に重量の増した装備は、俺の負担になる程ではない。
太股が貫通したことは残念だったが。
あの槍のような根の攻撃には、耐えられないのも仕方がないか・・・。
一応、鉄製なのだがな。
まあ。あの程度の傷で済んで良かったかもしれない。
―よし。
飲んでいた水を消去すると。
俺は再戦するべく、森へと戻るのだった――。
――。
それからというもの。
俺は安定して魔樹を倒せるようになっていた。
一体だけいる魔樹に、魔法使い杖持ちで魔力を込めたファイアーボールを打ち込む。
その後、剣士に変えて弱った所にトドメを刺すと――。
いちいち職業変更するのは面倒だが、魔力を温存するためだ。
ボス戦のように待ち時間があって魔力が回復できるなら。
ずっと魔法使いでもいいのだがな・・・。
次々と狩っていくこの場所では、それはできない。
そして――。
1つだけ気になることが。
当初、魔樹は俺の隠密スキルで気づかずに先制攻撃を受けていたのだと思った。
しかし、どうもそれは間違いで。
俺が攻撃をするまで、魔樹の方から襲ってこないことが分かったのだ。
元々そういう特性を持った魔物らしいな。
こういうのゲームだと、なんだっけ。
そうそう。
ノンアクティブとか言ったりするよな。
俺を見つけたらすぐに襲い掛かってくるような、好戦的な魔物をアクティブ。
一方、こっちが攻撃するまでは敵性反応を示さないノンアクティブがある。
そして、一度敵となれば――。
周囲の仲間を呼びながら戦うというスタイルだな。
ま、一度種が割れてしまえばこっちのモノだ。
この調子でどんどん狩っていこうかね。
俺は次の魔樹を探すべく、さらに森の中を進んでいくのだった。
【55話終了時主人公の装備】
武器:鋼製の剣
体腕:鋼製の鎧+鋼製の腕装備一式
頭 :鋼製の兜
手 :鉄製の篭手
足 :鉄製の足装備一式
指 :筋力の指輪<アクセサリー>
指 :知力の指輪<アクセサリー>




