ムサ人との出会い
一、ダルマの地球
上空へ300メートル、500メートルと上昇して、地上を見下ろすと、真っ青な空の下に、地平線がくっきりと、何処までも長く広がって見えた。
その真ん中から、眩しい程の太陽が、少しづつ顔をのぞかせてくる光景は、何とも言えない大自然の空想世界に居る様うに思えたのである。
そんなロマンチックな自然のなかへ、頭から突っ込むように太陽に向かいスピードを上げて飛んでいったのである。
どれほど時間が経過したのでしょうか、遥か前方、地平線の中央から、ポッカリと巨大なオムレツを横から眺めるような、なだらかに盛り上がった丘のようなものが顔を出してきた。
利郎が、「あれは何だ」と皆んなに尋ねるように、一人ごとをつぶやき、スピードをあげ、どんどん近づいて行くと。
それはそれは、今まで見た事も、聞いた事もない、大きく横に広がっていて、近づいて行くと、ますます広大に見えてきて、とても直ぐに表現できそうもないが、強いて言うと、地球に巨大な瘤が出来たかのようである。
そんな驚きの状況を確かめようと、高度を1000メートル程まで上昇した頃でしょうか、なんと地球の上に、もう一つの地球に似た、惑星が乗っかり、巨大なダルマのように見えたのである。
二、惑星へ着陸
利郎が「惑星がみえたぞー」と大声で叫んだ。
英二が「いよいよ惑星へ行くぞー」と叫ぶと皆んな、ドキドキわくわくしながら、スピードを上げて、渡り鳥が、ゆうゆうと空を飛ぶ如く、惑星の上空へ目指して急いだ。
数時間も飛んだ頃、ここが惑星の上空なのだろうか、下界を見渡すと、緑の濃い海藻の平原のように見えるところや、紫色や黄色の花畑が何処までも続く、なだらかな丘陵地帯が見えてた。
地球とは、全く違う別世界に見えたのである。
あまりにも美しい情景を、目のあたりにして、皆んなが奇声を挙げるどころか、声も出ず夢の中の状態が続いた。
その後スピードを落とし、ゆっくり進むと、前方に広く小高い草原らしき丘が見えてきたのである。
「よし、あそこが良い」と、利郎が声を挙げた、つづいて皆んなが「よっしゃー」と、一斉に声を発し、その丘を目掛けて降下した。
ゆっくりと、恐る恐る安全を確認しながら、ようやく着陸が出来たのである。
そこは、なんと地面はマットに、飛び降りた様な感触でふわふわ、その周りに、生える草のような植物は、海の底に生える海藻のようでもあり、茎のない大根の葉っぱの様にも見えて、地球に生える植物とは、全く異なる物ばかりである。
さて、やっと着陸出来たことか、皆んな少々疲れ気味で寝たい気持ちになった。
日出男が「あー疲れた」と、つぶやくと、皆んなも一斉に横になり、自然に寝てしまったのである。
三、ムササビ人間(ムサ人)
それから何の位、時が経った頃でしょうか、皆んなが寝静まったころ、「ピーピー、ガーガー、ギャーギャー」と、動物園で、よく聞く鳥やサル、それにアヒルの鳴き声のような、騒がしい声がして、英二が目を覚ました。
「なんじゃーこれは」と、大声を上げると、ほかの4人も一斉に目を覚まし、夢でも見ているかのように、ぼーとしながら「いったいどうなっているの」と、口々に言いながら、周りを見てびっくり仰天。
顔は、類人猿、腕はムササビ、足は二本の太ももが繋がり、やはり身体はムササビのように見えて、ちょうど今の我々に似た体長、体型の生き者である。
今後、ムササビに似ていることから(ムサ人)と呼ぶ事にした。
そのムサ人が、10体ほどが直立して、我々5人を輪になって囲み、不思議そうに見ているのである。
皆んなが、目を覚ましたところを見て、ムサ人のリーダーらしき者が何か言い出した。
利郎がリーダーに見えたのか、顔を覗き見るように「ピーピー」言いながら手を上に挙げたり、地面をさして、何か質問している様にみえた。
利郎も、皆もそのムサ人が、一生懸命尋ねる、手振りをみて想像できた。
「何処から来たの」と、聞いているようなのだが、今までの、経過状況からの説明は、とても無理のため、単純に地球から来た事を、説明しようと、指を空にさして、両手で大きな大きな丸を描き、地球を表現した。
地球と言うところから、ここに来たとこを、地面を指差して、説明したのだが、そのしぐさを見て、ムサ人は「ガーガー」と、言いながら首を縦に振り、うなずいた。
理解出来たのか、解らないが、手振り身振りで、なんとなく互いに、通じるようである。
すると、こんどは、ムサ人が「ピーピー」言いながら、自分たちを指差し、また遠くを差して、両手で泳ぐような振りをしたのである。
僕たち5人も、その手話の様なしぐさを見て予想が出来た。
多分、我々の住む村に、来ないかと、言ってるようである。
ムサ人の真剣な説明を見て、納得したかのように、利郎が「ギャーギャー」と言いながら、僕たちも真似をして、皆んなで、「ギャーギャー」と、言いながら首を縦に振って了解した事を示したのである。
それを見て、ムサ人のリーダーが両手を挙げ万歳をすると、それを見て我々も一斉に万歳をしたのである。
ムサ人のレーダーが、「ガーガー」と、言いながら、よし行くぞと言うように、上空に向かって手を振り、先頭で飛び立つと、我ら5人も一斉に後を追い、その後、ムサ人達は、我らを守るように囲み上空へ舞え上がると、目的地へ向かったのである。
ムサ人の声、しぐさ、真剣な表情や、振る舞いを見ていると、利郎を始め、僕たち皆んなも、ムサ人は、なんと誠実で、信頼出来る人達なのだろうと、思わずにはいられなかったのである。