君とみる星
魔理沙が可愛い回です。
まあ、妖夢ちゃんの方が可愛いけどな!
「なあなあ、こーりん!」
僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。そうだ、ちょっと紹介が必要だろうね。
僕は森近霖之介、香霖堂の店主をしている。とはいっても、なんかガラクタ置き場みたいになっている。
いや、けっして使えないわけではない。使い方がいまいち分からないのだ。用途までは自分の能力で確認できる。しかし、ここにある"掃除機"というのもそうだが、この棒とエンジンでどうやって動かすというんだろう?
そうだ、例えばこれなんかも...
「無視するなよ!」
バン!と机を叩く音、目の前には黒い服装に身を包む少女。
「聞こえてるよ、魔理沙。」
一応、うちの常連。ちなみに、ツケがかなり貯まってるから出禁にしたい。
「そんな感じだから客が来ないんだぜ!」
「ツケを貯めまくってる客の態度ならこれくらいがお似合いだろ?」
「大丈夫、借りてるだけだから!」
「その借りてるで幾度となく被害が出てるんだが...」
本は汚され、この前まであった"ゲーム"も破損していた。
「小さいこと...気にしちゃいけないぜ。」
「かっこよく言っても許されることじゃないからな。」
まったく...これだから魔理沙は...
「こーりん!」
「うん?」
「今日はなんの日か覚えてるか?」
あれ、今日は何か特別な日だったっけ?
「...誕生日だったっけ?おめでとう、魔理沙。」
「この前誕生日やったばっかりだろ?そうじゃなくてさ...」
なんだよじれったいな、早く言ってくれよまったく...
「本当に...覚えてないのか?」
上目遣いで見られ、ドキッとする。落ち着け、相手は魔理沙だ。まだまだこどもじゃないか。
しかし、なんの日だったっけ?
「う~ん...なんだったっけ...」
全然思い出せない。本当に分からん。
「なぁ魔理沙。今日は何かあったっけ?」
...あれ?なんで魔理沙震えているんだ?
「...いや、私の言ったこと忘れてくれ。」
「お、おい、魔理沙!」
魔理沙は帰っていった。結局、何だったんだろうか?
「しかし、帰るならせめて読んだ本くらいは片付けてくれよ...まったく...」
本はバラバラ、座っていた椅子にはまだほんのり温もりがある。
「本棚に戻すくらいはやってほしいもんだ...うん?」
ひらりと何かが抜け落ちる。
「...」
さて、片付けをさっさと終わらせるか。
「はぁ...」
あいつ、何も覚えてなかった。
何年も待っていたのが馬鹿みたいだった。
「あぁ、もういいや。」
寝てしまおう、寝て起きれば嫌なことだって忘れてしまうだろう。いっそこのまま、全部忘れてしまえば...
"こーりん!キラキラしてる!すっげー!"
あの頃の笑顔が思い浮かぶ。
優しく微笑んでくれるあなたがいてくれる。
"...コツン"
"......コツン"
「...なんだ、この音?」
窓から何かが聞こえてくる。なんだ?
「よっ!」
小石を投げて窓に当てている。こんな時間だからか、ドアをノックしても出てくれないので、おそらく寝たんだろう。
なので、小石投てきしてます、霖之介です。
「しかし、やっぱり怒らせちゃったからかな、全然反応してくれない。」
多分、嫌われてるなこれ。
「これで最後にしようか...よっ!」
その時だった。
ガラッ!
窓が勢いよく開く。
「あっ...」
「えっ?」
魔理沙の頭に小石がクリーンヒット。
そのまま魔理沙はフェードアウトしていく。
「魔理沙、大丈夫か?」
「...」
返事がない、ただの屍の...
「誰が屍だ!」
「おお、生きてる生きてる。」
「大体、こんな暗いのになんだって言うんだよ!」
「...昔の約束を守るために来たんだよ。」
"大きくなったらまた一緒に見ようぜ!"
...ちょっと遅すぎ。
いっつも本ばかり読んでてつまらない奴。
いっつもガラクタばっかり集めてくる変な奴。
だけど、...
"そうだね、なら次は..."
「...思い出してくれたんだな。」
「常連の約束を破る訳にはいかないからな。」
"十年後かな。そうしたら君もだいぶ大人になってるだろ?"
「とは言っても、十年も前なら忘れちゃうだろ。せめて一言ヒントくらいはほしかったよ。」
「本当に忘れてたのかよ!」
「君が見てた本の中にあったこのしおりを見て思い出したんだよ。」
"みて、こーりん!昨日の星の絵!"
「いやー、あの時の君といったら...ふふ。」
"うわーん!お茶こぼれたー!"
「大泣きしたもんだから、ビックリしたよ。」
「余計なこと覚えてんじゃねぇ!」
そのあとだったっけ?
しおりにして渡したら笑顔になってくれて...
「霖之介...あたしは...」
大人に見えるか...?
「何か言ったかい、魔理沙?」
「いや、なんでもないぜ!」
そうだ、今から望遠鏡を用意しよう。
そして、こーりんと一緒に星を眺めるか。
「ちょっと待っててくれ、今からそっちに行くから!」
わくわくしながら階段を駆け降りる。
"大人になったな、魔理沙。"
僕だってこういう甘酸っぱい話作りたいんです。
あ、リハビリも兼ねてやってます。