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脱・無職(ニート)宣言~25歳童貞アイドルになる~  作者: 七星てんとう
第一章~父の帰還、立塞がる壁~
7/21

01

 


 目が差し込んだ光に慣れ、視界が開けた瞬間…俺は戦慄した。

そこには昨日と同じくおっさんが倒れているのである。


「ひ、ひぃ!おっさん!大丈夫か!?」


これは殺人事件であろうか…スリルとショックとサスペンスが…

この件は昨日もやったからいらないのである。


俺はとりあえずおっさんに駆け寄り、おっさんを足でつついてみた。

おっさんは『うーん…まだ…あと5分』と唸っていたのでそのまま放置する事にした。


それにしてもだ…どこにも見当たらないのである。

社長の机の影も、よく分からん気持ち悪い銅像の後ろも、禍々しい植物の後ろも探したが見当たらないのである。


俺の保養要員(オアシス)、高梨百恵の姿がないのである。

俺はすぐにおっさんの胸倉を掴むと揺らしながら尋ねてみた。


「おい、おっさん、百恵さんは…百恵さんはどこだ!!!」

するとおっさんは相変わらず目も開けず不満げに眉をしかめた。


「うぅん?百恵…?あいつは家でまだ寝ているよ。秘書と肩書きを持ったニートなのだから。」

おっさんはそう呟くとまたすやすやと寝息を立て始めた。


すやすやと寝息を立てるおっさんの隣で俺は地に伏し、絶望した。

まさかあの美しい方がここに来る事のない人だったなんて…終わった。俺の人生、終わった。

神様は一体俺になんの恨みがあるのであろうか…。こんな仕打ちひどすぎる…。


「あ、あのぉ、だ、大丈夫ですかぁ…?」


俺はその甘ったるーい声に地に伏せていた顔をゆっくりと上げた。

そして、顔を上げていくと俺の視界に映り込んだのは立派な乳袋であった。


「うっはぁ!ナイス乳袋!!!!!!!!ちちぶくろ!!!!!ふぉぉぉぉぉ!!!!!」

思わずそう叫んでしまうのは男の本能であろうか。


「へ!?ち、違いますぅ!わ、私は、わ、私の名前は…い、池袋(いけぶくろ)です!」

「あ?」


思わずその巨乳に見とれてしまったが更に顔を上げるとそこにはまだ幼さを残した顔立ちをした女の子が恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。童顔巨乳!童顔巨乳とはコレ如何に!!!!

この女神は誰であろうか。絶望のあまり生み出してしまった幻覚であろうか。


「彼女は、池袋(いけぶくろ)くるみ。我が社のグラビア部門に所属するタレントだよ。いやー、すまんね、園原くん。僕とした事がどうやら眠っていたようだ。…なんか、新入社員に足蹴にされたり、胸倉掴まれたりする夢見たんだけど、夢かな?」

「夢です。夢に決まってるじゃないですか!」


俺の必死の弁明にいささか不満そうな顔を見せたが、おっさんはゆっくりと起き上がると、スーツのほこりを払い、社長の机に腰掛けた。

それから俺と乳袋さんを手招きし、机の方へ呼び寄せた。


「池袋さん、レッスンルームには全員集まっていますか?」

「はい!えぇと…全員集まっています…。」


「よし、では…挨拶が遅れました、私、芸能プロダクション ウォルズ 社長の高梨孝雄(たかなしたかお)でございます。本日よりわが社の復興を掛けてアイドルプロジェクトの方をどうぞ、よろしくお願いします。ちなみに、これ以上タレントを雇うお金もないので、現在、我が社に所属しているタレントを使ってのアイドルグループの作成になります。あと、私にはアイドルの知識がございませんので、全て園原くんにお任せしますので、そこの所をご承知の程どうぞよろしくお願いします。」


おっさんは急にかしこまったようにそう言うと深々と頭を下げた。

俺も思わずつられて頭を下げてしまった。

隣で乳袋さんも戸惑いながら頭を下げた。おそらく社長の席から見える彼女の谷間は絶景であろう。クソゥ。


「あ、おっさ…社長!ここの所属タレントって言うのはどのレベルの人材なんでしょうか…?」


「ふむふむ、さすがですね、園原くん!良い質問です。我が社のタレントは皆、ルックス重視で採用しております。ゆえにルックスだけは皆、天下一品です。私はかなりの面食いでしてね、可愛い女の子が大好きなのですよ。ムフフ!という訳でルックスだけなら保障できますよ!」


そうか、確かに百恵さんといい、この乳袋さんといい社長の趣味はかなり良いものと思える。

が、しかし、ルックスだけ…という言葉がかなり引っかかるのである。


「まぁ、安心してください。我が社の最後の砦でもある女優部門の"風祭(かざまつり)"は歌もダンスも上手くポテンシャルはかなり高いです!まぁ、プライドも高くてかなり扱い難いんだけどねぇ。ムフフ。というわけでよろしくお願いします。ささ、池袋さん、園原くんをレッスンルームに案内してあげて!」


おっさんにそう言われると乳袋さんは驚いたように体をビクつかせた後に、俺の方をチラっと一瞬見るとすぐに回れ右をした。

「は、はい!えぇと、園原さん、こっちです。」


俺は彼女の後ろについて薄暗い廊下へと足を踏み出した。




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