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何故断ったかって?
そんなの簡単である。
社長が過労で倒れる会社なんてブラック企業でしかないのである。
俺は、そんな過労で倒れるようなブラック企業で働きたくないのでござる。
しかも、倒産寸前という事は当然給料も低いはずである。
どうせ働くのであれば、出来るだけ高賃金で尚且つ楽な仕事をしたいのだ。
人と関わらないオフィスワークで、朝10時出勤の17時退社、残業はなし、これで月給45万円はほしいところである。
『あの、待ってください!!!!』
振り返るとそこにはまさに俺好みの女性が立っていた。
彼女が待てと呼んだのは俺であろうか?いや、俺しかなかろう。
今、ここには俺しかいないのだから。
栗色の長いユル巻きウェーブの柔らかそうな髪、ちょっと気弱そうに見える眉毛と可愛らしいタレ目、そこにエロさをプラスさせる泣きぼくろ。
ピンク色のニットワンピで強調される巨乳、そして、そこから伸びる黒タイツに包まれたエロイむちむちの太もも。
俺はこの女性が家庭教師もののAVに出ていたら間違いなく手にとってしまうであろう。
この人は間違いなく自分の武器を理解している。
という事はどうでもいいのだ。
俺が立ち止まるとその女性は嬉しそうにこちらへと小走りで近づいてきた。
揺れるピンク色の乳袋が俺に迫ってくるのだ。艶かしい。実にけしからんのだ。
「あの、私、こういうものです。」
女性は俺に名刺を差し出した。
俺はそれを受け取るとじっとその名刺を眺めた。
【芸能プロダクション ウォルズ 秘書 高梨百恵】
秘書!こんな人が秘書だなんて…けしからん!実にけしからん事務所だ。
「今日は私の旦那を助けてくださり、本当にありがとうございました。」
彼女は深々と頭を下げた。
…旦那…?旦那ってさっきのおっさんか…?
つまり…美人人妻秘書…!?コレ如何に!!??
「うちの旦那が勝手な事を言って困らせてしまったのですよね?…すみません。それで、園原様は本日どのような御用時でうちの事務所にいらっしゃったのでしょうか?それを伺ってないと旦那に言われまして…急いで追いかけて来たのですが…。」
俺は何をしにあの今にも崩れそうな芸能事務所へ足を運んだのだろうか。
あぁそうだった、あまりにも仕事が決まらなすぎて自暴自棄になっていたのだ。
だから、あんなトイレの落書きを見て神の啓示だなんて血迷ってしまって…。
「へ?あ、えーっと…別に…トイレに求人あったから…受けようかなって…ノリで来たっていうか…その…。」
俺がそこまで言うと高梨百恵は俺の手を両手で握り締め、ズイっとその手を自身のその豊満な胸に近づけた。
「やはりそうでしたか!私もあなたに出会えたことに運命を感じていたのです!ぜひ、わが社で働きませんか!?いえ、働いてください!わが社を助けてください!」
数センチ先には巨乳なのである。
なんだか甘いいい香りがするのはシャンプーであろうかコレ如何に。
と、そんな事はどうでもいいのだ。
この台詞は先ほども似たようなのを聞いたのである。
しかし、キレイな女性に言われるのとおっさんに言われるのとではこんなにも胸の高鳴りが違うものかと現実の厳しさのようなものを実感した。
しかし、先ほども言ったように俺は、社長が過労で倒れるようなブラック企業で働きたくないのでござる。
俺が求めているのは純白真っ白なホワイト企業なのである。
俺は一つため息を漏らすと真っ直ぐと高梨百恵の目を見つめた。
――そして、最高のキメ顔を作ると口を開いた。