表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「さようなら」の後は、  作者: 汐月 羽琉
プロローグ
1/32

常識、正常、そして普通

 ――『常識』って言葉は、いつだってあやふやで、不確かだよね。



 あなたはいつものあたたかな笑みを浮かべながらそう言った。


 たとえば平和な今の日本なら殺人は大罪だけれど、少し前の戦争をしていた日本でなら、それは『異常』ではなく『正常』だったのだと。



 ――世の中の『常識』とか『正常』とか『普通』なんて、いつだって大多数の人間が形作るんだ。



 そう教えてくれたのもあなただ。


 たとえば自分では赤だと思っていてもそれを白だと嘘をついたとして、周りからの賛同が得られてしまえば、『正しかった』はずの赤はその瞬間に『誤り』になる。

 同じように、正解は『1』でも、大多数が『100』だと言えばそれが『常識』になる。



 ――人間の世界なんてそんなものだよ。



 あなたはまた笑ったのだ、確か。



 ――そんなの横暴よ。



 呟く私に向かって。



 その時々によって移り変わり、誤りが正しいとされてしまうなんて、『常識』なんて必要ないじゃないか。


 それなのに周りはこぞってそれを押しつける。

 自分の信じるものが『常識』なのだから、それをお前も信じて当然なのだ、と言わんばかりに。間違っているかもしれないのに。



 ――そうかもしれないね。



 憤る私にまた穏やかに笑って、あなたはあなたの世界に向き直ったのだったかな?

 『カンバス』という、あなたしか創造できず、あなたしか完成させられない白くて小さい世界に。



 ――そう思うのなら、信じ通せばいいんだよ。君の信じる常識を。正常を。



 真白かったカンバスは、あなたの筆の動きによって色づいて。きらきらきらきらと、輝いていた。



 ――それでいいの?

 ――いいと思うよ。おれはね。



 穏やかな笑みは変わらず、深められていって。



 ――……その常識がもし、間違ってたら?



 次の答えこそが、私の心に強く刻まれている。



 ――その時は見直せばいいんだよ。言っただろう? 常識なんていつだって曖昧で、不確かだ、って。








   ――それまでの間違っていた自分に「さようなら」を告げて、

   「さようなら」の後は、


   新しい自分に「こんにちは」って告げればいいんだよ――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ