〜一年後〜
ギルが王位に就いて約一年経った。
改正された法令により、ウルフレアは活気を取り戻した。それこそ生まれ変わったかの如く。
城下町の大通りは通行人で賑わい、立ち並ぶ店も繁盛しているようだ。
「あら。あれギル様じゃない?あそこにいらっしゃるの」
「本当だ。ギル様だわ。相変わらずねぇ」
忙しい日々の束の間の休息をカフェで楽しんでいる主婦達の会話に挙がったのはこの国の王、ギル・ヴォルフ・ウルフレイである。
王位に就いたというのに、彼はよく街を彷徨いているのだ。
これはこの国の変わっているところでもあり、慣れというものもあって、今ではそんな(ある意味)不思議な光景も普段の景色として馴染んでしまっている。
「ギル様!寄っていきません?ちょうどパンが焼きあがったところですよ」
王に声をかける店も多い。
「ギル様、デートですかい?」
たまにそんな話題まで聞こえてくる。
「ギルさま〜!」
「ギルさまだー!!」
終いには小さな子供達まで寄ってくる。
周りは幸せで溢れていた。
これこそが、この若き王が10年かけて取り戻したモノである。
この国が、この活気が、民の笑顔が、幸せが。
……そして、
「ギル」
隣りを歩くユイが笑いかけてくる。
ギルもそちらを向くとふわりと微笑んだ。
無表情だった王にも笑顔が戻っていた。
END
ギルの表情筋が初めて仕事しました。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。