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〜抵抗運動幹部会議〜


 ジャンは夕飯を食べながら今ウチに泊まっている男を観察していた。姉が連れてきた旅の傭兵だ。


 名前はギル。黒髪に黒い瞳、顔に古傷のある20歳。ジャンより3つ上、姉の2つ下だ。左耳に紅玉から銀狼の毛が垂れるイヤーフックを着けている。そして基本無表情装備。

 姉が一目惚れして連れてきたこの男を観察し始めて三日目だが、どうやら優しくされる事には慣れていないという事はわかった。姉が世話を焼く度にどぎまぎしている。

 あと時たまボーッと遠くを見ている。…のと、なんとなく訳あり臭がする。

 それとこの男、色事には少し鈍いようだ。姉の猛アピールに気付く様子もない。

__喜ぶべきか悲しむべきか……よし、もう少し様子を見よう。

 ジャンはギルの観察を止めて立ち上がると一階へ降りた。一階は姉が経営している酒場だ。

 ギルは今のところ仕事がないようで、この三日間姉の手伝いをしている。まあ、姉は嬉しそうだが。

「よう、ジャン。なんか情報入ったか?」

 もうとっくに閉めた酒場の一番奥のテーブルに男が数人集まっていた。この国のクソな政策に対するレジスタンスメンバーのリーダー達だ。

「いや、俺は収穫なし」

 ジャンもそのテーブルにつく。ジャンもこう見えて若衆のリーダーなのだ。

「また抗議に行くって話しはどうなった?」

 幹部の一人、ガスが話題を出した。

「あんなの何回行ったって意味ないだろう。どうせ門前払いだ」

「いや、わからんぞ?」

 オッドの言葉にシモンが反論する。

「今回は違うかもしれんだろう?」

「同じさ。奴ら、ダラスが王位に就いてるうちはこちらの言い分なんか聞くか」


 意見がテーブルの上を飛び交う。結局そのまま一時間ほど降着状態だった。

「なあ、そういえば」

 黙ってそのやり取りを聞いていたジャンはある噂を聞いた事を思い出した。

「緋染の一匹狼って聞いたことあるか?近くに来てるって聞いたんだけど」

「なんだそりゃ」

 首を傾げるシモンをガスが笑った。

「知らねえのか?すっげえ強い傭兵なんだとよ」

「銀狼みたいな髪に紅い瞳で請けた仕事は必ずやり遂げるんだってよ。かっこいいよな!」

 ジャンも説明する。今若衆の中で話題沸騰中なのだ。少し興奮気味なのは否めない。

「噂で聞いたが、ダザールとウィクラディアの争いで千騎斬りをやってのけたとか」

「千騎を一人でか?」

「そうだ」

「通り名もたくさんある。緋染の一匹狼、伝説の戦士、最強の傭兵、紅玉色の悪魔…」


「‥ずいぶん大それた名がついたものだ」


 突然した、ここにいないはずの第三者の声にジャンは肩を跳ねさせ、そちらを向いた。

 二階へ続く階段にギルが座っていた。片手に刀を持っている。

「大それてないだろ?最強だぜ?」

「何が最強だ。まだ足りない。それより、抗議に行くとか言っていたが、やめておいたほうがいいと思うぞ?」

 お前に緋染の何がわかるってんだ、とジャンは言い返そうとしたが、それより重大な事に気がついた。

「お前、いつからそこにいたっ!?」

「そうだ!我らの話しを思いっきり聞いてるじゃないか!!」

 ジャンの怒声にガスが反応する。

「小一時間ほど前からだ」

「ほぼ最初から!!?」

 皆、驚いて言葉が出ない。しかも聞かれたのは他人に聞かれては困る抵抗運動の計画だ。周りの気配には十分気を使っていたはずなのにこの男には全く気が付かなかった。

「大事な話を聞かれてしまった」

「どうするよ?」

 幹部達が本人の前で相談し始める。

「なあ、先に言っとくけど、こいつ殺すのは無理だと思う」

 ジャンはその会話に割り込んだ。

「どういうことだ?」

 シモンの問いに他の幹部もそうだ、と頷く。

「俺はこいつが憲兵三人瞬殺するのを見た。…見たと言っても憲兵が勝手に吹っ飛んだようにしか見えなかった。それだけ強い」

 真剣な顔で言い切ったジャンに、他の男達は眉間の皺を濃くした。


 ピィーッ…

 どこかで鳥が鳴く。真夜中に鳴く鳥なんて珍しい。

 と、その声を聞いた途端ギルが上に顔を向けた。戸口に向かい、外に出る。

 何をするつもりかとジャンがついて行くと、外に出たギルの目の前に獣が一匹降り立った。

 空いた口がふさがらない。

 鷲の上半身とに獅子の下肢。犬くらいの大きさだが間違いない。これは幻獣、グリフォンだ。…大きさ犬くらいだが。

 驚いて言葉も出ない。

「ありがとう。ご苦労さん」

 ギルはそんな幻獣から何やら受け取り嘴を撫でてやっている。

 ピィッ

 幻獣はギルの手に嘴を押し付けた後、翼を羽ばたかせて飛び去った。

 ギルがくるりとこちらを振り向き、酒場の中に戻ってくる。

 ジャンは今のは何だったんだ、と訊きたかったがタイミングを逃して訊けなかった。

 酒場の中では幹部達がこちらを窺いながら相談を続けていた。

「仲間になってくれないだろうか?」

 しばらく話し合っていたが、どうやらそこに意見の一致を見出したらしい。

「…すまないが仲間にはなれない。たった今依頼が入った」

 ギルはそう答え、手に持った封筒を見せた。真黒な封筒だ。さっきのグリフォンから受け取った物だろう。

「その代わりここの事は誰にも言わない」

 ギルの答えにガス達は少し落胆したような顔をして、それからまた額を突き合わせて相談を始めた。

 しばらくしてシモンがギルの方を向き、そうしてくれるよう頼んだ。

 ギルは頷くと二階へ上がっていった。


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