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使わない抜け道

 片方は時を越えられる。片方は、空間を自在に行き来できる。

 だから、僕たちはペアを組まされた。


 ぎゅうぎゅう詰めの電車のドアから、吐き出されるように駅のホームに追い出された。前後左右から人に押されて、まだ満員電車には少し幼すぎる僕の体は前後によろめく。まったく、小学生が乗ってるんだから、もう少し気を使ってくれても良いと思うんだけど……。大人って優しくない。

 とはいえ、あと1年で僕も中学生だけど。

 というか、気を使うと言えば研究所の方も気を使ってくれても良いと思う。こんな時間に来い、とか言うなよ。フレックス制希望。

 まあ、今日は特別、この時間帯にしか都合がつかないお客様がいるらしいから仕方ないんだけどさ。

 今日は小学校から休みの許可を貰って、研究所に行く日。研究の「お手伝い」と言う事できちんと僕もお給料を貰っているから「通勤」って事でいいと思う。お給料貰ってて、通勤なら、子供でも満員電車は義務なのかなぁ?

 そんな事を考えながら、大きな駅だったから、人が大勢下りてガラガラになった車内に再び乗りなおす。これからは楽だけど。座れるし。

 さっきまでの混雑はうそのように、車内はがらんとして、あの大きな駅のある都市はどんだけの人を収容してんだと、少しぞっとする。ここから先は一気に人は減り、さらに僕の目指す駅は奥の方だから、途中で車両は切り離されて、僅か3両の電車になってしまう。車内に乗ってる人間は全て確認できてしまうくらいだ。

 それはいい。それはいいんだけど。

 同じ電車に乗り合わせてもいいはずの知人の姿が車内にない。……さてはまた遅刻かなぁ?

 住宅地郡を超え、灰色が少なく、緑が多くなっていく窓の外を見ながらそう考える。ヤツは遅刻の常習犯だから、そうかもしれない。

 なのに。

 ホームに降り立ったら、まるでずっと前からそこにいました、みたいな顔してけろんと立っているその人物を見つけた。

 僕の顔を見て、やましい事があるのがバレバレのギクっとした顔を見せたから僕はヤツがズルをしたのを確信した。

 「なんでそーやって、むやみに力を使うんだよ」

 僕が怒鳴ると、目の前に立っている女の子。……子、って言うか、僕より全然年上なんだけど。高校1年生、いーかげん女の果乃子はあはは、とごまかすような笑い方をした。

 「あはは、じゃねーし」

 「まぁまぁ、知くんもどーせやってるんでしょー。瞬間移動でパパっと。このぉ、無遅刻無欠席少年ー」

 「僕はやらねぇ!」

 「またまたぁ」

 ほんとに信じてない。っつーか、どうしようもねぇ、この女。

 始めて会った時から僕の相棒と決められていた。二人で力をあわせて時空を超えて色々な事をする実験。僕が空間を、果乃子が時間をそれぞれ同時に手を取り合って移動する。グラフのX軸とY軸のような関係。

 でも、僕とこの女の相性は最悪。

 はあ、と大きくため息をつく僕に、果乃子は能天気に笑いかけた。

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