しばし現実逃避いたします。
さて、兄達が何か言っているが、少し横におき・・・
ここ、慣れ親しんだ我が家はエルトランド王国の王都にあるシュトラウス侯爵家の王都別邸だ。
本宅は領地にある。
領地に戻る際はそちらに滞在するが、学院に通っている今、滅多に戻ることはない。
兄達も仕事があるため、ほぼこの別邸が家となっている。
逆に両親は社交界シーズンでもない限りほぼ領地にこもりっきりである。
長兄は近衛騎士として日々真面目に仕事に取り組んで、多忙な日々を過ごしているが、次兄に至っては真面目に仕事をしているか、と言えばかなり疑問だ。
次兄、レオンハルトは魔法、魔術職の中でも最高峰の宮廷魔術師長を務めている・・・らしいが、未だに信じられない思いがある。
確かに魔法、魔術に関しては優秀なのだが、いや、他のことに関しても器用になんでもこなすが、如何せん性格が破綻している。
そんな状態で、しかも21の若造が宮廷魔術師のトップに立って大丈夫なのか、仕事場は大丈夫なのか、王様なに考えてるの、とか思ったりする。
しかも宮廷魔術師長になった理由が、王都で私の側にいるためだと明言した、らしい。
これは両親の命令らしく、王都にいるならば宮仕えせよ、との事だったらしい。
何も宮廷魔術師長じゃなくても良かったのではないか?と思わなくはない。
私は、と言えば今は学生の身であるため、無条件に王都にいる事を許してもらっている。
まぁ、兄2人も一緒だから、というのも王都にいる事を許されてる要因の一つだろう。
それでも私にも条件があった。
学院に入った14の時、同時に社交界デビューをはたした。
学院生活と社交界での人付き合いを両立しろ、との事だ。
しかも、しかもだ、学院にいられる期間は3年と限られた。
無茶振りにも程があるだろう。
だがしかし、私は頑張った。
1年目、2年目と飛び級を重ねて大学部まできた今、残すところ後1年ちょっとで最終目標、大学部卒業までギリギリ間に合うかというところなのだ。いや卒業は間に合うが、得られる知識は全部かっさらいたいのだ。
ちなみに、通常ならば8歳から10歳頃に入学し初等部4年、中等部3年(ここで卒業する人が多い)高等部3年、大学部2年のカリキュラムが組まれている。その後希望者の中でより優秀な者はそのまま研究員、講師として残ることができる。
おかげで学生らしい付き合いは一切なかったが、魔法、魔術関連の知識はだいぶ付いた。
後僅か、あと少ししかない、・・・そんな時に、そんな時にいらん邪魔をするとは・・・。
「リ、リーリア・・・?」
エドワードの遠慮がちな声が耳に届いた。
黒いオーラを出して思考に浸っていたため、エドワードにも怒っていることが伝わってしまったようだ。
エドワードはこちらの考えを察したのか、申し訳なさそうに眉を下げた。
エドワードもレオンハルトも、私が両親から要求された条件のことを知っている。
知っているので、尚更罪悪感を感じるのだろう。
「っで、お兄様、その第三王子殿下とはどのような方なのですか?」
だが、グダグダ言っても仕方がない。これはすでに決定事項なのだ。
私は腹をくくった。