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家族会議

「・・・と、そんな感じで色々あったんです」

 リーリアは話し終わった開放感から、ふうっとため息をついた。


 さて、現在リーリア含むシュトラウス家3兄妹は家族団欒を過ごす居間にて食後の憩い、ではなくプチ家族会議を開いている。

会議の内容はもちろん本日の出来事についてのアレコレ。

会議発案者エドワードだ。ここはキッチリと兄妹水入らずで話を詰めておくべくだ・・・ということらしい。

 リーリアは会議にあたって、何故王宮にくる羽目になったのか(訓練諸々での件)・・・から始まり、その原因を遡って話し(アレストリウスの事件)、そこから派生した他の問題(臨時講師の件)も話す羽目になった。

 別段隠すつもりはなかったし、話さなければならなかったことなので別に構いはしなかったが、尋問でもされているような空気の中話すのは辛いものがあった。


「そうか、それは本当に色々とありすぎたね・・・。事件の事はすぐさま学院に連絡がきたから知っていたけれど、あの時点じゃまだ詳しい内容は聞いてなかったからね。明日あたりには詳細事実報告も兼ねて色々と上がってくるだろうけど・・・まさか、リーリアがそんな形で巻き込まれるとは・・・」

 エドワードは1人唸り声を上げた。

 そんなことを言っているが、かなり詳細な事件内容をリーリアから聞く前にこの兄は知っていたはずだ。この兄の学院に潜ませた耳目は侮れない。

「それで、お兄様達は私が王宮にきた事をどこでご存知になったのですか?」

 リーリアは気になっていたことを聞いた。

 あの時のエドワードとレオンハルトの会話は明らかにリーリアが王宮に思わぬ形できてしまったことを事前に知っていたものだった。


 何故、王宮にいた兄達がそれを知っていたのか?

 もしかして・・・と思い当たる節はあるが、確信はない。

 まさか、と思うものもあるが、やはりこれも確信はない。

 だが確実にどちらかであろう。


「あぁ、それに関してはウォンからレオンに連絡が入ってね。で、レオンから聞いた私があの場へ行ったんだ」

 エドワードの言葉にリーリアはやっぱり、と納得した。

 学院を出る前に最後のあがきとしてウォンに王宮まで護衛に着くことを伝えておいたのだ。もしかしたら兄達のどちらかに連絡をとってくれるかも・・・と期待を込めて。

 どうやら期待通りに連絡をとってくれたようだ。

 次にあった時の嫌味は相当なものだろうが、心から感謝しておこう。


「それで、リーリア。臨時講師の任はもう確定してしまっているのかい?」

 やはり一番の問題はそれなのだろう。

 エドワードが話を切り出した。

「正式な任命書はまだですが、ほぼ確定かと・・・。既に職員棟、研究棟それぞれに部屋をあてがわれてしまいました。明後日には見舞いがてら前任講師の元へ行き、引き継ぎをするようにとも・・・」

 リーリアが気まずそうに話すと、エドワードが深くため息をついた。

「・・・そうか。・・・わかった、何か必要なものがあれば言いなさい。学院との往復は移動陣を使用しているんだったね? その辺りは誰かに見られる可能性は?」

「移動陣のある部屋はレオンの魔術によって入れる人物が限られているので大丈夫です」

 エドワードは思案するように拳を口元にやり、少しだけ眉間にシワが刻まれた。

「なら、平気・・・か。しばらくは注目の的になるだろうから、くれぐれも気をつけて行動するように。・・・どうしてもな時は、学院に泊まりなさい」

「そのことですが、お兄様。しばらくは帰ってくるのを控えようかと・・・。どこからバレるかわかったものではありません。毎日同じ部屋に通っているのが見咎められれば不信に思われます。・・・ですから、」

「反対だ!!」

 リーリアの言葉の途中でレオンハルトが急に立ち上がり声を荒げた。

 半ば予想していたことだったが、予想していようともやはりその行動には驚いた。

「お兄ちゃんは反対だ! 講師をやることは我慢しよう。でも、きちんと毎日帰ってきなさい!」

「れ、レオン、でもね? 毎日研究棟に行くのはまぁ、怪しくはないかもしれないけれど、毎日不在の部屋に入って行って消えたりしたら、怪しいでしょ?」

 レオンハルトの剣幕に押されながらもリーリアは必死に答える。

「今までだって同じことをしていたはずだ」

「いや、それはそうだけど・・・今までは一般生徒に紛れて目立ず、印象魔法のおかげで注目もされなかったから誤魔化せたけど、これからはそうもいかないでしょ?」

「これからも印象魔法はかけたままにしなさい!」

「いや、かけたままにするけど、そうじゃなくて・・・」

 レオンハルトはもはや聞く耳持たず状態だった。

 エドワードもお手上げだとばかりに静観を決め込んでしまっている。

 結局レオンハルトが折れることはなく、夜遅くなってもいいから必ず帰ってくるように、とのお達しが出た。


 まぁ、生徒が帰った後なら危険性も減るのでいいだろう。

 講師陣はもっぱら自分のことに集中するものが多いので、特に問題ない。


 ある意味予想通りの展開なのかも、とリーリアは仕方なくレオンハルトのお達しに納得した。

「それで、第三王子の件だけど・・・」

 話がまとまったところでエドワードが口を挟んできた。

 第三王子の件? とリーリアは首を傾げる。


 アレストリウスについて何かあっただろうか?


 首を捻るリーリアにエドワードは頷く。

「うん。今回の事件を鑑みて、あまりにも無茶をするようだから、もう1人監視役をつけることになった。今回の件に関しては学院側も相当お怒りだろうしね・・・。リーリアも臨時講師の任につくなら今まで以上に動けなくなるだろう? 宮廷魔術師団から1人貸出しって形で王子につけてもらうから、少しは楽になると思うよ」

 エドワードの言葉にリーリアは内心諸手を挙げて喜んだ。


 これで気苦労が少しは減る!

 

 喜ぶリーリアに何度も仕切りに頷いていたレオンハルトが、エドワードの言葉を継ぐ。

「私には及ばないが、実力は十分ある。魔力量こそアレよりは少ないが、技術面でなんとかするだろう。

 だからリーリア、もう二度とあんなのに近づいちゃいけないよ?」

 急にレオンハルトから不穏な空気が流れてきた。

 そういえば・・・とリーリアは思い出した。

 エドワードには話していたが、レオンハルトにはリーリアがアレストリウスの訓練をみている事を話していなかった。言えばこれも絶対に反対すると思ったからだ。

 案の定、ハッキリとそれとは言わなかったが、近づくな宣言をしてきた。しかも二度と近づくなってそんな無茶な。

 下手なことを言えばあとに響くので、是とも否とも言わずにリーリアは誤魔化すことにした。

「・・・必要な時以外は近づかないから、えーっと、安心して?」

「金輪際近づいて欲しくない」

 レオンハルトはキッパリと言い切った。

 金輪際ってそれはまた無茶な・・・。

 今日のレオンハルトはやけに強気だ。

「それは、無理があるでしょう・・・」

「無理じゃない! やればできる!」

「・・・できる限り努力する。あ、そうだ、レオン」


 ここまで話していてリーリアはふと思い至ったことを口にすることにした。

 レオンハルトは開きかけていた口を閉じてリーリアに何だと瞳で問いかけてきた。


「今日までのことで、第三王子殿下に何かしたりしないでね?」

 形成逆転だ。さっきの話を掘り返されない様に、とリーリアは攻め込む体制にはいる。

「・・・嫌だ」

 レオンハルトは途端にそっぽを向いてしまった。

 が、しかし、ここで止めるわけにはいかない。

 リーリアはお願い作戦を決行した。

 過去これまでにこの作戦でレオンハルトが落ちなかったことはない。

「レオン」

「・・・」

「レオン、お願い」

「・・・それは聞けないお願いだよ、リーリア」

「レオンお兄様」

「・・・うっ」

  

―――かくして、今回のお願い作戦もリーリアに軍配が上がった。

 エドワードは途中で退席してしまっていたため、リーリアも話を蒸し返されないうちに部屋へと戻ることにした。部屋まで送るとしつこかったレオンハルトを引き離して、リーリアは自室へと引き上げる。


 疲れていたのでサクサク休むことに決め、さっさと夜着に着替えてしまう。

 明日の予定は・・・とベットに入って考えていたらリーリアはいつの間にか深い眠りについていた。





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