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1-6話 恐怖
誰かに
見られるくらいなら
自分の手で
折ってしまおうか
―オニゴッコ―
白梅さんは刀を
構えたまま動かない。
そんな様子を見ながら
どこから刀を出したのか、とか
何で刀を持っているか、とか
いろいろ聞きたいことも
言いたい事もあったけど
どれも口には出すことはできず
心の中で消えていった。
「邪魔ですね」
ぼそりと
誰に言うわけでもなく
白梅さんは呟いた。
「はあ?」
健太が訝しげに声をだすが
白梅さんは気にした様子もなく続けて呟く。
「彼女のそばにいていいのも、触れていいのも、話しかけていいのも、見ていいのも、全部僕だけなのに」
その声音に
まるで冷たい手で直接なぜられたように
ぞわりと寒気がした。
だけど、健太は恐怖を感じたわけではないらしく
怒ったように
「ふざけてんじゃねぇぞ、お前。こいつは俺のだ!」
私を引き寄せながらそう言った。
その様子をきょとんとしたような目で白梅さんは見ていた。
何故か、すごくいたたまれない気分になる。
「し、白梅さん?」
そう声をかけた瞬間、
「ふふ…ふふふ……あははははははっ」
白梅さんは笑いだした。