御伽噺
白梅の過去の話……だと思います。
一つ、小さな座敷牢
二つ、骸を傍らに
三つ、賽子転がして
四つ、白華咲かせましょう
‐オトギバナシ‐
ある山の奥の奥に大きなお屋敷がありました。
そこには
鬼と呼ばれるものたちの当主が住んでおりました。
鬼の当主には
四人の子供がおったそうです。
長女であります一人目の子供は黒い髪に赤黒い目の姿に鬼にとっては致命的である角の無い子供でございました。
親もそうそうに彼女を見放しました。
角が無いと言うことは人と変わらぬ力、つまり魔力が零だからです。
魔力が無いものは簡単に他の妖怪に殺されてしまいますし結婚の道具にもなりません。
ですから、当主に見放されたのでしょう。
次女であります二人目の子供は灰色の髪に灰色の目のそこそこ力の強い子供にございました。
ですが、女が当主になることはできません。
彼女は結婚の道具にされるだけでした。
長男であります三人目の子供は黒い髪に灰色の目の当主には及びませんが力の強い子供にございました。
皆も彼を次の当主だと思いましたが
末っ子にございます四人目の子供が生まれた時、誰もが意見を変えました。
次男であります四人目の子供は白い髪に赤みがかった桃色の目の当主より力の強い子供にございました。
長男よりも彼を当主にと言う声に反対される声はございません。
力の強いものが上に立つ。
当然の心理です。
ですが、やはり他の三人は気にくわないはずです。
あとから生まれてきたのにどうしてあいつだけが
と恨めしく思ったはずです。
鬼は生まれてすぐに名前を貰いません。
力が衰える場合もあるので五つになってから名前を貰うのですが
四人目の子供は生まれてすぐに名前を貰っていました。
それも三人にとって恨みが強くなる原因でした。
三人はついに
四人目の子供を座敷牢に入れ、一度も外に出さないようにしました。
勿論、親も回りもそれを止めません。
厳しい環境でも死ぬことが無いことを知っているからです。
与えるのは少しの食事と遊ぶための汚れた毬、そして面白くもない本だけでした。
そんな風に一人、隔離されていたからでしょうか。
四人目の子供は無邪気な恐ろしさが心に芽生えました。
他人の命など平気で踏み潰すことができるようになったのです。
その証拠に
彼は三人の子供を殺し、その首を親の前に差し出してから笑顔でこう言ったのです。
「汚い血がついたので新しい着物をください」
と。当たり前のように着物の心配をしていたのです。
親はあの時、閉じ込めるのを止めれば良かったとその言葉を聞いて思いました。
その後、彼が当主になったのか誰も知りません。