2-9話 最後
君をおいて死ぬのは
悲しい
君が先に逝くのは
辛い
だから
一緒に逝こうか
‐レンカ‐
殺した。
彼がそう答えた時、一瞬聞き間違いかと思った。
私が聞いたのは大怪我をさせたか、ということだけ。
なのに彼は
「ああ、はい。僕が殺しましたよ」
そう言ったから。
いや、それは違うかな。
聞き間違ったのだと自分が思いたかっただけなんだろう。
仲がよかっただけの何の罪もない人が
私のせいで殺された。
そんなこと知りたくなかった。
ぐちゃぐちゃに思考が塗り潰されて
頭が正常に動かなくなっていく。
つうっと頬に涙が伝うのを感じて私は泣いてることに気づいた。
感情の制御もうまくできなくなっているみたいだ。
白梅さんは、ぽんぽんと私の背中を叩きながら
現実から目を逸らすことを許さないと言うように
私が聞きたくない事を教えてくれた。
「足を切り落として。
手を刺して。
耳を削ぎ落とし。
目を抉って。
喉を潰して。
色々としましたが不運にも大怪我をしていたので僕が与えた少しの痛みでさえ苦しかったでしょうね。
あなたが知らなかったのは誰もあなたに知らせなかったからだと思いますよ?
大怪我をした翌日に死亡した。なんて、言いたくないし、伝えにくいことでしょうから」
「わ、私の、せい?」
声がうまく紡げなくなっている。
そこまで彼が私に執着し、依存するから回りが巻き込まれたんだ。
だから全部私が原因ってことになる。
だけど、白梅さんはその言葉に首を横に振った。
「あいつらが死んだのは
あなたを利用しようとしたからで。
あなたを好きになったからで。
つまり、自業自得なんです。あなたが原因ではありません」
白梅さんの言葉を聞いてもやっぱり私が原因だろうとわかっただけだ。
やっぱり私が原因ってことですね。
そう言おうと思って口を開いたけど
声を出す前に口を白梅さんの口で塞がれた。
舌を無理矢理絡ませながら深くキスをしてくる白梅さんに吃驚して涙が止まる。
離してほしくて白梅さんの体を叩くと
抱き締めてる状態はそのままだが
白梅さんは簡単にキスするのを止めた。
私の口からどちらのかも
わからない唾液が顎に伝うのを
嬉しそうにぬぐいながら彼は言う。
「死んだ人のことなんて考えないでください。今もこれからもあなたは僕だけのことを考えていてください。どんな君だって僕は愛せるんですから」
それは何度も聞いてきた愛の言葉。
彼の愛を拒むのに諦めてしまった私は
「わかり、ました」
その言葉に頷く以外
選択肢はなかった。
END……?
一応、最終話です。
白梅的にはハッピーエンドで
さち的にはハッピーエンドなのか微妙ですね。
これからは番外編を書いていこうと思います。