2-7話 妖怪
愛すこと
愛されること
愛そうと思うこと
愛されたいと思うこと
全て素晴らしいこと
‐レンカ‐
頬をゆっくりと撫でながら白梅さんは
優しく微笑み私に言い聞かせるように呟く。
「愛してます。鎖で繋いで閉じ込めてしまいたいほど愛してるんです。あなたが他の誰かを見ることすら許せません」
ぞわりと体が震えた。
その言葉が私に恐怖を与えるのに気づいているのだろうか。
そう思いながら私は白梅さんの言葉を静かに聞いていた。
撫でていた手を首に移動させながら
白梅さんは続けて言う。
それは私が初めて聞くことだった。
「僕はあなたを愛してます。この言葉に偽りはありません。だけど、僕は鬼です。妖怪なんです。
だから人がどう愛を伝えあうのかわかりません。僕はあなたを殺したいほど愛してるのにこの思いをどうやって伝えるのかわかりません」
白梅さんが言い終わった時、私は困惑した顔をしていただろう。
後半の言葉なんて聞こえてないほどに
頭の中はパニックになっていた。
鬼?妖怪?
それってどういう意味だっけ?
ぐるぐると頭の中で単語の意味を調べていると
そんな私の困惑に気づいたのか白梅さんは苦笑いを浮かべながら体を起こしてベッドから降りた。
私も体を起こして白梅さんに視線をあわせる。
白梅さんは少しベッドから距離をとったかと思うとこちらを振り返り
「見ててください」
そう言って
鬼化って言うのだろうか
力を解放して鬼の姿を見せてくれた。
短かった髪は腰まで伸び、耳の少し上あたりには角が生えていた。
それ以外は普段の白梅さんと変わらない。
だけど、十三センチほどの角は
普通の人である私達には無いはずのもの。
それがあると言うことは白梅さんが妖怪だという証明になった。
「……本当に鬼なんですね」
白梅さんに確認すると白梅さんは笑顔で頷いた。
この日、初めて私は彼が妖怪であることを知った。