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昔の約束
町の人工的な明かりが無くなる森の奥。
夜の時間帯に姿を照らすのは月明かりのみ。
そんな時間帯に森の奥で迷子になってしまった幼い頃の私に
現代では見ることが少なくなってきた着物を正しく着こなした「彼」は笑いながら言ったんだ。
「僕とある約束をしてくれるなら助けてあげますよ。どうします?」
幼い頃の私は優しそうで、人が安心するような笑顔と早く帰りたいという思いから
「彼」の言葉に頷いていた。それが間違いだと気づくことすらしようとせずに。
知らず知らずのうちに私は取り返しのつかないことをしてしまった。
私と「彼」の約束は
「それでは16になったら迎えに行きます」
共に生きていくことであったからだ。