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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第17話:正解じゃない選択





 アリアの寝息は、規則正しく、小さかった。


 透の袖を掴んだままの指は、緩む気配がない。

 まるで――逃げられるのを恐れているみたいに。


「……」


 透は、その手を外さず、ただ見下ろしていた。


 蒼真が、苛立ったように頭を掻く。


「……で?

 これからどうすんだよ」


 声を潜める気もない。


「まさか、このまま置いとくつもりか?」


 黒瀬は答えなかった。


 アリアから視線を外し、透だけを見る。

 静かで、冷たい目。


「透」


 名前を呼ばれただけで、背筋が伸びる。


「お前は――」


 一拍。


「自分が、何を連れてきたか分かってるか?」


 透は、即答できなかった。


 「.......分かってる」

 分かっているからこそ、言葉が出ない。


「……分かってる?

 透、お前は何も分かってない」


 小さく、絞り出すように言う。


「でも……放っておけなくて」


「でも、じゃない」


 黒瀬は感情を乗せず、切り捨てた。


「透。お前の行動は――

 正解を踏んでるようで、正解じゃない」


――これは、感情で動いていい問題じゃない。


 蒼真が小さく頷く。


「それに、コイツ……少し、いや、だいぶおかしくねぇか?

 純粋っていうか、無邪気っていうか……」


「蒼真、ハッキリ言え。

 まんま、幼い子供だ」


「あ、あぁ……そうだな。

 言動も行動も、全部見て……」


「見た目は俺らと変わらないだろ?」


 黒瀬の視線が、透を射抜く。


「正直に言え。

 まだ何か隠してるだろ、透」


「っ……」


「後でバレて、ものすごく怒られるのと。

 今、少し怒られるの――どっちがいい?」


「……」


 それでも、透は言えなかった。


 ――代償のこと。


 それを口にしたら、

 きっと黒瀬を、深く傷つけてしまう。


「……」


「ここまで言っても、言わないか……」


 黒瀬はため息混じりに呟く。


仕方ないと言わんばかりに蒼真が続きを話す。

「わかった……透。

 お前が何か隠してるのは分かってる。

 今は無理に聞き出さない」


 一拍置いて。


「話せるようになったら、話せ」


 それでいいだろ、と蒼真が黒瀬を見る。


 だが、黒瀬は納得していなかった。


「それで……

 それで、後悔する事態になったらどうする?」


 声が、低く強まる。


「俺は、待てない」


 ――今、話せ。


ーー


あぁ、うるさい。気持ちよく寝てたのに.....。


大きな声。

尖った声。

透と言われた女の子の声が、いちばん遠い。


こう言う人たちは、いつも同じ顔をする。

大事なものを見る時の顔。

壊れそうなものを見る時の顔。


——つまらない。



大事に守った所で壊れるモノは壊れるし、抑止力が効かない事だってある


つまらない足枷で騒いだって、

どうにもならないことは、たくさんあるのに。



バカばっか......。


そう思ったところで、

アリアは目を開けた。



 重苦しい空気を、切り裂くように。




「執拗い男は嫌われるって、知ってる?」


 ハハッ、と可笑しそうな笑い声。


 先程まで眠っていた、アリアだった。


「アンタら、うるさすぎ……

 目、覚めちゃった」


 欠伸をしながら、ゆっくりと起き上がる。


 その手には――

 先程、透から渡された、うさぎのキーホルダー。


「何これ。汚いうさぎ」


 ――嬉しそうに手にしていた姿が、脳裏をよぎる。


 アリアは、指先で軽く揺らし。


 ポイッと、床に投げた。


 そのうさぎのキーホルダーは――

 透が、幼い頃から大切にしていたものだった。


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