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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第77話:もう一度、聞かれる





 もう、時間も時間ですし。

 続きは明日――そう言って、彼女たちはそれぞれ自室へ戻っていった。


 私も用意されていた部屋に入り、ベッドに腰を下ろす。

 柔らかいはずの寝具は、ひどく落ち着かなかった。


 横になっても、目を閉じても、眠気は一向に訪れない。


 明日、どうなるのか分からない。

 明日、何があるのかも分からない。


 もしかしたら、

 ――まだ、私の知らないことがあるのかもしれない。


 正直、知りたくない。


 もう、これ以上、何も考えたくなかった。


 黒瀬……大丈夫かな。


 大丈夫だと、思いたい。


 そう自分に言い聞かせながら、意識はゆっくりと沈んでいき、

 私はそのまま眠りに落ちた。



 ――――――――――――


 「やぁだ!!!! ヤダヤダやぁだ!!!」


 甲高い叫び声に、私は飛び起きた。


 何事!?

 心臓が跳ね上がる。


 慌てて部屋を見渡し、そこでようやく思い出す。

 そうだ。昨日、私はこの高層マンションに連れてこられたんだった。


 ベッドを飛び降り、部屋を出る。

 壁一面が窓になっているホールへ足を踏み入れた瞬間、言葉を失った。


 ――惨状、という言葉以外、浮かばない。


 「やだぁ!!! 絶対やだぁ!!! エリスの嘘つきっ!!!」


 叫びながら暴れ回っているのは、アリアだった。


 テーブルの上に置かれていたであろう料理は床に飛び散り、

 その上を踏み荒らしたせいで、アリアの服は汚れだらけ。


 大きなクッションはズタズタに裂かれ、

 羽毛が広いホールいっぱいに舞っている。


 パーティションは所々破れ、もはや使い物にならない。


 一体、どうしたらここまで……。


 エグエグと大きな瞳に涙を溜めるアリアは、

 その姿だけ見れば、天使が泣いているようにも見えた。


 ――が。


 彼女の手には、大きなハサミ。


 きっと、それでクッションを切り裂いたのだろうと察した、その瞬間。


 二人が、私に気付いた。


 真っ先に飛んできたのはアリアだった。


 「とぉるぅ!!! エリスがっ!! エリスがぁ!!!」


 「う、うん……まず、ハサミ置こうか?」


 そう言って、そっと手からハサミを受け取り、エリスへ渡す。


 ガラスの破片を拾っていたエリスは、ひどく疲れた表情をしていた。

 昨日の冷酷な彼女と、同一人物とは思えない。


 「透も行きたいでしょ!!!」


 突然そう言われ、私はきょとんとする。


 話を聞けば、今日の夕方。

 アリアの父親が、日本に到着するらしい。


 ――ああ、昨日、やたらと自慢していた、あの父親か。


 正直、会いたいかと聞かれたら、答えはノーだ。


 「パパを迎えに行くんだもん!!!

 いくいくいく!!! 行くのぉ!!!」


 「ダメです!!!」


 「良いもん!! エリスに血使っちゃうもん!!!」


 「許可なく使ったら、大好きなパパに叱られると知ってますよね?」


 その一言に、アリアはぐっと口を閉ざした。


 そして、再び私を振り向く。


 「透っ!!!

 エリスが意地悪言う〜!!!

 アリィはパパを迎えに行きたいだけなのに!!!」


 どうやら、さっきからこの件で押し問答をしていたらしい。


 エリスはヨレヨレの表情で、どこかに連絡を入れる。


 「申し訳ございません……

 ……はい。アリアお嬢様が……

 ……はい、はい……」


 ちらりと私を見たあと、エリスはアリアに端末を渡した。


 アリアはぱっと顔を輝かせる。


 「パパっ!!! アリィだよ!!!

 早くパパに会いたいっ!!!

 ……だから、お迎え行って良いでしょ?」


 「……」


 「うん、うん……うん!!!

 わかった!!!

 透? 透も居るよ!!!

 ……うん……うん、わかった!!!」


 通話を終えたアリアは、見るからに機嫌が良くなっていた。


 「お迎え来てもいいって!!!」


 その前に――。


 そう言いながら、アリアは私をじっと見つめる。


 「透。

 昨日、エリスから色々、聞いた?」


 その上で、もう一度聞くね。


 ――そう前置きして。


 「私たちと、一緒に行こう!!!」

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