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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第83話:守れなかった






「……目、覚めたんだな」


天井を見たまま、黒瀬は息を整えた。


「……どこだ」


「病院だ。お前の身体はまだ――」


「透はどこだ」


「……」


「答えろよ」


「.....調査中だ」


「……は?」


「現在、所在不明だ」


「……ふざけるな」


「声を荒らげるな、功一」


「守るって言っただろ」


「約束はした」


「一族がついてるって言っただろ!!」


「最善は尽くした」


「――それ、弟の時も言ったよな」


「同列に語るな」


「同じだ!!」


「功一」


「俺は!!」


喉が詰まる。


 「あんたが守るって言ったから!!


 だから……だから全部従った!!」


「結果は、想定外だった」


「想定外で済むかよ!!」


「冷静になれ」


「なれるか!!

 透は!!

 俺が!!

 ――俺が差し出したみたいなもんだろ!!」


「言葉を選べ」


「選べるか!!

 あんたが“いい子だ”って笑った時から!!」


「……」


「俺は、また同じ場所に立ってる!!

 弟を失った時と!!

 何も変わってない!!」


「功一」


「守れなかったんだよ!!

 俺も!!

 あんたも!!」


「……」


「それでも、あんたは謝らないんだな」


「当主は、結果に対して謝罪しない」


「……はは」


「これは感情論ではない」


「分かってるよ」


「なら――」


「分かってて言ってるんだ!!

 八つ当たりだって!!

 それでも止まらねぇんだよ!!」


「……」


「俺は……

 透を守れなかった」


「.......」


「それだけだ」


———


———


「……功一」


「透は」


「“守る対象”ではない」


「……は?」


「選択肢の一つだっただけだ」


「……」


「君が差し出したのではない」


「一族が“そう判断した”」


「違いが分かるか」


「……っ」


「感情で動いた結果だと思うな」


「これは――合理だ」


「弟の時と同じだ」


「最善を選び、切り捨てる」


「それが、一族だ」


「……あんた」


「だから私は、間違えていない」


「守れなかったのではない」


「“選ばなかった”だけだ」


「……」


「功一」


「君も、そう教わってきただろう」


 膝が、折れた。


「……っ」


 床に手をつく。

 力が入らない。


「功一様っ!」


 扉の外で待機していた秘書が駆け寄る。


「いけません!

 まだ安静が――!」


「……触るな」


 声は、低かった。


 だが、次の瞬間。


「触るなって言ってるだろ!!」


 自分でも驚くほど、声が荒れた。


 秘書が、息を呑む。


「で、ですが……!」


 黒瀬は立ち上がろうとして、よろける。

 包帯の下で、痛みが遅れて爆ぜた。


 それでも、父から目を逸らさない。


「……連絡しろ」


 秘書が、耳元のインカムに手を伸ばす。


「医局に。

 それと――警備も」


 父は、立ち上がらない。


 ただ、見下ろす。


「功一」


 感情を削ぎ落とした、穏やかな声。


「壊れるなら、ここではない」


 その言葉で。


 黒瀬の指から、力が抜けた。


 視界が、歪む。


 誰かの声が、遠くで叫ぶ。


「ストレッチャーを!」


「点滴を戻して!」


「血圧が――!」


 最後に見えたのは。


 父の、変わらない微笑みだった。


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