第46話:結果だけを待つ者たち
無機質な照明が、白い机の上を均等に照らしている。
男は書類から視線を上げず、淡々と口を開いた。
「提出されたサンプルですが――
現時点では、顕著な反応は確認できておりません」
隣に立つ部下が、わずかに息を詰める。
「数値は?」
「正常範囲内です。
回復反応、活性値の上昇、いずれも……統計的有意差は出ていません」
「そうですか」
男はペンを走らせる。
一切、表情を変えない。
「では、仮説は?」
「……提供方法、もしくは提供者側の状態に問題があった可能性も考えられます」
「“可能性”ですか」
穏やかな声。
だが、否定でも同意でもない。
「私たちは“可能性”で動きません。
――結果です」
ペンが止まる。
「結果が出ない以上、
成功とも失敗とも、判断はできません」
部屋の空気が、静かに張り詰めた。
「調査は継続します。
成分分析、再検証、条件変更――
考えうる手段は全て試してください」
「サンプル提供者には?」
男は、ようやく顔を上げた。
薄く、整った笑み。
「何も伝える必要はありません」
眼鏡の奥の視線が、冷たく光る。
「期待を与えるのも、
絶望を与えるのも――
どちらも、現段階では無駄ですから」
淡々と、言い切る。
「用があるのは“結果”だけです」
一拍置いて、続けた。
「結果が出れば、
価値が証明される」
「出なければ?」
男は、少しだけ首を傾けた。
「我々は、結果が全てです」
淡々と、そう告げる。
「結果が出たものは“必要”。
出なかったものは……不要」
微笑んだまま、続けた。
「分別するだけですよ。
ゴミと同じです」
優しい敬語。
逃げ道のない言葉。
「ですから」
ペンを置き、静かに告げる。
「焦る必要はありません。
時間は……こちらが管理します」
それが、
誰の時間かは、言わない。
言う必要がないからだ。




