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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第35話:バカで済むなら





――蒼真視点


 休日。


 人通りの少ない駅前で、俺は柱の陰に身を潜めていた。


 ――寒い。


 いや、違う。

 寒いとかじゃない。


「なんで俺、こんなことしてんだ……」


 小声で呟きながら、前方を見る。


 少し先。

 改札を出たところで、透と澪が並んで立っていた。


 距離は、ちょうどいい。

 近すぎず、遠すぎず。

 普通の――本当に普通の二人。


 笑ってる。

 自然に。


(……くそ)


 余計に分からなくなる。


 俺は柱からそっと顔を出し、二人の動きを確認する。

 歩き出したのを見て、少し遅れて後を追う。


 完璧だ。

 完璧な尾行。


 ――の、はずだった。


「はぁ」


 真後ろから、深いため息が落ちてきた。


「……やっぱ来てたか」


「っ!?」


 心臓が跳ねる。


 振り返ると、そこには黒瀬がいた。

 コートのポケットに手を突っ込んで、相変わらずの無表情。


「……なんでいるんだよ!!」


「それは俺の台詞だ」


「いやいやいや! お前は来ない側だろ!?」


「お前が来ないとは思ってなかった」


 即答。

 迷いゼロ。


「だからって、お前まで来る必要ねぇだろ!!」


「放っといたら、駅前で挙動不審な男が一人完成するだろ」


「誰が挙動不審だ!!」


 声を荒げかけて、慌てて口を押さえる。


 前を見る。

 透と澪は、まだ気づいていない。


 黒瀬はそんな俺を一瞥して、


「……で、どうする」


「どうするって?」


「このままついて行くんだろ」


「当たり前だろ!!」


 即答したら、黒瀬が小さく首を傾げた。


「自覚はあるか」

「何の」

「完全にストーカーだぞ、それ」


「うるせぇ!!!」


 低く言い返す。


「心配なんだよ! しょうがねぇだろ!!」


「それを本人に言え」


「言えるわけねぇだろ!!!」


 黒瀬は一瞬だけ黙って、

 また前を見た。


「……墓参りだぞ」

「分かってる」


「邪魔する気はない」

「それも分かってる」


 少し間が空く。


「じゃあ、なんで来た」


 黒瀬の問いに、俺は答えられなかった。


 少し歩いて、また柱の影に隠れる。

 前方では、透が澪に何か話して、澪が小さく笑った。


(……くそ)


 胸の奥が、ちくっと痛む。


「なぁ、黒瀬」

「何だ」


「何も起きなかったらさ」


 小さく、ほとんど独り言みたいに言う。


「俺ら、ほんとにただのバカだよな」


 黒瀬は少し考えてから、


「それでいい」


 短く言った。


「バカで済むなら」


 その言葉が、やけに重かった。


 俺は前を見たまま、鼻で笑う。


「……なぁ」

「まだ何かあるか」


「お前さ」


 少しだけ声を落とす。


「呆れながらついて来てるけど」

「否定はしない」


「結局、お前も心配なんじゃねぇか」


 黒瀬は答えなかった。


 ただ、ほんの一瞬だけ、

 透たちの背中を見る目が鋭くなった。


 それで十分だった。


「……よし」


 俺は深呼吸する。


「行くぞ、第二ラウンド」

「何のだ」

「ストーカーだよ」


「言うな」


 二人分の足音を、また少し遅れて追いながら、

 俺は思った。


 この時間が、

 ただの笑い話で終わればいい。


 ――そう、願ってしまった。



最後まで読んでくれてありがとうございます!!!

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