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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第83話:新世界の胎動と、泥濘の決別





ゼロが話した通り、僅か数日後、世界は大きく動くことになった。



それは突然始まった。



「俺の名前はゼロ。突然のことで驚いてることだと思うが、少し俺に付き合って貰う。」



そう言って始まったのは、ありとあらゆるネットワークを占領して彼等は自分たちの存在を主張した。



「我々は新人類である」


もちろん、その存在を知らない者から言えば、頭がおかしいと思われる言動だった。



「これまで、我々の存在は隠され、研究され、虐げられることもあっただろう。我々は人間じゃない?そうでは無い。俺たちは人間だ



新人類、それが俺たちだ。俺たちの存在を知って欲しい。



これから先、俺たちのような存在が増えることだろう。減りはしない。



息を潜めて生きる時間は終わった。声を上げて欲しい。




俺たちの存在をなかったことにはさせない」



全国各地でざわめく声


世界中のあらゆるモニターが、一人の男にジャックされた。


 街頭の巨大ビジョン、オフィスで動いていたPC、人々の手の中にあるスマートフォン。


そのすべてに映し出されたゼロは、静かに、だが確かな狂気を孕んだ微笑を浮かべていた。


「『新人類』……。そんな言葉を並べたところで、君たちはこれを単なる高度なハッキングや、質の悪いジョークだと思うだろう。


だから、まずは『証明』をしよう。


俺たちが、君たちが知る『人間』という枠組みをとうに超えているということを」


 ゼロは、座っていた椅子からゆっくりと立ち上がった。


 背景はどこか無機質な、灰色の壁だけの部屋だ。


「俺の能力は『増幅』。……いや、『増殖』と言ったほうが分かりやすいか」


 その瞬間、画面が乱れた。


 ノイズではない。


ゼロの輪郭が陽炎のように揺らぎ、まるで細胞分裂を繰り返すバクテリアのように、彼の体が左右へと「分かたれた」のだ。


 一人が二人へ。二人が四人へ。


 わずか数秒の間に、画面の中は同じ顔、同じ服装、同じ微笑を浮かべた「ゼロ」で埋め尽くされていく。



消そうとしても消えないネットワーク。


テレビ局も慌てふためく中


「……っ、始まった」


透は、自宅の古びたテレビに映る異様な光景に、肌が粟立つのを感じた。


 画面の中のゼロたちは、それぞれが独立した動きを取っている。


一人はカメラに歩み寄り、一人は椅子を蹴り飛ばし、一人は背後の壁を素手で粉砕した。


『これは特撮でも、CGでもない。今、この瞬間に起きている現実だ』


 数百人のゼロが、一斉に口を開く。

 その声は重なり合い、地響きのような圧力となって世界中に響き渡った。

『俺たちは、一人が軍隊であり、一人が国家だ。……さて、これでもまだ、俺たちを「病気」や「妄想」で片付けるつもりかな?』


さらに恐ろしいことが起きた。


 テレビの中の映像が切り替わり、世界各地のライブカメラの映像が映し出される。


 ニューヨークのタイムズスクエア。ロンドンの広場。そして、東京の交差点。


 そこには、今画面の中にいたはずの「ゼロ」が、忽然と姿を現していた。


 群衆が悲鳴を上げ、逃げ惑う。


 警官が銃を向けるが、ゼロはただ笑いながら、自分の体をさらに増やし続け、街を、広場を、物理的に埋め尽くしていく。


「さぁ……新しい時代の幕開けだ。



旧世界を終わらせよう」


 ゼロの言葉に透は、膝が震えるのを止められなかった。


 目の前のテレビの中で、増殖したゼロの一人がレンズを指差した。


まるで、自分の部屋にいる透を見透かしているかのように。


『始まりの存在が生まれた事で時は動いた。これからは俺たちの時代だ!』


 放送が強制終了し、砂嵐が流れる。


 静まり返った部屋。


透は、ゼロたちが去った後の、冷え切った空気を思い出していた。



「……俺が生きててごめん」



そう言った黒瀬の、すまなそうな顔を見て、透は咄嗟に声を吐き出す。



「違っ……」


「何が違う?俺の代わりに蒼真が死んだ。この事実は何をしても変わらない」



違う、そうじゃない。



私は蒼真も、黒瀬も失いたくない。失いたくなかった。



蒼真じゃなく、黒瀬が死んだら良かったなんて思ってない。



黒瀬は傷ついたように笑う。


そんな瞳をさせたかった訳では無い。



「でも、俺は透が何を言ったとしても透を守るよ」



違う、守って欲しい訳じゃない。



じゃ、どうしたいの?



私は何がしたい?



何が出来る?



こんな能力があったって、誰も助けられなかった。



陽菜も澪も蒼真も……



黒瀬まで失ったら




そう思ったら怖くて、堪らなかった。



それならいっそう、関わらない方が良い。



失う位なら私は、非道になる。




そう思ったら頭が急激に冷えて行く。



顔を上げた透の表情は感情が抜け落ちており、黒瀬は一瞬、息を飲む。


「そうだね。蒼真じゃなく、黒瀬が死ねば良かったのに」



私に関わらないで



そう思いながら黒瀬に棘を放つ。



「誰が守って欲しいなんて言った?」


「……透?」


「いい加減、離して」



黒瀬の胸を押し返し、扉を指差す。



「帰って」


傷付けたっていい。



それで黒瀬が生きてるなら。



私は……この先、1人でもやって行ける。



「早く帰って。黒瀬が蒼真を殺したんだよ?もう、顔も見たくない」



言葉を発する度、心が一つ、一つ死んでいく。



「……俺が間違えたから?」



「そうだね……私たちは間違えた。だから無かったことにしよう」


「……それは透の本心か?」


「だったら何?蒼真を生き返らせてくれるの?できないんなら消えて」


二度と話しかけないで


黒瀬、貴方の心が私を拒絶しますように。



いつか私のことを忘れ、幸せに生きて欲しい。



「……今日は帰る。でも透。アイツらゼロの話しには乗るな」



「……」



黒瀬の言葉に私はもう返事すらしなかった。



そうしないと、我慢した泣き声が漏れるから



「また、な?」



階段を降りて行く黒瀬の静かな足音



「……っ」



遠くで玄関を閉める音が響く。





「ふ……うぅ……黒瀬っ」



その日以来、私は黒瀬を徹底的に視界から排除した。



静かに泣き声を漏らす私に静かな声が掛かる



「……透」



いつの間に起きてたのか、苦笑いするアリア



「ごめん、聞こえ、ちゃった」



「アリア……私、間違えてないよね?」


「……ん……わかんないけど、それはいずれわかるんじゃないかな」



私やアリアと違って黒瀬は何の能力も持たないただの人間だ。



簡単に死ぬ



そう思ったらコレが最善だったと、自分に言い聞かせる。

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