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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第62話:誘導




「っ……止まらないっ……止まらないの」


足がっ。


止めようとしてるのに、止まらない。


「透っ!」


アリアを抱っこしたまま、咄嗟に蒼真が手を伸ばしてくる。


その指先めがけて必死に透も手を伸ばす。



——なのに、遠い。


「……届かないっ……」


人混みが邪魔をして、あと数センチという距離で空を掴む。


「と〜?」


キョトンとしたアリアの丸い瞳


抱っこして貰おうと両手を広げて来る。


だけど届くはずもなく、アリアの顔が悲しげに歪み、涙を溜めていく。


「ふっ……っ……とぉ〜!だっこぉ」


泣く寸前。


アリアを宥めながら蒼真が人混みを掻き分け近付いてくる。


胸の奥がざわつく。


でも、頭の中だけが妙に静かだった。


 蒼真の慌てた顔。


その間も、一歩。一歩と進んで行く。


 

「透っ!くそっ……すみません、通ります」


足が、勝手に前に出る。


 徐々に開いて行く距離


「……っ」


慌てたように蒼真が追いかけて来る。


こんなに人が多かったかな?


 人混みの隙間から蒼真の指先が見える。


「手、伸ばせっ……」


 

咄嗟に指先を伸ばすと


指先をギュッと掴まれる。


蒼真の手だ。


 「……捕まえた……!」


止まる——はずだった。


 


「……っ、待っ……」


 


止まらない。


 


掴まれてるのに、


そのまま身体ごと前に引きずられていく。


 


「おい、待てよ、透ッ!」


 


強く引かれる。


戻そうとしてくれてるのが分かる。


 


なのに。


 


身体は、前に進み続ける。


 


まるで——


 


“別の誰かに操作されてる”みたいに。


 


 


「……や、だ……」


 


声が震える。


 


怖い。


 


これ、知ってる感覚じゃない。


 


 


視界の中で、人が動いている。


笑ってる。


普通の水族館の光景。


 


なのに。


 


誰も、ぶつからない。


 


 


自然に、避けていく。


 


 


まるで——


 


 


“最初から、ここに居ないみたいに”。


 


 


「……なんで……」


 


 


ぞわり、と背筋が粟立つ。


 


 


その時だった。


 


 


視界の奥に、“道”が見えた。


 


 


人混みの隙間。


 


さっきまで無かったはずの、


細くて暗い通路。


 


 


——その先の空間に足が向く。


 


 


そう思った瞬間、


足取りが、わずかに速くなる。


 


 


「透!!」


 


蒼真が叫ぶ。


腕を引く。


 


 


でも——


 


 


止まらない。


 


 


完全に。


 


迷いなく。


 


 


「……っ、やめ……」


 


 


理解した。


 


 


これは、


呼ばれてるんじゃない。


 


 


 


“誘導されてる”。


 


 


 


一歩。


 


また一歩。


 


 


暗い通路へと、踏み込む。


 


 


空気が変わる。


 


 


音が、消える。


 


 


外の喧騒が、嘘みたいに遠ざかる。


 


 


「……っ、蒼真……」


 


 


助けて、と言いたいのに。


 


 


足が止まらない。


 


 


 


その時。


 


 


「……あ」


 


 


声がした。


 


 


すぐ、目の前から。


 


「き、来た……」


その声を聞いた瞬間——


記憶が、引っかかった。


 


「……あ……」


 


見覚えがある。


 


さっき——


人混みの中で、


ぶつかった。


 


「……あの時の……」


 


小さく、呟く。


 


その時と同じだ。


 


前髪で目を隠して、


落ち着きなく指先をいじる仕草。


 


——間違いない。


 


 「……あの時、ぶつかった……人……」


背筋が、凍る。


——思い出したくなかったのに。


 


 


あれは、偶然じゃない。


 


 


最初から——


 


 


 


“仕込まれてた”。


 


ビクビクと挙動不審に周囲を気にし、

時折、遠くの物音にびくりと肩を震わせる。



 口が動いている。


何かを言っているはずなのに、



音が、届かない。



肩が、小刻みに震えている。


視線が合わない。


 


 


なのに。


 


 


「……ご、ごめん……なさい……」


 


 


震えた声で、


そう言いながら。


 


 


一歩、こちらに近づいてくる。


 


 


「ぼ、僕……やらないと……」


 


 


その瞬間。


 


 


足元に、違和感。


 


 


視線を落とす。


 


 


床に、何かがあった。


 


 


見えないはずなのに、


“そこにある”と分かる。


 


 


印。


 


 


複数の、点。


 


 


繋がるように並んだ、


“道”。


 


 


「……っ」


 


 


理解した瞬間、


息が止まりそうになる。


 


 


——これが。


 


 


 


私を、



動かしてる。




 


 


 


「ご、ごめん……でも……」


 


 


少年が、震えながら手を伸ばす。


 


 


「つ、連れて……来いって……」


 


 


 


逃げなきゃ。


 


 


そう思うのに。


 





 足が、


動かない。


——逃げたいのに。


 


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