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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第60話:間違えた選択






蒼真は、少し離れた先にいる二人を目で追った。



蒼真はやはり納得がいかなかった。



あの日、ゼロと名乗った人物は


止めるな、と言った。


 それは命令じゃない。


 ただの“事実”みたいに、あいつは言った。



 止めると死人が出る


 その言葉に怒りが沸く。


だから透が攫われるのを黙って見てろと?


 ……ふざけるな。


 本当は保護が外れた瞬間、厳重に警戒すべきだ。



それだけ透の能力は特別だ。



なのに透は自分の価値が一向に分かってない。


狙われないわけがない。


もう、大切な存在が居なくなる未来など、なくなってしまえばいい。



今日、透はどこにも出掛ける予定はないと言ってた。



だけど、現実はどうだ?



アリアと楽しそうにガラスの中を漂う魚を見つめてる。



そんなに心配なら堂々とついて行けば良いと思うものの、どうしたって、余計なことしか言わないと確信してる。



俺は自分で自分をよく分かってる。


狙われてるから家から出るな!と叫び出しててもおかしくなかった。



そうしなかったのはゼロの言葉もあったから



もし止めて



その死人が黒瀬だったら?


と思うとこんな行動しか取れなかった。



それは黒瀬も同じだった。


「お前、もう少し隠れろよ」


 溜息を吐きながら、腕を引き寄せる。


 隣で黒瀬が小さく舌打ちする。


「バレるだろ。てか、前にもあったなこんなこと」


呆れた黒瀬の呟きを聞きながら注意深く辺りを見渡す。


「仕方ないだろ。何も言わなかった透が悪い」


 「俺たち、完全に透のストーカーだな」


「くそっ誰も彼もが怪しく見えてくるぜ」




 ゼロの未来視は外れない。


 それは、もう嫌というほど理解した。



あの時、後悔してないと言えば嘘になる。


 だからこそ分かる。


 あいつが“止めるな”と言った時点で、


 ――もう結果は決まっている。


 


 それでも。


 


「やっぱり俺……」


 黙って見ていることなんて出来なかった。


 「はぁーわかったからもう少し待て」



俺も行く――。



黒瀬がそう言った、その瞬間。


 男が、透にぶつかった。


咄嗟に飛び出しかけた蒼真を、すんでのところで黒瀬が止めた。


「こんな人が多いところで敵も馬鹿じゃない。だから待てって」


蒼真は舌打ちし黒瀬を睨みつける


「なんでお前はそうやっていつも冷静なんだよ」


透を見捨てる。


 その選択肢を、一瞬でも考えた時点で、


 もう俺は、俺じゃなくなる。


 


「……チッ」


 黒瀬が苛立ったように息を吐く。


「冷静なわけじゃない」


「よく言う」


「わかった。そういう事で良いよ。蒼真、お前は透と合流、俺はさっきの男を追いかける」


 「あぁ、それで良い。この時点で透にぶつかるとか……どう見ても、怪しいだろアイツ」


「後で合流」


 そう言い残して、黒瀬はもう歩き出していた。



 ――手遅れになる前に出来ることをしよう。



その言葉はここに来る前に黒瀬と話し合って決めたことだった。



 ゼロは言った。


 止めるな、と。


彼女が思い出せば、


透の未来は、変わる。


――あいつは、そう言っていた。


 それはつまり、


 止めたら“まずい”ということだ。


 


 じゃあ、止めなければ?


 


 その先に、何があるのか。


 


「……嫌な予感しかしねぇな」


 黒瀬がぼそっと呟く。


 


 同感だった。


 


 水族館の中は、人で溢れていた。


 休日のせいか、人は多い。


 笑い声。


 子どものはしゃぐ声。


 どこにでもある、平和な光景。


 


 ――なのに。


 


 水族館の喧騒から外れた路地裏に足を踏み入れた瞬間、


 何かが、おかしい。


 


「……ご、……」


 遠くで誰かが会話をしてる。


小さすぎて、片方の声は聞き取れない。


だが、もう一方は聞き覚えのある声だった。


 

「くそっ使えねぇ身体!」


 


 空気が、重い。


 


 湿っているわけじゃない。


 でも、息がしづらい。


 


 人の流れも、どこかおかしい。


 

水族館から漏れ聞こえる声は陽気で幸福で満たされていた。


だけど一歩こちら側の空気はガラリと変わり


別の空間に迷い込んだみたいだった。



 そして


「だ、だだだれっ……」



気づけば、そいつは目の前にいた。



前髪で目を隠して挙動不審にソワソワと指先を弄る。


目と鼻の先


「っ……」


いつの間にそこにいたのか。

 目の前の男は、ゆっくりと振り返った。




そしてそこから現れた人物は


「あれ?なんか見た事ある顔だな」


――その声で、理解した。


いや、理解してしまった。


背筋が、凍る。


ゆっくりと視線を上げる。


そこにいたのは――


先日、目を覚ましたばかりの、菜々美だった。


――俺は、選択を間違えた。

 




 ――その頃。


水族館の中心では、


透とアリアが変わらず魚を眺めていた。


そんな二人に蒼真が近付き、話しかける。


「よ、よっ!奇遇だな」


「蒼真!?なんでここに居るの?」


「俺は、その〜魚の生態が知りたくて」


「じゃないでしょ!もしかして付けてきたの?」


「たの〜?」


透の真似をして頭に魚の帽子をかぶったアリアが指さしてくる

 

「違っ!俺はたまたま……」


「なわけないよね?で、黒瀬は?」


ぐうの音も出ず、蒼真は項垂れた。



「一人じゃ危ないだろ」


透とアリアは顔を見合わせキョトンとする。


「強いから大丈夫だって〜」


「て〜」


 ――でも。と蒼真は思う。


透は強い。――それは分かってる。


あいつは二つ持ちだ。


その片方は、どう考えても――まともじゃない。


透が特別なのは嫌という程理解できてる。


でも――


それ以上の“何か”がいたら?


透以上の怪物。


人を人とも思わない残忍で冷酷な……。


そう思った瞬間、不安が胸を締め付けた。




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