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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第53話;許さない





「……違う」


 


蒼真の声は、かすれていた。


 


「違う……」


 


男の言葉を否定するように、蒼真は首を振る。


 


「俺のせいじゃない」


 


そう言いながらも、声は震えていた。


 


「俺のせいじゃ……」


 


蒼真は妹のベッドへ近づいた。


 


ゆっくりと。


 


そして、壊れ物に触れるように、菜々美の肩に手を置く。


 


「……起きろよ」


 


小さく揺らす。


 


反応はない。


 


「おい」


 


もう少し強く揺らす。


 


「菜々美」


 


それでも。


 


動かない。


 


蒼真の手が震えた。


 


「……起きろって」


 


声が掠れる。


 


「起きろって言ってんだろ!!」


 


叫びながら、何度も揺らした。


 


だが。


 


妹の体は、ただ揺れるだけだった。


 


その光景を見て。


 


透の手が、止まった。


 


血が滴る指先。


 


その血を、妹の口へ運ぼうとしていた手が。


 


止まる。


 


透はもう一度、妹の手首を握った。


 


脈を探す。


 


探す。


 


探す。


 


――ない。


 


透の唇が震えた。


 

人って、こんなに簡単に死ぬんだと思った。それはどこか他人事だとわかってた。


あと少し早ければ


この言葉は以前からずっと思ってた。



何の役にたたない。



助けられなければ意味が無い。



「……ごめん」


 


小さく、呟いた。


 


その言葉を聞いた瞬間。


 


蒼真の肩が、大きく震えた。


 


「……あぁ」


 


笑った。


 


壊れたみたいに。


 


「あぁ……そうか」


 


涙が止まらない。


 


ぽたぽたと床に落ちる。


 


「俺の……せいか」


 


 


黒瀬の父は、静かにそれを眺めていた。


 


まるで、映画でも見ているかのように。


 


そして。


 


口を開いた。


 


「こう言って欲しいんだろ?」


 


蒼真がゆっくり顔を上げる。


 


男は微笑んだ。


 


「君のせいじゃない」


 


「安心しなよ」


 


そして。


 


続けた。


 


「殺したのは僕だから」


 


 


空気が凍った。


 

「こう言って欲しかった?人のせいに出来たら苦しくないからね?」


黒瀬の拳が震える。


 


「……てめぇ」


 


低い声。


 


黒瀬が前に出る。


 


男は肩をすくめた。


 


「だって仕方ないだろう?


 


こっちも慈善事業じゃないんだ



それに良い実験になった」


 


透の目が見開かれる。


 


「……実験?」


 


男は嬉しそうに頷いた。


 


「そう」


 


そして透を見た。


 


まるで宝石を見るような目で。


 


「面白いことを教えてあげよう、聞きたいかい?」


 


透の背中に寒気が走る。


 


男は続ける。


 


「この少女もね」


男は楽しそうに言った。


「特別になり得る存在だったんだよ」


透の瞳が揺れる。


男は笑う。


「君と同じだ。夏川透」



 

饒舌に興奮した口元



「君は上手く覚醒して治癒と言う能力が手に入った!では彼女は?」


 

掌を菜々美へと向ける。


「彼女と君の違いは何だと思う?同じ素質。同じ可能性。


だが


一方は開花し、一方は植物状態のまま」


 


 


蒼真の瞳が揺れる。


 


男は、楽しそうに言った。


 


「この子を治すこと自体は簡単だった」


 


軽くベッドを見つめる。


 


「でも、もったいないだろ?」


 


 


一拍。


 


 


「彼女は素晴らしい被検体だった!」


 


 


透の呼吸が止まった。


 


 


「……被検体?」


 


 


蒼真が、ゆっくり立ち上がる。


 


 


「……つまり」


 


 


声が震える。


 


 


「菜々美を……」


 




男は笑った。


 


 


「そうだよ」


 


 


「だって」


 


 


楽しそうに言う。


 


 


「最高の被検体が目の前に居るんだ。」


男は肩をすくめた。


「僕は研究者だよ?研究しないでどうするの?あぁ、でも、出来るだけ傷は見えないようにしたから安心して」


 




その瞬間。


 


 


蒼真が飛びかかった。


 


 


「黙れぇぇぇぇ!!」


 


 


拳が振り上げられる。


 


 


だが。


 


 


男の手が、蒼真の腕を掴んだ。


 


 


止まった。


 


 


まるで子供を止めるように。


 


 


「……おっと」


 


 


男はため息をつく。


 


 


「若いね」


 


 


そして。


 


 


軽く腕を振る。


 


 


蒼真の体が、壁へ叩きつけられた。


 

「僕が研究ばかりしてると思ったら大間違いだよ?こんな時の為に身体を鍛えてて正解だったね」

 


ドンッ!


 


 


「がっ……!」


 


 


床へ崩れる蒼真。


 


 


透が叫ぶ。


 


 


「蒼真!」


 


 


その時。


 


 


黒瀬が前に出た。


 


 


「透」


 


 


低い声。


 


 


透が振り向く。


 


 


黒瀬は父を見たまま言った。


 


 


「蒼真を外に出せ」


 


 


透が目を見開く。


 


 


「……黒瀬?」


 


 


黒瀬は、父から目を離さない。


 


 


そして。


 


 


静かに言った。


 


 


「これは」


 


 


「人としてあってはならなかった」


 


 


父は、嬉しそうに笑った。


 


 


「その顔……


 


 


功一、君もそんな顔出来るんだね


 


 父は嬉しいよ」


黒瀬の拳が鳴る。


 


 


ゴキッ。


 


 


そして。


 


 


父を睨みながら言った。


 


 


「お前だけは



絶対に許さねぇ」


 


 


病室の空気が、張り詰めた。


 


 


その瞬間。


 


 


誰よりも楽しそうに。


 



「いいよぉ」


黒瀬父は笑った。


「僕が悪役になってあげる


その方が


君たちも気持ちよく怒れるだろ?」






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