表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/140

第51話:裏切り者




部屋の中に、重たい沈黙が落ちていた。


 蒼真。

 透。

 黒瀬。

 アリア。


 誰も口を開かない。


 その沈黙を、先に壊したのは――蒼真だった。


 


「……全部、言うよ」


 


 蒼真は、軽く笑った。


 けれど、その目は笑っていない。


 


「正直言って、俺……透と仲良くするつもりなんて無かったんだ」


 


 静まり返った部屋の中で、蒼真は続ける。


 


「黒瀬は気付いてたよな? 俺が透のこと苦手だって」


 


 黒瀬は何も言わない。


 


「透は覚えてないだろうけど、俺……幼稚園の頃、よくお前いじめてた」


 


 蒼真は視線を落とした。


 


「仲間はずれにしたり、順番抜かしたり……


母親と手繋いでるの見て、赤ちゃんって言ったり」


 


「……覚えてる?」


 


 透は、ゆっくりと首を横に振った。


 


「……そっか」


 


 蒼真は小さく笑う。


 


「俺、透が羨ましかったんだと思う。


今でも、羨ましい


 


仲のいい家族。暖かい家


 


俺ん家、離婚してるだろ?


 


なんで俺の家には母親いないのに、透の家にはいるんだって……ガキの俺は思ってた」


 


 蒼真は一度、息を吐く。


 


「そんな時、妹が病気になった」


 


 透の目がわずかに揺れる。


 


「透とは関係ないって思うかもしれないけど……


 


そこから、俺の嘘が始まった」


 


 シン、と部屋が静まり返る。


 


 蒼真は黒瀬をちらりと見た。


 


「俺は呼ばれた。


妹の治療を最優先する代わりに、一人の女の子を見張れって


 


それが透だった」


 


 透の目が大きくなる。


 


「見張って、監視して、報告する


最初はそれだけ


 


でも一週間もしないうちに契約が増えた」


 


 蒼真は苦笑した。


 


「透と仲良くなれ。


 


正直、なんでだって思った


 


嫌いな奴と仲良くなんて出来るわけないだろって」


 


 少しだけ、声が震える。


 


「でも……それで妹が治って、母親が戻ってくるなら


 


悪くないって思った自分がいた」


 


 蒼真は、自嘲するように笑った。


 


「そこからは必死だった


 


透と仲良くならなきゃって思った」


 


知ってた? 俺、めちゃくちゃ短気でさ


 


それも治せって言われた」


 


「もっと笑えって」


 


……楽しくないのに笑えるかっての」


 


 蒼真は一瞬、言葉を止める。


 


 そして、ぽつりと呟いた。


 


「でもよ」


 


 透を見る。


 


「全部が嘘ってわけじゃねぇ」


 


 蒼真は、自分の胸を指差した。


 


「気付いたら、透……お前がここに居たんだ


 


ホント楽しかった


 


思わず全部忘れるくらい


 


すっげぇ楽しくて


 


黒瀬に、透に、陽菜に、俺


 


いっつも馬鹿やって、笑って、怒られて


 


俺は俺なのに……俺じゃない俺が居るんだ


 


 蒼真の目が揺れる。


 


「騙して楽しいか?って囁くんだよ」


 


 沈黙。


 


 その沈黙を破ったのは――透だった。


 


「……知ってた」


 


 蒼真の顔が上がる。


 


「は?」


 


 透は静かに言う。


 


「蒼真、嘘つく時、左腕擦る」


 


「何か隠してる時、決まって左腕触るの


 


みんな気付いてたよ」


 


 蒼真の目が見開かれる。


 


 その時。


 


 透の袖を、小さな手が引いた。


 


「と〜?」


 


 透が下を見る。


 


 アリアが首を傾げていた。


 


「や?」


 


「メッする?」


 


 その言葉に、空気が少しだけ緩む。


 


 透は小さく息を吐いた。


 


 そして蒼真を見る。


 


「蒼真


 


蒼真は裏切り者だよ」


 


「……あぁ」


 


 蒼真はあっさりと頷く。


 


 透は続けた。


 


「でも」


 


 少しだけ笑う。


 


「それでも、友達だと思ってる


 


きっかけが何であれ


 


隣に居てくれたでしょ?」


 


 蒼真は何も言えない。


 


 その時、黒瀬が口を開いた。


 


「透


 


蒼真が契約してたのは、ウチだ」


 


 透は苦笑する。


 


「……何となく、そんな気はしてた」


 


 黒瀬は蒼真を見る。


 


「ここからが本題だ


 


蒼真、このことは黒瀬一族も知っている


 


妹は今、どうしてる?」


 


 蒼真は目を伏せた。


 


「……まだ寝たっきり」


 


 黒瀬は小さく息を吐く。


 


「……だろうな」


 


 黒瀬の父親。


 


 あの男が、そう簡単に使える駒を手放すはずがない。


 


「……もう覚悟は出来てる」


 


 蒼真は静かに言った。


 


 透にバレた時点で、治療は終わる。


 


 ギリギリで延命していた妹は――もう助からない。


 


「それってどういう事!?」


 


 透が立ち上がる。


 


「蒼真の妹さん……死んじゃうってこと?」


 


 蒼真は何も言わない。


 


 その沈黙が、答えだった。


 


 しばらくして。


 


 蒼真は、透を見た。


 


「透」


 


 ほんの少しだけ、声が震える。


 


「……俺」


 


「友達で良かったか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ