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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第50話:盗んだもの




蒼真の幼い頃の記憶と言ったら、泣き叫ぶ妹の泣き声と、父親の怒声、母親の喚く声。


そして、ある日を境に妹とは離れ離れになった。


妹と母親は、帰ってこなかった。


当時の俺は訳が分からなかった。


妹と母親はいつ戻ってくる?と、そればかり考えてた。



半年が過ぎ、1年過ぎた。それでも妹と母親は戻ってこなかった。


その頃、俺は幼稚園で苦手なヤツが二人いた。


苦手と言うより嫌いだったのかもしれない。


その1人が透。


あいつは、俺とは違う世界の人間だった。


そう思ってた。


透の何が嫌いだったかと言うと、あの笑顔が嫌いだった。



幸せそうに笑う姿にイライラした。


透は覚えてないかもだけど、当時よく意地悪してた。


それだけ、俺は捻くれたガキだった。


ヘラヘラ笑う透を、俺は何とか泣かしたくて、その幸せそうな顔を歪ませたくて、透のお気に入りのキーホルダーをコッソリ隠した。


透は無くしたと思ってるが、今でも俺が持ってる。


母親からの誕生日プレゼントだと言って笑ってた幼い透が許せなかった。


馬鹿な俺は全然わかってなかった。


キーホルダーを無くしたその日、ヘラヘラ笑ってた幼い透は母親と帰る道の途中



酷く泣いてた。



それを遠くから見て、



俺は不味い事してしまったと思った。


だけど捻くれてた幼い俺は言い出せるはずも無く、現代までの俺の罪だ。


いつか返そうと思ってた。そして今日まで来てしまった。


あの幼い頃の透の泣く姿を思い出しては躊躇う俺。


透は本当にお人好しが服を着て歩いてるみたいだった。


そんな中、俺は病院へと呼ばれた。


そこは、もう1人の嫌いな奴の家が経営する病院だった。



もちろん、そのもう一人が黒瀬なのは言うまでもない。



長い廊下を父親と手を繋いで歩く。


久しぶりに手を繋いだ父の手は少し力が篭っており、痛かった。


だけど俺はそんなこと言えなくて、静かに歩く。


啜り泣く声が徐々に大きくなって来て、


その声が1年と半年前に出て行った母親のモノだと気付くのは早かった。


「お母さん!」



俺は嬉しかった。



一年ぶりに見る母親。



もしかしたら戻ってくるかもしれない。


淡い期待。


「菜々美は!?一緒じゃないの!?」


キョロキョロしながら周りを見渡す俺の目が、あるものを捉える。



細い管、幾つもの機械、口元を覆う大きな器具、横になったまま動かない菜々美。


「……え」



その日以降、俺の人生は更に変わって行く。



「君が桐生蒼真君かな?」



嫌いな奴の父親と会ったのはそれから3日後の事だった。



俺はその日以降、透がますます嫌いになった。




その日から俺は、言われたことだけをするようになった。


そこからの俺の人生はクソみたいなものだった。


だけど、これだけは言いたい。


全てが嘘では無かった。


だけど、やっぱり、今でもどこか、幼い頃の俺が居て、


今でも幸せそうな透や黒瀬を見ると


目を逸らしたくなる俺が居る。




二人と居る俺は、幸せにどっぷり浸っている。


だけど同時に――


ここに居てはいけないと思う俺もいる。





最後まで読んでくれてありがとうございます!!!

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