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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第48話:杭




夏が来た。



そう、夏が来た。大切な事なので二回言った。


後回し後回しにして来た問題があって、透は真夏の今日、顔を歪め問題の二人を見つめる。



アリアが幼くなる前に話した言葉が引っ掛かる。



透はもう分かっている。


あの時の会話で、蒼真の裏切りを。


そして黒瀬の裏切りには――


もっと前から気付いていた。


透は今の今まで待った。


蒼真も、黒瀬も何も言わないままズルズルと時は過ぎた。


もしかしてこのまま無かったことにして普通に過ごすつもり?


いや、二人はそんな人物じゃない。


現に二人は透に何か言いたそうにソワソワしてる。


そして、2人が話しずらいなら、と、先に動いたのは透だった。



以前の透なら二人が話し出してくれるのを待ってた。


だけど、自分の中で何かが確実に変わって来てた。


透は自分でも気づいていた。


以前の自分とは違う。


ゆっくりと浸透して行くように内側から侵食する強い気持ち。



透は静かに深呼吸して二人に話し掛けた。


「二人とも、話しがあるから明日、家に来て」


話し方も口調も、どことなく以前の透と違う。



そんな透に二人も気が付いてた。



以前の透なら先に、来れるか聞くだろう。


予定がないか確認して決して無理強いはしない。


それが透だった。


二人は戸惑いながらも了承する。


そして黒瀬と蒼真が家に来て、



午後一時。



シーンと静まり返る室内。



透は足を組み、二人を見つめる。


そんな透に二人は違和感を覚えるのだった。



透ってこんな奴だったか?



「で?」


透は足を組み替えた。


「どっちから話してくれるの?」



尋問の始まりと言わんばかりに透は見つめてくる。


「……透?」


蒼真の声が少し裏返る。


「お、怒ってる?」


先に口を開いたのは蒼真だった。


「怒ってる?今、怒ってるか聞いた?


これが怒ってなかったらどう見えるの?」


ニコッと笑う透。


以前から透は怒らせたら怖かった。


だけどと、二人は思う。


透ってこんな顔して怒ってたか?


透が笑うと同時に玄関の扉が開く音。


「ただいまー」


母の声。


その直後。


トタトタトタトタ


小さな足音。


トントントンとゆっくり階段を上がる音に三人は視線を扉へ集中させる。


そして、勢いよく扉が開く。


「と〜!」


アリアだった。


だが――


部屋の空気に気づく。


蒼真と黒瀬をキョトンと見る。


そして透を見る。


それを二回繰り返したその瞬間、アリアは瞬時に理解する。


怒っている。


透=怒ってる=黒瀬、蒼真


次の瞬間。


「めぇぇえっ!」


蒼真へ突撃。


「メッ!メッ!メッ!」


ぽかぽかぽか


「ちょっ!?アリア!?」


「と〜と〜!メッ!」


完全に敵認定。


黒瀬と蒼真は固まる。


透は思わずため息をついた。


「……ありがとうアリア」


透は少し肩の力を抜いた。


だが次の瞬間。


「いてぇ!アリアっ、落ち着けって!」


「やっ!メッよ!と〜!メッ!」


アリアの怒りは収まらない。


アリアの瞳が赤く色づく。


だが誰も気が付かない。


「そう、アリアの言う通り話そうか」


透の言葉を真似るようにアリアが呟いた。


「ちょ!はなちぇ」


その瞬間だった。


蒼真の体がピタリと止まる。


瞬きすらしない。


異変に気付いたのは


黒瀬だった。


「……おい、蒼真?」


固まった様に動かない蒼真。


視線は真っ直ぐ前。


瞳には光が無い。


「……はい。話します」


蒼真の声は、感情がなかった。


「俺は子供の頃から透を監視していました」


空気が凍る。


「観察、報告。全部」


黒瀬が低く言う。


「蒼真、やめろ」


だが蒼真は止まらない。


「最後の報告は、カラオケの時です」


透の瞳が揺れる。


「その時、血も回収しました」


「くそ……催眠か」


そこで初めて二人はアリアの異変に気付く。


透は咄嗟にアリアの目を覆う。


「アリア……ダメよ……戻って」


小さな体がピクリと震える。


透の瞳がユラリと揺れた。


チリッ――


瞳の奥で、能力の色が揺らめく。


その瞬間。


部屋の空気が、わずかに止まった。


まるで、見えない杭が打ち込まれたように。


アリアの体が、ピタリと動きを止める。


赤く染まりかけていた瞳が、ゆっくりと色を失っていく。


「……っ」


蒼真の口も止まった。


黒瀬の瞳が、細くなる。


透はアリアを抱き寄せたまま、ゆっくりと顔を上げる。


その目にはもう、さっきまでの怒りはなかった。


静かな、冷たい光だけが残っている。


そして透は言った。


「……続きを聞かせて」


静まり返った部屋の中で、


黒瀬だけが、微かに笑った。


「……なるほど」


黒瀬の視線が、透の瞳を捉える。


「それが、お前のもう一つの能力か」


黒瀬は黒瀬一族


あの男の息子だ。多分二つ持ちのことも聞いてるのかもしれない。


「……固定か?」



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