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C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


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第46話:その前に一つ聞こうか





男はしばらく透を見つめていた。


まるで新しい標本を観察するように。


やがて、くつりと喉を鳴らす。


「本当に面白い」


小さく笑う。


「透、君はずいぶん変わったね」


カップをテーブルに戻す音が、やけに静かに響いた。


「以前はただ優しいだけだった。でも今はどうだろ?かなり、成長したと言える




.....いいだろう」


軽く肩をすくめる。


「アリアは君に預けよう」


透の胸の奥で、張り詰めていた何かがわずかに緩む。


男は顎に指を掛け唇を引き上げる。


「ただし、幾つか条件を出そうか?


そうだな、三つ……いや、四つ程、良いかな?」


透が断らないと言う声色。


静かな声。


だがその一言で、空気が再び張り詰める。


「一つ」


細い指が空中をなぞる。


「アリアの状態を、定期的に報告すること」


研究者の目。


父ではない。


「二つ」


二本目の指が立つ。


「もし能力が芽吹いた場合――その時は組織が引き取る」


わずかな沈黙。


透は何も言わない。


男はその反応を楽しむように目を細めた。


「三つ」


三本目。


「透。君はこれからも研究に協力すること」


淡々とした口調。


だが、それは拘束だった。


透はゆっくり息を吐く。


逃げ道はない。


最初から分かっていた。


男はそこで言葉を止めた。


そして――

男は、にこりと笑う。


「……最後が一番重要だ」


身を少し前に乗り出す。


だが、ふと何か思いついたように口を閉じた。


「その前に一つ聞こう」


青い瞳が透を射抜く。


「もしアリアが暴走したとき、君はどうする?」


一瞬の間。


そして男は楽しそうに言った。


「透。君がアリアを処分するんだ」


透は思わず息を呑んだ。


アリアの目の前で言い切るその神経。


実の父親の言葉とは思えなかった。


しかし、この回答を間違えると詰みそうだと透は思う。



「簡単に処分出来る」と答えるのは簡単だ。




そして「暴走なんてさせません」という答えも――


正解ではない。



だったら……


何と答えるのが正しいのか透には分からなかった。


「大いに悩むといい。時間はタップリある」


時計の針の音と、水槽の機械音だけが部屋に響く。


透は言われた通り、時間を掛け、自分が思う一つの答えを導き出す。


透は俯いていた顔をゆっくり上げる。


「私は能力を使います」


透は黙った。


――それが答えだ。


視線が真っ直ぐ刺さる。



「ふ……素晴らしい」


期待以上の答えだ。


そう言って男は足を組みなおした。


「で、最後の質問だ。



君は――私の欲しい答えを持っているね?」


透は一瞬だけ目を閉じた。


そして開く。


「……はい」


別に隠すつもりはない。


最初から、そのためにここに来た。


男は興味深そうに首を傾ける。


「ほう?」


透の脳裏に、あの男の姿が浮かぶ。


ゼロ。


あの時、彼は言った。


「俺と同じだ」


同じ。


そして口にした言葉。


二つ持ち。


能力が、二つ。


そう考えるのが自然だった。


私がそうなのかは分からない。


だが――


胸の奥が、ざわつく。


何かが蠢いている。


ずっと前から、そこにあったような感覚。


抑えていた何かが、


ゆっくりと殻を破ろうとしている。


これは予想じゃない。


推測でもない。


確信だ。


胸の奥で、何かが笑う。

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