表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C型血の少女は、誰も救わないと決めた  作者: くじら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/140

第45話:取引か脅しか

すみません!昨日予約し忘れてました(焦)


高層マンションの最上階。


一面ガラス張りのパノラマ。


また、ここに来ることになるとは思わなかった。


巨大な水槽は以前と同じ場所にある。


透明な箱の中で、魚がゆったりと泳いでいた。


与えられた空間の中で、決められた軌道をなぞるだけの生き物。


逃げ場のない世界。


その手前の高級ソファに、男は腰掛けていた。


アリアの父。


C型血の第一人者。


研究者。


そして――最愛の娘を、最愛の実験体と呼ぶ男。


「……やぁ、透。待っていたよ」


穏やかな声。


その揺らぎの無さが、逆に温度を奪う。


守れるのか。


私に。


喉が、わずかに渇く。


目を逸らすな。


まだ何も失っていない。


「……透さん、お茶です」


背後からエリスの声。


カップが静かに置かれる音が、やけに大きく響いた。


退路は、閉じられた。


「今日は――随分、賑やかだったそうだね」


男はカップを持ったまま、こちらを見ない。


視線は眠るアリアに落ちている。


観察者の目。


父親のそれではない。


「泣いたと聞いたよ」


空気が、わずかに重くなる。


「私の記憶では、あの子はあまり泣かなかった。優秀だったからね」


優秀。


その言葉が胸の奥を掠める。


評価軸が、決定的に違う。


「泣くという行為は非効率だ。消耗が激しい」


淡々とした結論。


そこに情はない。


「……懐かしいな。こんなに小さかったかな?」


わずかに首を傾げる。


「ねぇエリス、アリアはこんなに小さかったかな。私の記録違いかな?」


「生後何ヶ月かは、とてもお小さかったと記録しております」


記憶ではなく、記録。


そのやり取りに、背筋が冷える。


「そうか。さて、雑談はそれくらいにして――本題に入ろうか」


今度は、はっきりと視線が合う。


逃げ場のない距離。


思考が加速する。


出すな、全部。


まだだ。


手札は二枚。


順番を誤れば、終わる。


いや、こんな消耗戦、さっさと終わらせるべきだ。


「あなたの出方次第で、私は幾らでも協力します――そう言ったら?」


沈黙。


ほんの一拍。


男の口角が、わずかに上がる。


「……それは取引かな」


青い瞳が細まる。


「それとも、脅しかな?」


透は、ゆっくり息を吸った。


「回りくどいことは言いません」


男の眉がわずかに動く。


「ほう?」


「あなたはアリアの父であり、この研究の第一人者です」


一拍。


「だから、遠回しは無意味だと判断しました」


男は楽しげに目を細める。


「愚策だと分かっていて?」


「はい」


視線を逸らさない。


「ですが、今のあなたには――直球の方が効く」


沈黙。


部屋の空気が張り詰める。


「私にアリアをください」


男の肩がわずかに揺れる。


「……また直球だ。


透。このやり方が危険だと分かっているね?」


「はい」


間を置く。


「あなたが私の望む答えを出すなら、私はすぐにでも“有益な情報”を提供します」


有益な。


具体名は出さない。


父の目が、わずかに細くなる。


「渡さないと言ったら?」


「……渡します」


即答。


空気が一段冷える。


「根拠は?」


透は静かに微笑んだ。


「私は、協力先を選べます」



今、現在進行形で私は、血を提供してる。


その提供を止める事も出来ると案に匂わせる。



それだけ。


それ以上は声に出さない。


しかし意味は十分。


男の視線が、初めてほんの僅かに揺れる。


「協力を打ち切れば、研究は止まる」


透は置かれたお茶をゆっくり口に含む。


そして、ただ待つ。


男は数秒、透を観察する。


数秒後、男はフッと息を吐き出す。


「透」


口角が上がる。


「今、自分がどんな顔をしているか分かるかい?」


一歩、楽しげに前傾する。


「……とても悪い顔だ」


青い瞳が、愉快そうに光る。


「面白い」


最後まで読んでくれてありがとうございます!!!

良ければお気に入り登録や感想を貰えると励みになります!誤字脱字報告も助かります!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ