第35話:甘い時間の終わり
「まだ食うのかよ」
呆れた黒瀬の声。
あの後、ファミレスを後にした透たちは騒々しい街中を歩いてた。
蒼真の手にはフランクフルト
「まだまだ入るぜ!」
モゴモゴしながらブイサインを作る蒼真。
そんな二人を無視して、アリアが透の腕を引っ張る。
「透!あれ!あれ撮ろう!」
指差した先。
ゲームセンターの奥、光るプリクラ機。
透は足を止めた。
一瞬だけ。
目を細める。
懐かしいものを見るみたいに。
「……あれは、帰りに……撮ろうか」
ポケットのスマホを、そっと撫でる。
ケースの裏。
少し前に撮ったプリクラ。
澪と二人で笑っている。
今は、もう撮れない写真。
「……あれってさ」
軽い声。フランクフルトをモゴモゴしながらあっけらかんと言い放つ。
「少し前に透と澪が撮ってたプリ機じゃん」
世界が、止まる。
シン、と空気が落ちた。
「あ……やっべ」
「馬鹿っ....お前っ、それは言うなって....」
「まじ忘れてた.....黒瀬、どうしよっ」
「俺はもう知らん」
小声の応酬。
透は、ゆっくり振り返る。
にこり、と笑う。
「……2人とも」
声は優しい。
「どういう事かな?」
目が笑っていない。
蒼真が一歩下がる。
「いや、違う!澪と透をストーカーとかじゃなくて!」
「馬鹿!」
「ふぅーん、あの日、ストーカーしてたんだ」
「え?なになに?どういう事?」
アリアだけが事情を知らず首を傾げる。
透は視線を外し、アリアの腕を取って歩き出す。
「もう、知らない!アリア行こっ」
だけど、声とは裏腹に声色はそこまで怒ってはいなかった
その事で少しだけ黒瀬と蒼真はホッとする。
「えっとね、大好きな人が居たの」
アリアは黙る。
澪。
その名前を、知っている。
直接関わったわけじゃない。
でも、知っている。
“処理された”人間。
組織の記録の中にあった。
胸の奥が、微かに軋む。
アリアも、利用される側。
アリア自身も、それは分かっている。
「それって……み——」
名前を出そうとした瞬間。
視界が歪んだ。
ガン、と鈍い衝撃。
「っ……!」
頭を押さえ、膝をつく。
「アリア!?」
透がしゃがみ込む。
黒瀬と蒼真も駆け寄る。
「だ、いじょうぶ……少し、頭が……」
言葉が途切れる。
こめかみを押さえる指が震える。
数秒。
いや、体感ではもっと長い。
そして、唐突に。
「あー痛かった!」
何事もなかったように立ち上がる。
さっきまでの苦痛が嘘みたいに。
「アリア……」
透の顔色が変わる。
「いつから? それ」
震える声。
「定期的にあるの?」
アリアは首を傾げる。
「ん? ん〜これは代償と共に現れた感じかな〜でも死なないから大丈夫!」
あっけらかん。
「私はもう慣れてるけど……透は大丈夫?頭痛とかない?」
透の血の気が引く。
黒瀬と蒼真が、同時に透を見る。
代償?
聞いていない。
沈黙。
空気が、変わる。
「……今の話」
黒瀬の声は低い。
「どういう事だ?」
透の喉が鳴る。
言っていない。
言えなかった。
言えば、想像がつくから。
透は2人の顔が見れなかった。
アリアは、ようやく気づく。
あ、これ言ってなかったやつだ。
少しだけ、顔が青ざめる。
甘い時間は終わった。
本当に。
最後まで読んでくれてありがとうございます!!!
良ければお気に入り登録や感想を貰えると励みになります!誤字脱字報告も助かります!!!




