第23話:1夜で消えた国
その国は、日本よりも小さな島国だった。
翌朝のニュースで、
地図から名前が消えた。
――一夜にして、この世から消え去った国。
原因不明。
自然災害。
内乱。
事故。
どれも、正解で。
どれも、嘘だった。
私が、血を使った。
数え切れないほどの人を、殺した。
血を使えば、とても簡単だった。
小さな島国で、
滅ぼすのに一日も、かからなかった。
独自の文化。
島民同士の強い結束。
血の繋がり。
警戒心も強く、黒瀬一族も参戦した戦いは、難航を極めたと聞いた。
……だから、私が投入されたのかは分からない。
ただ。
感情を、殺した。
それだけで、一掃するのに時間はかからなかった。
躊躇も、迷いもない。
――使えば、終わる。
それだけ。
私は、もう……
人間では無いのかもしれない。
「アリィは、透のこと好きでしょ?」
通信越しに、父が笑う。
「僕には分かるよ」
……違う。
好きじゃない。
ただ。
小さなアリィは、気に入っていた。
「大好きな透に何かあったらさ、ご両親も、友人も、悲しむと思わないかい?」
我が父ながら、胸糞悪い。
眉が寄った。
なのに。
透の母親の顔が、何故か、ちらついた。
「僕も、あの子は大好きなんだ。悲しませたくない」
優しい声で。
「だからね、虫を始末したら、みんな幸せだと思わない?」
――虫。
その言葉に
この時の私は、もう壊れていたのかもしれない。
血を使うことに、何の躊躇もなかった。
害ある者は、死んじゃえ。
……それだけ、思えば良かった。
まさか。
その言葉が、島民全員の死を意味するなんて。
害ある者。
それは、今後、面倒になる存在も含めた、
すべて。
「あぁぁぁぁぁぁ――――!!!!」
誰もいなくなった国で、私は、一人叫んだ。
波の音だけが、遠くで響く。
笑いながら駆けていった子供。
若い母親と、赤子。
老人も、働き盛りの大人も。
――全部、いない。
私は……。
ふらりと、視界が揺れた。
顔を上げたアリアは、そのまま、ぺたっと座り込む。
手に触れたのは、 砂。
ざらりとした感触。
きょとん、と見下ろし――
にこり。
「う〜!!!」
キャッキャッと笑いながら、砂を掴み、そのまま、口に運ぶ。
――赤ん坊みたいに。
何も分かっていない顔で。
その姿は、 あまりにも異様だった。




