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限界勇者のスローライフ~追放気味に田舎暮らしに突入したけど、元魔王やら魔族の子と出会って何だか幸せに暮らせています~  作者: みなかみしょう


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第32話:限界勇者の乱入3

 ちょっと怖かった。

 現地について魔物を見るなり、エンネが上空から魔法を連打した。

 無表情で即断。倒すべき相手を判断した、事務的な対応は家事をする姿とかけ離れている。


 理由はわかる。あれは魔王戦時に生み出された魔物の再現だ。一気に倒しきらないと、周囲の魔力を吸収して回復してしまう。

 ゲイル達がかなり頑張ってくれていたおかげで、大分弱っていたのも大きい。倒せる時に倒す。そういう相手だった。


 エンネに投下された俺は無銘の魔法剣を起動。魔法の刃を作り出して、一刀の下に両断した。想像以上に柔らかかった。不完全な出来だったんだと思う。



「クウト……お前なぜ……」

「待って。まず先にこいつ焼かないと」

「うむ。さすがに心得ておるな」


 隣に着地したエンネと共に、魔物を焼きにかかる。こいつの厄介な所は、こうして本体を焼かないとそのうち別の姿で再生することだ。不完全な代物ならそこまで再現できてないかもしれないけど、念には念を入れておきたい。



「…………」

「クウト、彼らに怪我人をまとめさせるのじゃ。それからお主が癒やせ」

「わかった。ゲイル、偉い人に頼んで怪我人を集めてくれる? 話はその後だ」


 本当に話はその後で、全部終わったら夜になった。


「で、どういう経緯で来たんだ?」


 討伐隊の野営地の片隅で焚き火を囲みながら、俺達はようやくゲイルと話すことが出来た。俺の隣にはエンネ、ゲイルの隣にはお付きの女性が付き添っている。何度か、彼の屋敷で見た顔だ。



「フィラーシャから事情を聞いて、飛んできた」

「大分短縮したのう」


 あっさりとした説明だったけど、ゲイルには伝わったようだ。彼は大きなため息を一つついてから、手に持っていた木の枝を焚き火に放り込んだ。


「じゃあ、俺とスランドがアンタにやったことも知られちまったのか。その剣もフィラーシャだな。あいつ、権力以外興味がないような顔してなんでそんなことを……」

「馬鹿な男二人の代わりに動いてやった、みたいな顔してたな」

「なんだと! 馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ!」


 しっかりルーンハイトの方に向かって叫ぶゲイル。今、フィラーシャはホヨラにいるから、ちょっと惜しい。

 なんか、勇者会議の時と印象が違うな。むしろ、俺のよく知る人物に近い。


「なんにせよ。無事で良かったよ。俺達は明日の朝には帰るから、後は宜しく」

「なんで? みんな感謝してるぞ、国王から報酬だって貰える」

「報酬は代わりにもらって復興に使ってくれ」


 俺の言葉にエンネも反対しなかった。ここに来るまでに色々見た。家に戻ればいつもの生活に戻れる俺達よりも、被害を受けた人達に必要な金だ。


「……本当にすぐ帰るのか?」


 再度出た確認のための問いかけに、俺はできる限りの笑顔で頷く。


「ああ。家に待ってる家族がいるんだ」


 ここに来たのは、ちょっとした縁があったからだ。おかげで、良いことが出来た。


「そうか。家族か。……もしかして、奥さん?」

「違う」

「うむ」


 俺達は即答した。お付きの人が肘でゲイルの横っ腹を突いている。

 それで気づいたように、ゲイルは深く頭を下げた。


「すまなかった。俺達の勝手な判断で、迷惑をかけて。勇者を辞めるにしても、もっと他に方法があったかもしれねぇし……」


 今更だな、と思った。あの時、俺は限界だった。その意味ではゲイル達の作戦は上手くいったといえる。やり方は、ちょっとまずかったとは思う。

 でも、結果的に、俺は今の生活は嫌いじゃない。むしろ好きだ。

 人間万事塞翁が馬、だったか。前世で教わったな。人生、どんな風が吹くかわからない。


「俺は今の生活を楽しめてるよ。謝罪は受け入れる。もういいよ」


 もとより恨みもない。そもそも自由になって喜んでたしな。


「しかし、何か詫びの一つもしないと」

「じゃあ、今日見たいな命を捨てるような戦い方はやめてくれ」


 俺とエンネが割って入った時、ゲイル達は死ぬ覚悟だった。あれはよくない。皆で撤退して次の作戦を立てるべきだ。生きていれば、次の機会が掴めることもあるんだから。


「……わかった。肝に銘じる」

「そうしてくれ。お前の先祖も、よく死にそうなことをして困ってたんだ」


 そう言って俺は立ち上がる。それを見たエンネも同様だ。


「じゃあ、元気で……」


 このまま飛びさろうと思ったら、ゲイルに右手をがっしり掴まれた。


「待て。もう少し、出来れば一晩くらい話していけ。俺はまだそこの女の子の名前すら聞いてないぞ。出てった後に何があったんだ」


 どうやら、説明を飛ばしすぎたようだ。


「クウト、今晩くらい、こやつらに付き合おうではないか」

「わかった。色々話そうか」


 結局、日が昇るまで、ゲイル達と話し続けた。

 思いの外話題が多く、勇者会議時代には話せなかった本音も、沢山出た。


 良い時間だったと思う。

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