表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄菓子屋まるふくより  作者: ゆめのあと
3章 決戦!地下研究所!編
25/44

24話 潜入、謎の地下研究所

地下へと続く鉄扉が、静かに開いた。

 錆びた蝶番が悲鳴を上げ、港区の裏路地にこだまする。


 「……開いたよ。音は少ないけど、こっちの警戒はバレバレだね」


 ノートPCを肩に抱えたグリッチが、苦い顔をする。

 パソコン修理店「まもるくん」店長の仮面を外し、今はCAINの技術支援担当だ。


 「セキュリティは旧式。ログは……ごっそり削除されてる。

 何を隠したいのか、わかりやす過ぎて怖いね」


 


 「地上で売れねぇもんは、地下に並べる。それがクズの商売さ」


 シルエットが肩をすくめる。

 エプロンを着たまま、靴底で飴玉の包みを潰すように踏みしめた。


  「誰も迎えに来ねぇってんなら……こっちから拾いに行くさ、上に応援を頼んでも連絡がつかねえ。なら今は俺たちでやるしかないさ」

 

 ヘッドライトが呟いた。

 その無造作な髪の下、鋭く光る瞳が真っ直ぐに闇を見据えていた。


 地下通路は、コンクリートと薬品の臭いに満ちていた。

 割れた蛍光灯が不規則に瞬き、奥から“それ”がやってくる。


 「っ……来たね。反応ひとつ。しかも人間の熱量じゃない」


 グリッチがノートPCを閉じる。

 背筋が自然と硬くなる。彼が“見たことのある数値”だったからだ。


 「……まさか、またアイツが……」


 “それ”は包帯のような布で身を覆い、赤い目だけが獣のように光っていた。

 足音もなく、けれど確かに“気配”が迫っている。


 そして、聞こえた。


 ──クラシックの旋律。

 断片的に、ノイズ混じりに。


 


 「……スコア」


 シルエットが、静かに名前を呟いた。

 飴玉を噛み砕き、エプロンの中から“ポップキャンディ”を模した筒を引き抜く。


 「駄菓子屋には、オマケがつきもんだ」


 


 その“飴”の頭をひねると、小さな火花とともに筒が射出された。

 中から飛び出したのは、スモーク弾──コーラ味の匂い付き。


 スコア=グールが突っ込んできた瞬間、その煙に包まれ、一瞬だけ動きを鈍らせる。


 


 「次──こっちが本命だ」


 シルエットは、今度は“チューブ入りソフトキャンディ”(ひ◯Q)を模した管を引きちぎった。

 そこから伸びたワイヤーを展開する。


 超微電流を帯びた拘束具だ。


 煙の中から飛び出してきたグールの腕にワイヤーが巻きつき、一瞬だけ動きを止めた。



 「動きが読める……あの頃と変わらねぇ」


 シルエットが叫ぶ。


 「てめぇ……覚えてんだろ。俺らと、おまえが、並んで立ってたあの任務を!」


 


 「僕……その名前、データに残ってるね。

 “スコア”。CAIN戦術班。3年前、消息不明。……まさか、本当に」


 グリッチが唇を噛む。


 「応答はねぇ。だが、体が動く」


 ヘッドライトが唸るように言った。


 「命令に従うだけの肉体が、まだ誰かを覚えてる……地獄だな」


 


 その言葉に、グールが咆哮した。

 歪な口元が裂けるように開き、衝撃波のような音圧が空間を震わせる。


 


 「くっ……精神混濁波……来るよ!」


 グリッチが耳を塞ぎ、床に伏せる。


 


 「だから言ったろ、“オマケ付き”ってな」


 シルエットが“ミニ駄菓子セット”を投げる。

 その中には、最後の一手──“粉末ジュース型フラッシュ弾”。


 白い光が弾け、グールの目が焼かれたように揺れる。


 「動き止まった! 今だよ、ヘッドライト!」


 「……よし」


 ヘッドライトの拳がうなりを上げてグールを床に叩きつける。


 だが──


 「止まらねぇ……!」


 グールの肉体が軋みながら再起動する。

 血でも汗でもなく、体液に近い液体が管から滴る。


 「やっぱり……“奴ら”の手に落ちてたか」


 シルエットが低く呟く。


 目の前の化け物が、かつての仲間。

 それを打ち砕く覚悟を、この戦いが今、問いかけている。


 ──そして、シルエットの脳裏に甦る、“あの任務の夜”。


 命令、潜入、失踪。そして──スコアの最後。


 記憶の中、未だ言葉を交わせぬ仲間が微笑む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ