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87. 4th DARK the decisive battle ⑦

 


 一方ひかるとじーさんは、谷田貝達の車に乗せられていた。

 車は随分長い間沈黙が続いていた。

 谷田貝の話を聞くと、他の3人も同じ場所まで連れて来られるようだ。


 ひかるは不安に押し潰されそうになりながら、じっと外の景色を見ていた。


 ――聞くまでもなく、作戦は失敗だ。

 タカは国会事件の動画を流す事なく、直前で止めてしまった。


 裏切り者のことを考えると、辛い。

 ひかるたちの作戦が筒抜けであったということはつまり、ダークの中に裏切り者がいることを証拠付けた。

 ……でもやっぱり信じられない。信じたくもないよ……。


 外の景色は、見覚えがある風景だった。

 恐らくこの車は、谷田貝がひかると金を取引したあの廃工場に向かっている。あそこなら、いくら騒いでも誰にも気づかれない……。


 ~♪


 突然、助手席に座る谷田貝の携帯の着信音が静寂を切り裂いた。


「おぅ、どした。……あぁ!? DKだぁ!?」


 怒鳴り散らす谷田貝に、ひかるは驚いてしまう。

 どうやら部下と話してる様だ。


 ――DKって……?


「んな訳ねぇだろ! 奴等は全員とっ捕まえて……。はぁ? 催眠ガスで大広間に入れない!? おいおいおいおい! DKに殺されちゃあ意味ねーの!」


 何やら不吉な言葉を発する谷田貝に、ひかるは余計に不安になった。


 何が起こってるんだろう?

 タカと無関係だったら……、いいけど……。


「……あ? 長井が? 二時間以内って? あっそう。じゃあもういい、お前もこっちに来い!」


 乱暴に通話を切る谷田貝。

 そしてすぐに、後部座席を振り向いた。


「なぁミミズちゃん。DKが現れたらしいぜ」

「え……っ!? そんなわけ……」

「ねーだろ。仮面はDKでも中身は偽物だな」

「タカは……?」

「さーな。ま、あいつはプライドが高そうだし、DKぶっ殺してでも意地で来るだろ。で? 心当たりは?」

「……」


 横のじーさんと顔を見合わせた。首を振るじーさん。

 心当たり……全くない。


「着きましたよ谷田貝さん」

「よーし、降りろ」


 言われた通りに車から降りると、やはりそこはあの廃工場だった。

 廃工場の奥には、既にまさかりさんとエリンギがいた。


「まさかりさん! エリンギ!」

「2人とも無事で良かったヨォ!」

「タカは!?」


 まさかりさんもエリンギも、首を振った。


「無線が切れて……、長井邸に残されたまま、その後は分からねぇ……」

「そんな……」

「DKが現れたって聞いたぞ……?」

「は!? 何で!?」

「そんな訳ないよネ!?」

「訳が分からんが、無事じゃといいが……」


 4人の周りを、銃を持った男たちが囲んでいる。

 そして、中央に椅子が置いてあった。


「感動の再会のところだが、失礼するよ」


 コツ、コツ、とコンクリートの床が鳴る。

 4人が顔を上げると、その人物は愛想良く笑った。


「なが、い……」

「初めまして、ダーク諸君。見たところ、本当に君たちが世界を騒がす犯罪者だとは、とても思えないな」


 長井は悠々と、ひかるたちの側の椅子に腰掛けた。

 谷田貝がまさかりさんとエリンギの肩を押す。


「立ち話もなんだし、全員座れ」


 4人は大人しく地面に座った。

 長井は地べたにしゃがむひかるたちを上から見下ろして、ゆったりと足を組む。


「木谷君は、あと2時間以内にここに来ることになっている。それまでゆっくり話そうじゃないか」


 長井は柔らかに微笑んだ。

 しかし、目は軽蔑の色でひかるたちを見下ろしていた。

 場の空気をピンと張り詰めさせる程の、強烈な圧迫感だ。伊達に総理大臣をやってる訳じゃない。


 4人は、固まってしまった。

 相手の強大さを、今になって思い知ったかのように。


「まず、君達の動機を聞かせてくれないかな。国会事件の動画を流そうとした時点で、君達の目的はよく分かったよ。

 しかし、何故ここまで命を賭して闘う? ただ静かに暮らしてさえいれば、そこそこ平穏に暮らしてはいけただろう」

「……」

「政治家として、国民の一意見が聞きたいな」


 4人は少し押し黙った。

 恐る恐る沈黙を破ったのは、まさかりさんだ。


「オレの金を、テメーの好き勝手に使われたくなかったからだよ」

「ほう、税金のことかな? あれは国民のためのお金だが?」

「アナタが、みんなヲ苦しめるからでス……」

「何のことかな?」

「わしの孫世代を、幸せにする為じゃ」

「私だと幸せに出来ないと?」


 3人は、俯いて再び黙った。

 しかしひかるは、長井を真っ直ぐ見据えて口を開いた。


「あなたのやった事が、許せません。人を殺した事を、他の人に擦りつけて」

「国会事件の事かな。逆に聞かせてもらおう。そもそもその件について、何故赤の他人である君がそこまで憤る?」

「それは……」


 ひかるは目を逸らした。


「国会事件の動画を持っていたのは木谷くんだね」

「……」

「『たまたま中継を見ていて、たまたま録画していた』と、彼は言った。……ちょっと都合よく聞こえるのは私だけかな? まるで事件がある事を知っていたようだ」

「……!」


 ひかる以外の3人が、顔を上げた。


「ま、彼が毎回国会中継を録画していたマニアックな趣味を持っていたら、話は別だが? 彼は何者だ? 藤井ひかるくん、君は知っているだろう?」

「え……」

「彼が偽名を名乗っている事を、君は知っている」

「!?」


 ひかるは目を見開いて長井を見たが、他の3人はもっと驚いてひかるを見た。


「偽名!? 高英が?」

「何デ……?」

「ひかる、本当か?」

「ちょ、ちょっと待って……。何であなたがそれを……?」

「何なら君も偽名だと、もう調べはついてるよ。

 藤原光里さん、あなたのその足の速さ、過去の素晴らしい大会の記録から、その正体を割り出せた。女の子なのに男子限定のルームシェアに住んでるなんて、奇怪な事をしているね」

「っ……!?」

「まあ君は大会の記録から推測が出来たのだが。木谷くんの方はどうしても分からなかったのだよ」


 3人は、言葉を失ってひかるを見た。


 ――ま、まさか長井に、みんなの前でバラされるなんて!

 最悪だ。しかもおれだけじゃなくて、タカも……!


 ひかるは動揺して閉口した。

 それを見て、長井はニヤリとほくそ笑んだ。


「そう言えば、君たちはずーっと裏切り者が誰かと仲間内で詮索しあっていたようだが。教えてあげようか?」

「え……」


 4人が何かを言う前に、長井は口を開いた。


「木谷くんだよ。何もかも全部、私と彼の思惑通りさ」

「は!?」

「エ!?」

「何じゃと!?」

「ちょ、ちょっと待って! 嘘に決まってるじゃんッ!」


 ひかるは堪らず立ち上がった。


「タカはダークの立案者だよ!? 何で自分の首を絞めるような事するの? あり得ないよ!」

「光里さん。君も一緒になって仲間に素性を隠していたよね? 嘘吐きの君の発言に、力はないよ」

「……!」


 ――ここで本名呼びしないでほしい……!


 ひかるはまさかりさん・エリンギ・じーさんの顔を見た。

 失望の顔だ。誰もひかると目を合わせない。


「いや、でも、嘘じゃろ……」


 じーさんが、ぽつりと言う。


「タカが最初に裏切り者がいると言い出したんじゃぞ……? わざわざ自ら、その存在を明かさんじゃろう」

「だから、じゃないのかな? そうすれば、彼に疑いの目は行きにくくなる。裏切り者が裏切り者の存在を、自分で明かす筈がないからね」

「違う! そんなの理由になってないよ!」


 ひかるは涙声になりながら、必死に訴えた。

 そこで再び、長井が水をさす。


「彼とは裏の協定があってね。ダークの情報を私に流す代わりに、全てが終わった後に君たち4人を警察に引き渡し、自分だけ逃すという約束をね。

 ホラ、彼が裏切り者なら、今までの全てのことが辻褄が合うだろう?」

「……!」

「狡猾な彼なら考えそうな事だろう? だが私としても、国会事件の映像を流されては困るからね。彼の事も直前で見限らせてもらった」

「嘘ダ……、嘘だァァ……!」


 エリンギが号泣し始めた。

 まさかりさんが震えた声で、エリンギの肩を持つ。


「おい、エリンギ。そんな簡単に信じんなよ……。幾らアイツでも、そんなことは……」

「では何故彼だけ偽名を名乗っている?自分だけ逃げ(おお)せる為の予防策ではないか?」

「違うよ、違うッ! みんなお願い、タカを信じて……!」

「では光里さん。説明しなさい」


 長井は立ち上がり、ひかるの前に立ち塞がった。


「彼の本名と、偽名を名乗った理由を」

「……!」



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