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82. 4th DARK the decisive battle ②

  


【22時36分】


 長井邸近くに到着した青山は、発信機が示した場所から少し離れたところへ車を停めた。

 青山は彼らの車にある程度接近し、遠くから双眼鏡を使って車内を見た。


 暗闇の中だ。双眼鏡を暗視モードに切り替える。

 するとハッキリ見えた、2人だ。留学生と社会人。それぞれPCとタブレットを見ている。

 ……糸原がいない。まさか、もう邸内に……。


 青山は長井邸の前まで歩いて来た。

 敷地は塀で囲まれている。塀を乗り越えることは道具を使えば難しくないが、塀の上の防犯カメラが不審者を捉えれば、けたたましいサイレンがなる仕組みである。

 しかし、前回と同じ手段で侵入したとすれば……。


 青山は塀の上を仰ぎ見た。ビンゴ……!

 カメラの作動ランプが点いてない……!

 やはり、ダークだ。車内にいる社会人――ハッカーが初回の犯行同様に、セキュリティシステムにハッキングしたんだろう。

 と言う事は、もうダーク――糸原は中だ。


 青山は敷地の入り口まで足を運び、警備の警官に警察手帳を見せた。


「捜査三課の青山です。防犯カメラの作動ランプが消灯しています。侵入者がいる可能性が高いです」







___________






【22時46分】


 一方、ひかる・じーさんの撹乱隊。

 2人の車も、目的地に着こうとしていた。


「ひかる、心の準備はいいか?」

「うん。じーさんこそ」

「大丈夫じゃ。わしがDKに扮したのは2回目と3回目、一番多いぞ。慣れとる」

「それは頼りになるね」


 2人は、DKに扮する。

 狙うはイエロージュエリーのすぐ側にある、交番。


「そっちはスピードが命だ。頼むぞ」


 無線からタカの声。


「大丈夫。任せて」

「行くぞ、ひかる」

「うん」


 2人はDKの仮面を被り、その上からガスマスクをつけた。

 じーさんは車を一気に加速させ、交番の真横に着けた。

 助手席からひかるが何か鉄の塊を投げ、交番の窓ガラスを割った。そしてそれは催涙ガスを一気に噴出した。


「うわぁ!?」


 中にいた数人の警官達の悲鳴が聞こえてくる。

 ひかるは素早く車から降り、交番に入った。

 警官は3人。素早く2人に麻酔銃を撃つ。

 残る1人に、後からやって来たじーさんが後ろから銃口を向ける。


「パトカーの鍵の場所を言いなさい」

「……!」

「早く言わないと撃つぞ」


 警官が鍵の場所を伝えると、ひかるはすぐさま麻酔銃で彼も眠らせた。

 警官の無線を2つと、警察手帳を拝借する。

 2人はすぐさまパトカーに飛び乗り、発進させる。


 交番強襲から僅か1分。

 2人のパトカーは、悠々と警察の包囲網が張られたイエロージュエリーの敷地に侵入した。

 他のパトカーに紛れ停車させる。2人は車内でDKのローブを脱ぐと、予め着ていた警官服が現れた。

 勿論顔は変装済みだ。


 しかし2人は他の警官達に紛れ、すぐさまイエロージュエリーの敷地を出た。

 そこまで離れていない場所で、人気のない路地裏に身を潜める。


 先程拝借した無線のスイッチを入れ、変声された声でひかるは喋り出す。

 ――台本があるので、それを読むだけだ。


「ダーク対策本部の松浦警部。イエロージュエリー前交番、高橋巡査です。DKに襲撃され、パトカーを奪われました!」


『高橋巡査』と言うのは、先程拝借した警察手帳から。扮する声は適当な男性のものだが、松浦相手ならバレない。

 松浦から返事が来る。


「何だと!?」

「パトカーはイエロージュエリーの方へ向かいました。侵入されていないか、至急確認お願いします!」


 続いてもう一つの無線を使って、じーさんが口を開く。


「捜査員に告ぐ。松浦だ」


 ……松浦の声で。

 当然、松浦本人がすぐに気付いた。


「な……っ!?」

「DKが付近の交番を襲撃し、警官に扮してイエロージュエリー内に侵入した。DKが変装できる事は、既に周知の通りだろう。

 このまま奴等の鳥籠とし、捕まえる。よって今後イエロージュエリー敷地外に、誰1人出てはならない」

「に……っ、偽物だ! 耳を貸すな!」


 ひかるが追撃する。


「しかし松浦警部。偽物の言っている事は一理あります……!」

「ぐぬ……」


 先述したが、ひかるとじーさんはもう既にイエロージュエリーの敷地外だ。

 じーさんが松浦の声で続ける。


「このままDKを野に放つ事は出来ない。本人であることを証明出来るまで、捜査員は敷地外に出る事を禁ずる!」


【22時53分――既に予告時間7分前】


 こうしてイエロージュエリーを、警察の捜査員100名の鳥籠とした。

 イエロージュエリー外にダークが現れたとしても、全員が一斉に現場に向かうことはできない。


「タカ、作戦完了したよ」

「分かった。後は任せろ」


 ひかるとじーさんは、静かにその場を離れた。







___________







 長井邸の手洗いの中。

 ダークに扮した俺は、撹乱隊の作戦成功を聞き一先ず胸を撫で下ろす。


 これで100人のダーク捜査員が、一気に長井邸に押し寄せるリスクは減らせた筈だ。

 だが動画の配信が始まりダークが長井邸にいる事が分かれば、まずは敷地外に常駐する警官がここに来るだろう。そうして時間を追うごとに警官の数が増えていく。

 まさかりさんの扉のロックで警官を入れない事は出来ても、この邸内自体が数で囲まれてしまえば俺の逃げ道がなくなる。

 窓を含め、脱出経路は幾らでもある。広い邸内だ、目立つダークの衣装を脱ぎ捨てれば、数人の警官なら撒くことができるだろう。


 国会事件の動画は30秒ほど。ダークが少し喋る時間と、邸内の爆破のシーンを入れても、動画全体は3分以内で納める。そこから広い邸内を駆け抜け、ダークの衣装を脱ぎ捨てる時間を鑑みると――。

 動画配信開始から逃走完了まで、――10分以内だ。

 10分で長井邸から出れば、安全に脱出できる、筈だ。


 腕時計を一瞥する。


【22時55分――予告時間5分前】


「まさかりさん、いいぞ」

「じゃ、いくぞ」


 プッ


 邸内の全てのスピーカーが、俺の無線と繋がる。

 前回と同様の手口だ。


「こんばんは。長井さん、使用人の皆様。

 私は、怪盗ダークです。既に邸内にお邪魔しています」


 長井が邸内にいるかは不明だ。

 だが奴がどこにいようと、関係ない。


「予告時間5分前ですが、本日は長井さんの大切なモノを奪いに参りました。

 平野さん、ではなく、貴方のモノです。

 その下準備として、邸内の何処かに爆弾を仕掛けました。小型ですが一部は吹き飛ばす威力です。

 ただし中央の大広間だけは、被害が及ばないとお約束します。使用人の方も含め、皆さん23時までに大広間にお越しください」


 そこまで言って、俺は無線を切った。


 長井はともかく、使用人に罪はない。

 長井邸の爆破は動画視聴者の為のただのパフォーマンスであって、人的被害は絶対に出してはならない。


 そうして俺――ダークは手洗いを出て、誰もいない廊下を歩き大広間に向け闊歩して行く。



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