表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/156

62. 3rd DARK inside ②

 


 午後9時35分

【ダーク出没予告時間25分前】


「送るぞ」

「あぁ」


 まさかりさんはイエロージュエリーの警備会社に、DKの名で一通のメールを送信した。

 内容は、今から10分後の45分に、イエロージュエリーの隣りのサファイアホテルへ青山を一人で行かせろというもの。


 これは後に警官を眠らす際、青山のみを隔離し起きていてもらうためだ。


「さて、そろそろ」


 じーさんとエリンギはベランダに出て、目立たないようにこっそりと、隣のイエロージュエリーの屋上の様子を見る。

 イエロージュエリーの屋上は壁で仕切られているが、その壁と今いるベランダの高低差はわずかに壁が低いくらい。屋上とベランダの幅は1メートル弱ある。


「こレ……、跳ぶノ?」

「行けるじゃろ」


 俺たちがいるのは3階。

 エリンギは下を見下ろして、震え上がった。


「エェー……」

「おいエリンギ、顔見せるなよ」


 俺は部屋の中から言った。


「見張りは3人じゃ」

「ならじーさんとエリンギは同時に2人を仕留め、残りはじーさんがやれ」

「分かったわい」


 2人は麻酔銃を取り出した。

 ……麻酔銃と言ってもいつもの拳銃タイプではなく、遠距離でも狙える大きな高性能のものだ。


 2人はDKの仮面を被り、ローブを羽織り、銃口をベランダから屋上の警官に向ける。


「いいかじーさん、3人目に援軍を呼ばせないように素早く仕留めろ」

「了解した」

「そろそろ45分だぜ」


 まさかりさんの声に、ベランダに緊迫した空気が流れる。


 午後9時45分


 2人はそれぞれ狙い撃つ警官を決め、照準を合わせる。


「エリンギ、どっちがカウントする?」

「じゃア……、じーさんガ」

「分かった」


 エリンギがごくりと唾を飲んだ。


 俺が手伝わないのは、万が一警官にこちらを見られた時に、DKは2人なのにベランダには3人いたとなると、あまりにも不自然だからだ。

 ダークも遅れて同じ場所から侵入することになるのだが、ダークとDKは敵対関係にあるため、同じ空間にいたことがバレてはいけない。

 このDKの部屋は必ず割れる。だからわざわざ俺は別の部屋を取り、ここの部屋に入る時も人に見られないように細心の注意を払った。


「行くぞエリンギ……」

「……OK」

「3、2、1……」


 2人が同時に引き金を引くと、次の瞬間屋上の2人の警官が倒れた。


「どうした!?」


 残された1人が、こちらに気付いた。

 それと同時にじーさんは再び引き金を引き、最後の警官は倒れた。


「ふぅ~……」

「ヨッシャ!」


 エリンギとじーさんはハイタッチして、束の間安堵した。


「急げ。ここからは時間との闘いだ」

「了解!」


 2人はまず荷物の入った鞄を屋上の方へ放り投げる。


「まさかりさんは今のうちに扉のロックを」

「分かった」


 その間まさかりさんは、警備会社にハッキングし屋上の扉のロックの解除を始める。


「さぁ行くぞエリンギ」

「ウ、ウン……」


 身軽なじーさんは、軽々とベランダから屋上へと跳び移った。……還暦を過ぎた人間の技とは思えない。


「さぁエリンギも、早く」

「よ、ヨ~シ……」


 そう口では意気込んでみるが、エリンギの脚はガタガタと震えていた。


「おい早くしろエリンギ」

「わ、分かってるっテ……」


 尻込みをするエリンギに、俺は少しイラついて言った。


「じーさんが出来たんだ。お前はじーさんの何倍も若いし、外人なんだから脚も長いだろ」

「外人言うナ!」

「それに『何倍も』は蛇足じゃろ!」

「今だ行けっ」


 エリンギの背中を軽く押すと、エリンギは意図も容易く屋上へ跳び移った。


「ア……、行けタ」

「おい、ロック解除完了だ!」

「後は計画通りに。特にエリンギ、失敗したらひかるが死ぬと思え」

「ワ……、分かったからプレッシャーかけないデ」


 2人はまさかりさんがロックを解いた扉から、それぞれ荷物を持って侵入する。


「侵入したぞ!」

「今度は逆に、ロックを掛けるぜぇ!」


 無線からまさかりさんが激しくキーを叩く音が聞こえる。

 イエロージュエリーの全ての出入口がロックされ、人の力での出入りは不可能になった。


 一方その間じーさんとエリンギは二手に分かれ、それぞれショールームの右と左の、天窓用の通路の入口に立った。


「まさかり、照明を」

「行くぜ! 3、2、1……!」


 照明が落ちると、2人は暗闇の中でショールームの中へと壁伝いに進んでいく。

 彼らのすぐ下では警官たちが混乱していた。

 警官は皆懐中電灯を持っている。DKの存在が知れるのはもはや時間の問題。


 2人はそれぞれ両脇に抱えていた鞄を開ける。

 強力なガス噴射器だ。ショールームの左右から、計4台の噴射器が催眠ガスを放出し始める。

 暗闇の中静かにガスは瞬く間に広がり、警官達の8割が倒れた。


「上だ! 上の通路にDKだ!」

「催眠ガスだ!ガスマスクをつけろ!」


 警官がDKの存在に気付き、光線銃を撃ち始める。

 じーさんとエリンギは、ガスマスクを付けた数人に麻酔銃を撃ち込んだ。


「ヒィィィ!! 早くみんな眠ってェェ!」


 しばらくすると警官側の光線は止み始め、静寂が訪れる。

 エリンギがおそるおそる下を見ると、警官たちは皆眠っていた。


「……眠ったか」

「目視出来る範囲なら、恐らくの」

「まさかりさん、換気を」

「分かってら」


 まさかりさんはショールームの全ての窓をコンピューター操作で開け、換気扇を回した。ついでに照明も回復する。


 その間、今度は俺 (ダーク)はホテルのベランダからイエロージュエリーの屋上へと跳び移る。


「まさかりさん」

「今度は高英の方だな」


 まさかりさんは先程DKのために解除した屋上の扉を、再び解除する。

 中に入った俺はDKが向かったショールームの方ではなく、鍵庫の方へ向かった。


 一つ階段を下り鍵庫の前に辿り着くと、まさかりさんが扉のロックを解除する。

 重い扉が開かれると、壁全面にショーケースの鍵が掛けられていた。


「……すごいな」


 見た者にしか分からぬ圧迫感。俺は思わず言葉を漏らす。


 ここで前日のけいの仕事が役立つ。

 けいが撮った写真を繋げ、大方鍵庫全面の見取り図を作り上げたまさかりさんは、地道な作業でお目当ての鍵を見つけ出した。

 よって今ここで切迫しながら鍵を探す手間が省けるという訳だ。


「“R6223”……」


 あった。まさかりさんが見つけた場所に。

 俺はその鍵を持ち、ショールームへの扉に向かった。


「……そろそろ時間じゃ」

「扉、開くぞ」


 午後9時57分

【ダーク出没予告時間3分前】


 イエロージュエリーの全ての扉が再び開かれる。


「いいかエリンギ、じーさん。青山の受け答えは全てじーさんがやれ。エリンギは喋るな、ボロが出る」

「酷い言い様じゃな」

「否定は出来ないけド……」


 エリンギとじーさんは、微かな足音を聞き取った。


「来るぞ」


 エリンギもじーさんも、ショールームの正面入口に銃口を向けた。

 そして慎重に銃を構えながら、青山が姿を現した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ