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実技試験!?

「それでは各自、ほうきにまたがれ!」

皆が当たり前のようにふわっと空を飛ぶ。

俺も乗り方は教科書で覚えてきた。が、どうしても飛べない。

というか、この細いほうきの上でバランスが取れない。

どうしても無様にひっくり返ってしまう。


「わはははははは!!」

「お前、今まででどうやって生活してたんだよ!?」

クラス一同に爆笑された。まだ爆笑してくれるだけありがたい。


前世の体育を思い出す。あの時、あまりにもできない人に対しては気まずい雰囲気が流れていた。俺は体育は平均よりは下の方ではあったが、ビリではなかった。


が、今では圧倒的ビリだ!何という屈辱!!


スタンシーはというと、とても軽やかにすいすいと飛んでいた。クラスで一番綺麗に飛んでいるようだ。

寮で隣室のバグリーもアグレッシブに飛んでいる。


全然飛べない俺を見て、スタンシーは「大丈夫?」と声をかけてくれた。ありがとう。見ての通り全然大丈夫じゃないけど。


その後もボールを銃弾のように投げたり、瞬間移動したりといった実技試験があったが、同じような調子で終わった。


というわけで、俺は筆記が圧倒的1位・実技が圧倒的ビリという形で終わった。ちなみにスタンシーはその逆、バグリーはどちらも5位くらいであった。



◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️

試験の後、スタンシーが

「待って!ブルーくん!」

と呼び止めてきた。


「あのさ、私、来週再試があって……このままじゃ退学の危機なんだよね……でもそれだけはどうしても避けたくて……だから、私に勉強を教えてください!お願いいたします!」

そう言うとスタンシーはぺこりと頭を下げた。


……そう言われても、俺はまだ転生して3日だぞ。教えられるほどの実力は無いし、というかこの世界に慣れるので俺も精一杯だし……。


うん。断ろう。


そもそも前世でも「一緒に勉強しよう」系のお願いは断ってきたのだ。

勉強できる俺からすると、教えるばかりであまりメリットがない。

「ごめん、今回の点数はたまたまヤマが当たっただけなんだ。俺には教えられる自信ないや。」

「そこを何とか!ほら、お互いノーブル初等科出身「じゃない」仲間じゃん?」

ノーブル初等科はこの学園の付属学校で、クラスのほとんど(バグリーを始めとして)はそこの出身であるようだ。


そうか。彼女にも頼れる人は他にいないのか……いや、急に世界線が変わった俺よりはましな気がするが。


「俺、テストの点の取り方のコツは教えられるかもだけど……。」

と、俺が困っていると、

「それでもいいからさ……そうだ!私、ブルーくんに実技教えるよ!だから代わりに座学教えてください!!」


契約成立。


こうして俺とスタンシーの放課後特訓が始まった。



まず、スタンシーは俺に飛びかたから教えてくれた。

「身体が上から糸で引かれているところをイメージしてみて。手はで体重を支えるんじゃなくて、ほうきに添えてバランスをとる感じで……。」

スタンシーは意外にも教えるのが上手かった。そして俺がコツをつかむまで何度も何度も教えてくれた。


これがあれか、運動とか勉強の嫌いな奴の言う、「教えてもらってもできないのが申し訳ない」ってやつか。

あの時は「他人の優しさを踏みにじりやがって(別に俺は何も教えてないけど)」って考えていたけれど、転生してみたら気持ちが、よーく分かった。


1時間後、やっと3秒くらいバランスが保てるようになった。



その後は、俺が座学を教える番である。

まず、彼女の試験の答案を見せてもらった。点取り問題はできているが、少し捻られるとできていなかった。そもそも、基礎事項の理解ができていなさそうだ。

「なあ。詠唱において、炎の要素・強さ・動きはどの順で並ぶかわかるか?」

「え、ええと…………。」

簡単な文法事項みたいなものだ。一から教え直す必要があった。

どんな科目でも、魔法でも、大切なのは基礎なのだ。そこをおろそかにして答えを暗記していてはすぐにボロが出てくる。



こんな感じで、夕方までは学校の授業、放課後はみっちりお互いの特訓を行った。



一週間が経ち、スタンシーの再試が行われた。

「ブルーくん!ブルーくん!」

再試が終わった後、スタンシーが俺の部屋までやって来た。

「お!再試、終わったのか……どうだった?」

聞くと、スタンシーが自信満々に答案を見せてきた。

30点~40点代のオンパレード。


いや、全く良い点数ではないが、前回より上がっている!

「「ぎりぎり退学は勘弁してやろう」って言ってもらえました!」

褒められてはないからな?……でも、まあ、

「良かったな。」

「うん!本当にありがとう!」


そう叫ぶとスタンシーは俺に抱きついてきた。ふんわりとした心地と微かな甘いにおいを感じた。

女子に抱きつかれるのは(前世を含め)初めてだ。

なかなか悪くない。


ほう。


たまには誰かと勉強するのも悪くないものだな。



ーーこれは、学歴だけが自慢の俺が、

魔法の世界で少しずつ青春を取り戻していく物語だ。


※閲覧ありがとうございます!


以前の投稿へのアクセスもどうかよろしくお願いいたします!


「毎朝、新宿~四ッ谷間で乗り合わせる君へ」(短編)

https://ncode.syosetu.com/n1567ic/


「高級な傘をなくした女の子の話」(短編)

https://ncode.syosetu.com/n2859ic/



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