−「笠木 結」の物語 3 −
「…で?復讐したい相手は誰だ?」
「実は、わからないんです。」
「…?」
「覚えているのは…迫りくる炎と、
自分を顧みず私を助けてくれたお父さん。
そして、顔も分からない犯人への怨みだけ…」
「なるほど、放火…か?」
「はい。訳もわからず家が燃やされました。
お父さんは死に、お母さんもショックで寝込み…
幸せだった日々が一瞬で無くなってしまったんです。」
「なるほど…」
「ごめんなさい。
何故かあなたに会えば、何か分かるんじゃないかと…
勝手に期待してしまいました。」
「分かるよ。」
「そうですよね。いきなり押しかけて…って、え?」
「だから、分かるよ、俺。」
「なん、で?…今の話しだけで?」
「ちょっと、期待持たせて大丈夫なんでしょーね!」
「あぁ。正確にはこれから分かる。
と、その前に、これも仕事だからな。
価格交渉と行こうじゃないか。」
「基本は一人殺るにつき1000万だ。
そんな大金、お前らに払えるのか?」
「払え、ます。
お父さんの遺してくれたお金があるから。
本当はこんなこと望んでないと思うけど、
でも、私もこのまま生きてくなんて、嫌!
だから、お金は払います。お願いします。」
「まさか払えるとはな。
分かった。取引成立だ。」
「それで、どうすんのおじさん?
JKからお金もらって分かりませんでしたー、は
ありえないっしょ?」
「当たり前だ。金を貰う以上はやり遂げるさ。
ただ、嬢ちゃんには辛い話しになる。
それでも平気か?」
「私が耐えれることなら、なんでも…」
「ちょっと、やらしいことしようとしてんじゃ…」
「するか!どアホ!覗くんだよ!」
「覗く!?あんた、JKのスカートの中を覗くの!?
やっぱ変態じゃん!」
「ちげぇよ!お前本当にジャマだな!
記憶だよ!記憶を覗くんだよ!」
「き、おく?」
「あぁ。人間ってのは覚えてないだけで、
記憶の深層に見たもの全て保存されている。
なんでか俺はそれを覗くことができる。
ただ…」
「ただ…?」
「覗かれている人間も一緒に追体験することになる。
思い出したくない現実も、否応なしに見ることになる。
それでも、思い出すことを選ぶのか?」
「はい。それでお父さんを殺した犯人が分かるなら。
何か少しでも手掛かりが掴めるのなら。
あの悲劇も耐えてみせます。」
「そうか、よく言った。
なら、そこのベッドに横になってくれ。」
「結に何する気なのー!このヘンタイおっさん!」
「お前ホント帰れよ!雰囲気ぶっ壊れんだよ!」
「まったく…ほら、始めるぞ。」