−「笠木 結」の物語 2 −
「結ー、ここじゃない?」
「かな?チラシのマークは確かにここみたいだけど…」
「なんか、ボロいビルだね。」
「そうだね。」
「行く?」
「うん。怖いけど、行ってみよう。」
「あ、多分ここだ。扉に晴れる屋って書いてある。
結、ほんとに平気?」
「私は大丈夫。希こそ、帰ってもいいんだよ?」
「ここで結を一人にはできないって。
ま、もし襲われそうになったら二人で叫びましょ。」
「ありがと、希。それじゃ、行こう。」
…コンコン…
…コンコン…
「あれ、留守かな?」
「あたしに任せてみ?うりゃ!」
ゴンゴンゴンゴンゴン!
ガチャ!
「うるせー…ぐはっ!」
ドカドカ!
「あ、やば…勢いのまま殴っちゃった…ニヘヘ。」
「ニヘヘじゃねぇだろ!この小娘が!」
「小娘じゃないですー!女子高生ですー。」
「立派な小娘じゃねぇか!」
「あのー、大丈夫ですか?」
「どう見ても大丈夫じゃねぇだろ!
こちとら鼻血も出てんだわ!」
「ごめんなさい、私の友達が…
悪気は…多分無いんです。」
「多分かい!
普通初めてのとこはしっとり来るだろうが。
それに、何で呼び鈴使わねえんだよ…」
「あ、全然見てなかった。めんごっすー。」
「このクソガキッ…
で、なんだ、冷やかしなら帰んな。」
「冷やかしでは…朝、チラシ配ってましたよね?
それを見て、ここまで来たんです。」
「そうか、そういや今日の朝変なガキが…
下の方からニヤニヤしながら顔を覗き込んで…」
ニヤニヤ
「おめえじゃねぇか!」
「当ったりー!あたし、希ちゃんでーす!」
「あぁぁ…なんで俺はこんなガキにチラシを…」
「鼻血が出てなきゃイケメンだったのになー。
ざんねーん。」
「誰のせいだと思ってんだ!
ったく…で、そっちの大人しい嬢ちゃんは?」
「あ、はい、私は笠木結と言います。
あなたのチラシを見て、どうしても来てみたくなって。」
「ほう。ワケ有りか。
まぁ、いい、入んな。」
「何するの、ケダモノー!!」
「話しが進まねぇんだよ!お前は帰れよ!」
「あたしは結の保護者なので帰りませーん!」
「すげぇうぜぇ…まぁいい、近所迷惑だから早く入れ。」
「はーい。」