猫と新しい出会い
「こんにちは。ぬいぐるみを持って来たので、担当の方いらっしゃいますか?」
「はい。聞いてますので、こちらへどうぞ」
「はい。よろしくお願いします。」
児童養護施設の会議室にて、担当者と女の子は寄付する事になるぬいぐるみを確認し、書類を作成する。
「では、このぬいぐるみ達を全て寄付と言う事でよろしいのでしょうか?」
「はい。実家に置いておけなくなって、でも、捨てるのは嫌なんです。だから、この子達を喜んで大事にしてくれる可能性が高い所へ寄付したいと思ったのです。この猫は物心つく前から一緒にいた子なので、大分古くはあるのですが、まだちゃんと鳴くのでおもちゃとしては問題ないかなと思います。他の子達もピアノの上に飾っていたので、そこまで劣化はしてないと思います。」
「そうですか。大事にされてきたのですね。ここにはあまりぬいぐるみはないので、こちらでも子ども達と仲良く過ごしてもらえると思います。一緒に子ども達にお会いしてみますか?」
「ええ。是非お願いしたいです。」
児童養護施設の居住エリアへ移動すると、
「お姉さん誰?」
「その箱何?」
「こんにちは。お姉さん何しにきたの?」
等と子ども達がよってきた。
女の子はしゃがんで、子ども達と目線をあわせて、箱をあけ、ぬいぐるみを見せる。
「この子達を届けにきたの。私がずっと大事にしてきた子達だけど、一緒にはいられなくなったの。この子達を皆は大事にしてくれる?」
「うん。」
一斉に子ども達は頷き、我先にとぬいぐるみを抱っこしていく。
少し離れた所にポツンと一人幼稚園位の子がいた。
女の子は一番大事にしていた猫のぬいぐるみを手に取り、その子へと近づく。
女の子は幼稚園位の子へと近づき、目線を合わせるようにしゃがんで、猫のぬいぐるみを押して、にゃにゃと鳴らしながら話しかける。
「こんにちは。この子はにゃーこ。私の大事なお友達だけど、一緒にいられなくなったの。だから、ここに連れてきたの。あなたはこの子と遊んでくれる?」
幼稚園位の子はゆっくりとこちらを向くと、猫のぬいぐるみへと手を伸ばし、大事そうに抱き締めてくれた。
「この子もらっていいの?」
「いいよ。私が小さい時から一緒にいた子だから、少し古いんだけど、大事にしてくれると嬉しいな。」
「うん。大事にするよ。一緒に遊ぶの。」
「そっか。仲良くしてね。」
幼稚園位の子はにっこりと笑い、猫のぬいぐるみを女の子へと向けて振ってくれる。
女の子も手を振り返し、職員や他の子ども達の元へ向かう。
「そろそろ帰りますか?」
「ええ。この子達を大事にしてくれそうで良かったです。皆、この子達を大事にしてあげてね。バイバイ。」
女の子は子ども達に声をかけると、職員と共に部屋を後にした。