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超短編集(怖)

ハイウェイラジオの渋滞情報

作者: M


 俺は大阪に向かって深夜の高速を走っていた。


『続いての曲は…』


 ラジオから流行りの曲が流れてくるが、俺は新しい曲に付いていけない。


 突然、前の車のハザードが光る。


「ッチ、渋滞かよ。」


 この辺は渋滞が起きやすかったが、最近はバイパスも沢山できて、まず夜に混む事はない。

 俺もブレーキを踏みながらハザードをたく。


「事故か?」


 一人で走ると独り言が多くなる。

 ハイウェイラジオに切り替え、渋滞情報がないか聞く。


『ザ…方面…ザザザ…交通集中により五キロの渋たぃ…ザザ…』


 音質は悪いが、なんとか聞こえる。

 そもそもハイウェイラジオは音が小さいから聞き取りにくい。


『名古屋方…ザ…をご走行中の皆様…』


 とうとう車列は完全に止まってしまった。赤いテールランプがトンネルの方までずっと続いている。

 一方、反対側の車線は順調に流れていく。


「これは確実に事故だな。」


 俺はため息をつく。

 ラジオからは、女性の合成音声でアナウンスが続いている。


『ザ…ャンクションを先頭に、工事…ザザ…ため渋滞が発生…』


 車が動かなければ眠たくなる。しかも独特の抑揚のない声は眠気に拍車をかける。

 まあ、知らない曲を聞き続けるのと大差はない。


『ザザ…続いて、事故の情報です……』


 俺は眠気と戦うため、ガムを口へ放り込む。


『ザザ…インター付近で接触事故が発生…ザ…事故により三名が重体…』


 あれ?

 交通情報ってそんなことまで教えてくれたっけ。いや…多分眠くて聞き間違えたのだろう。

 きっと「事故で三キロの渋滞」の空耳だ。


『ザ…ザザ…分頃、大型トラックが乗用車に接触。接触したトラックの運転手、山崎なぉ…ザ…』


 事故を起こした人の名前を言ってる!?

 やっぱりおかしいぞ、この放送。交通情報がそんなことまで言うはずがない。


『…が重体。乗用車の運転手と助手席にいた…ザザ…つ子さん夫妻が重体…』


 俺の眠気はどこかへ飛んでいった。

 ラジオの音量を上げる。


『…ザザザ…二時頃発生したトラックの横転によ……ザザ…一名が重体……』


 驚きとともに面白さも感じる。こんな情報が聞けるなんてレアに違いない。

 何でこんな情報が流れてるんだ?緊急車両に伝える内容が間違えてハイウェイラジオに乗ったとかか。


『…トラック運転手、山…ザ…ん太さんが重体。』


 今の時間だけでこんなに事故が起きている訳はないはずだ。一体いつからいつまでの情報なんだろう。


『続いて、大阪方面…ザ…ザザ…ンネル内で故障車のため……』


 トンネル?俺が今まさに巻き込まれている渋滞の事じゃないだろうか。

 だんだん雑音がなくなり、はっきりと聞こえ始めた。


『…停止していた列にトレーラーが突っこみ、乗用車四台を巻き込む追突事故が発生。五名が重体。』


 この渋滞はそんな大きな事故なのか。じゃあ当分動かなそうだな。


『追突された乗用車の運転手、葉竹武丈さんが…』


 え…俺の名前?


『…重体。』


 次の瞬間。


  ブブーー!


 大きなクラクションの音。


 俺は驚いて後ろを振り向く。


 迫りくるヘッドライト。


 全ての音が止まり、真っ暗になった。



 三週間後。

 お見舞いに来てくれた友達に、俺が聞いたラジオの事を話した。

 未来の電波を受信したとか、トラックが違法電波を出してたんじゃないかとか色々意見はあったが、俺が寝ぼけてたんだろうという結論になった。


 しかし間違いなく聞いたんだ、ハイウェイラジオの重体情報を。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 不気味で怖い話ではあるのですが、 主人公が生還し、オチの上手さもあり不思議な読後感の良さがある作品でした。
[良い点] なるほど、「渋滞」と「重体」が掛かっているのですか。 怪談の中に盛り込まれたダジャレが、良いスパイスになっていますね。 [一言] 深夜のテレビで「明日の犠牲者はこの方々です」という臨時放送…
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