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8.隠された力

 『千里眼』。

 特殊な視力をもつギフトであり、一般には遠方を見る能力。

 しかし、千里眼の中には遠く以外を見るものがある。

 例えば過去。

 見えるはずのない他人の過去を、その人物を見ただけで覗くことができる。

 あるいは未来。

 これから起こる事象を先に知ることができる。


 そして――


「私の『千里眼』は特に変わっていてね。他人のギフトを見ることができるんだ」

「ギフトを?」

「そう。ただ見るだけじゃないよ? どういうギフトなのか。何ができるのかできないのか。ギフトに関する情報を細かく見られるんだ」

「そんなことが……」


 知らなった。

 先生とは何度か話しているけど、自分にことは話さない。

 いや当然のことではある。

 ギフトは強力だけど、先に知られたら対策も立てられる。

 だからギフトホルダーは基本、自分がどんなギフトを持っているか他人には話さない。

 僕のように、いろんな理由で広まることはあるけど。


「じゃあ先生には見えてるんですか! アレンのギフト!」

「ああ、もちろん。見えている……というかね。私は初めて会った時から、彼のギフトの可能性には気付いていたんだよ」

「えぇ! そうなんですか!」

「うん」


 先生は透き通るような曇りなき瞳で頷いた。

 どうやら本当らしい。


「だ、だったらどうして教えてあげなかったんですか! 教えてあげたらアレンだってもっと早く」

「あー責めないで! 私もそうしたかったんだけどね。彼女が自分で気付くべきだと言ったから黙っていたんだよ」

「彼女?」

「君たちもよく知っているよ。彼女はこの学園のトップだからね」


 僕とニナは同じ人物を思い浮かべる。


「「学園長?」」

「彼女と私は旧友でね。君のことも先に相談していたんだ。そしたら、自分で気付くことが最善の未来だって言ったんだ。彼女も千里眼をもっている。ただ同じじゃない。彼女の場合は、未来が見える」

「未来!?」

「ニナちゃんはいい反応するね。話していて楽しいよ」


 そうにこやかに語る先生に対して、ニナは驚きっぱなしだった。

 もちろん僕も驚いている。

 学園長を見たのは一回きり。

 入学式の時、僕たちに向けて挨拶をしてくださった。

 凄く綺麗な人で優しそうな雰囲気だった。

 そんな見た目のイメージとは裏腹に彼女は……世界最強のギフトホルダーと呼ばれている。 


「学園長は僕の未来を見たんですか?」

「そうなんじゃないかな? 私も細かくは聞いていない。ただ私が見た情報を伝えた結果がさっきの発言さ。きっと彼女には君が自力で気付く未来が見えていたんだろうね。ただ勘違いしちゃ駄目だよ? 彼女が見た未来だからって確実じゃない。君がこうして気付けたのは、君自身が選んだ結果だ」

「先生……」

「胸を張りなさい。君は自分自身の力で未来を掴んだんだ」


 先生の言葉に心が熱くなる。

 僕が選んだ。

 僕が勝ち取った。

 誰のおかげでもない。

 僕自身の手で。


「よかったね。アレン」

「うん」


 彼女が隣で微笑む。


「さて、ここまでは前置きだよ。本題はここから、大きく二つある」


 僕たちは先生のほうを向く。

 さっきまでより少し真剣な顔になった気がして、気を引き締める。


「まずは君のギフトについてだ。もう気付いていると思うけど、君のギフト『司書』はただ本や知識を管理する力じゃない。アレン、昨日と同じことができるかい?」

「はい。できると思います」


 僕は席を立ち、自分の胸に手を当てる。

 あの時は無我夢中だったけど、今でも感覚は鮮明に残っている。

 感覚を辿れば……できる。


 僕は左手を前に、本を持つようにかざす。

 そして目を閉じる。

 僕の中にはこれまで読んだ本の知識があり、僕だけの本棚には本の複製が保管されている。

 八万七千冊の中からあの一冊をイメージして、この手に呼び出す。


「【聖剣の英雄】」


 声と一緒に本が召喚される。

 そのままひとりでにページが捲られ、開いた箇所から一振りの剣が生成された。


「綺麗……」

「聖剣プレアデス。かつて魔王と戦った七人の大英雄、その一人が使っていた剣だね」

「はい」

「それは本物じゃない。本物に限りなく近い複製だ。君の能力は、本の中に登場する主人公の力を複製できる」


 先生は続けて語る。

 僕の中に保管された本たち。

 本は知識の結晶でもあれば、空想の産物でもある。

 僕のギフト『司書』は、空想の中に登場する力を現実に再現できる。

 本を開いている間だけ、僕は物語の主人公と同じ力を使えるんだ。


「今回は聖剣だったけど、別に物に限った話じゃない。ギフトそのものを再現できる」

「す、すごいギフトだよ! ねぇアレン!」

「う、うん」


 薄々気付いてはいた。

 それでも改めて言われると驚きを隠せない。

 役に立たないようなギフトの本領が、まさかこんなに……。


「無敵だよ。使い方次第で、このギフトは最強になれる。もちろん力を使うために本を読み漁らないといけないんだけど、君はもう十分に蓄えているからね」

「もしかして、先生が僕にここの管理を任せたのって、本を読ませるためですか?」

「ん? んん、まぁそうかな」


 ああ、違うんだ。

 普通にサボりたかっただけ……なの?


「ともなく、君はすでに力の条件を満たしている。あとは使い慣れるだけだ! そのために私と学園長から君に課題を与えよう」

「課題ですか?」

「うん。君にはこれから、この学園であらゆる問題を解決してもらうよ」

 

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