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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第二章

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30.死者の行進

 依頼開始時刻になる。

 ちょうど正午、僕たちは積み荷と一緒に王都を出発した。

 三台の荷車が直列で並んで走行する。

 僕たちは中央の荷車を警護することになっている。


「平和だな」

「あったり前でしょ。まだ王都をでて五分よ?」

「うるっせーな! わかってるつの」

「あははは……」


 この二人は依頼中でも変わらないな。

 むしろさっきの一件があったから、ジーク君は異様に苛立っている気がする。

 緊張感がないと注意されてしまいそうだ。

 もっとも、しばらくは安全な旅が続くだろう。


 僕たちが目指しているのは、スレイプスという街だ。

 王都から二つ離れた大きな街で、さまざまな商業が発展しているらしい。

 道は整備された街道を行く。

 なるべく安全なエリアを通るから、直線ではなくグルっと大回りして目的地へ向かう。

 その関係上、一度は外で夜を明かすことになる。


「注意がいるのは夜だね」

「うん。夜は動物や魔獣も活発になるし。盗賊も動きやすいからね。奇襲されないように注意しないと」

「余裕だろ。交代で起きとけばいいんだし、こっちには『鷹の目』があるからな」


 四人の視線がフレンダさんに集まる。


「あ、えっと……頑張ります」


 彼女のギフト『鷹の目』は、本人を中心とした一定量域内を俯瞰的に見ることができる。

 こういう護衛の依頼では、彼女が金目になるといっても過言ではない。

 彼女のギフトがあれば、敵の接近を事前に知ることができるのだから。


「だからってフレンダちゃんに任せっきりにしないでよね」

「わかってる。フレンダが寝てる間は全力で警戒するぜ。一応俺のギフト、五感も鋭くなるからな」


 『超身体』、ジーク君のギフトは身体能力を大幅に増幅する。

 そこには感覚も含まれるらしい。


「五感ならアレンも負けてないよね?」

「お、そうなのか? なんか秘策でもあんのか」

「それは見てからのお楽しみだよ! ね、フレンダさん」

「そうですね。ビックリはすると思います」


 二人して勝手にハードルを上げないでほしい。

 一先ずなんの話をしているのかは察した。

 確かにあの本の能力は、この依頼にも有効だろう。


「なんだなんだ? 楽しみじゃねーか」

「あんまり期待はしないでね。それと、楽しそうに話してると注意されるよ」

「お、そうだな。集中するか」

「うん」


 王都から離れるほど、徐々に危険は増えていく。

 僕たちは細心の注意を払い、護衛に努めた。


 その後は特になにごともなく、時間が過ぎていく。

 夕日が沈むころには、森に入る手前まで馬車が進んでいた。


「よし、今日はここで野営を貼る。テントの準備をしてくれ」


 騎士の指示に従い、僕たちは野営の準備をする。

 馬車は三角形を作るように止め、守りやすく陣形を作る。

 森に入る手前で見晴らしもいい場所だ。

 注意すべきは森からの襲撃になるだろう。

 騎士たちのテントを森側に、僕たちは反対側にテントを張る。


「んじゃ交代で休むか」

「そうだね、二つにわかれよう。僕とフレンダさんは別々で、あとは――」

「私はアレンと一緒だよ!」

「言うと思ったぜ。じゃあオレとフィオとフレンダでいいか」


 という流れで交代の順番を決め、僕たちは夜を過ごす。

 穏やかな夜だった。

 夜空には雲一つなく、星々が輝いている。


「星が綺麗だねぇ」

「うん。あたりに光が少ないからよく見えるね」


 先にジーク君たちが休み、僕とニナで見張りをする。

 フレンダさんは特に、馬車の移動中にずっとギフトを使ってくれていた。

 一番疲れているのは彼女だろう。

 せめて今は可能な限り休んでもらって、明日に備えたいと思っている。


「ねぇアレン、最近ぼーっとしてることが多いよね」

「え、あ……うん。ちょっと考え事をしてて」

「それって先生が言ってたこと?」

「そうだよ」


 ニナは僕と一緒に先生の話を聞いている。

 悪魔や内通者の事情を知っているから、気兼ねなく話せる。

 

「あれから何かわかった?」

「ううん、残念ながら何もないよ。怪しい人がいないか見てるんだけど……中々わからないね」

「大丈夫? 疲れてるよね。誰かを疑って見るのって、気持ちも落ち込むから」

「それはニナも同じでしょ? 僕は大丈夫だよ。こうして話ができる相手がいるんだから」


 相談し合える人がいる。

 それだけで十分な心の支えになるんだ。

 ニナも秘密を共有してくれたことは、僕にとっての支えになっている。


「……本当にいるのかな」

「先生はそう言っているね」

「うん。でも……嫌だよね。近くにいる誰かがそうかもって思うと……不安だよ」

「僕もだよ」


 だからこそ、信頼できる相手の存在は大きい。

 ニナが傍にいる。

 僕が傍にいる。

 その安心感が身に染みる。


 時間は過ぎていく。


 交代の時間になると、ジーク君たちが休息から目覚めてやってきた。


「おう。交代するぜ」

「眠そうだね」

「そりゃなぁ~ 夜だし」

「シャキッとしなさいよ!」


 フィオさんがジーク君の背中を叩く。

 あまり効果はなかったみたいだ。

 彼は大あくびをする。


「あはは……フレンダさんも休めたかな?」

「はい。今度は二人が休んでください」

「うん。行こうかニナ」

「うん!」


 眠気はまだないけど、休んでおくためテントの中へ入ろうとする。

 その時、フレンダさんが何かに気付いた。


「待ってください! 森のほうに何かいます」

「何か!? 魔獣か?」

「いえ、これは……人? 暗くてハッキリと見えませんがこっちに向ってきています」


 人ってことは盗賊だろうか?

 夜襲をしかけてくるのかもしれない。


「フレンダさんは騎士さんたちに伝えて! 僕も確かめてみるよ!」

「はい!」


 僕はギフトを発動する。

 道中で話に出ていたことを実践する。


「【動物たちと茶会】」


 本を開き、主人公の能力を発動。

 千変万化により、僕の身体は大きな鷹へと変わる。


「おお! アレンが変身した!」

「ちょっと見てくるよ」

「しゃべれんのか! とにかく頼んだぜ」


 僕は飛び立ち、森のほうへ視線を向ける。

 暗く木々に隠れて見えにくい。

 それでも確かにいる。

 否、感じる。

 もはや見るまでもない。

 この異様な気配は魔獣から感じたものと同じった。

 姿形は人でも、それは人間ではない。


「アンデット?」


 死者の群れ。

 百を超える屍たちが行進する。

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