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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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24.悪魔の力

 彼との再会は予想していなかった。

 あまり気分がよくない。

 できれば会いたくなかった人物だから?

 本当にそれだけ?

 どうしたなのかわからないけど、僕は嫌な寒気を感じていた。


「悪いが次は俺が行くよ。君たちはよく見ているといい」


 そう言って彼は試験官の前に赴く。


「なんだあいつ、誰だ?」

「はぁ……ほんとあんたって他人に興味ないよね」

「ん? そんなことねーよ」

「はいはい。自覚なしね」


 フィオさんも彼が退学したという噂を聞いていたのだろう。

 ジーク君は相変わらずみたいだけど。

 

「元気そうだね、彼」

「……」

「ニナ?」

「アレン、なんでかわからないけど……怖い気がする」


 それは違和感だ。

 以前の彼を知っているからこそ感じられる。

 僕だけじゃなくてニナもだった。

 上手く表現できない嫌な予感がする。

 僕たちが知るラスト君とはなにかが違うような……。


 僕たちは彼に注目する。

 その場にいる全員が、彼のことを見ていた。

 ニナとは別の意味で彼も注目の的だ。


「始めなさい」


 試験官の一言を合図に、彼はギフトを発動させる。

 荒々しく吹き荒れる風を纏う。

 風は四方へ拡散し、僕たちも風圧に耐える。

 さすがに彼のギフトは強力だ。

 ただ、以前と違うかと問われたそうでもない気がする。

 気のせいだったのだろうか?

 僕はわずかに気を抜いた。


「もういいぞ」

「……」

「おい、もうやめろと言っているんだ」


 試験官が停止を求めたがラスト君は無視している。

 風はさらに強くなり、僕たちも立っているのがやっとの強風が訓練室に発生している。

 痺れを切らした試験官は怒鳴り声をあげた。


「いい加減にしろ!」

「――うるさい」


 直後、試験官は壁に衝突していた。

 吹き飛ばされたのだ。

 やったのはもちろんラスト君だった。

 その場にいた全員が、一瞬何が起こったかわからず困惑する。

 最初に声をあげたのはニナだ。


「な、なにをしてるんだよ!」

「なにって? 邪魔をするからこうなるんだ。お前たちもだぞ」

「え?」


 感じたのは鋭い敵意。

 いいや、殺気だ。

 僕と二ナの頭には、あの時戦った魔獣と同等の恐怖が過る。


「まずは整理しようか」


 ニヤリと笑みを浮かべた彼は指をならす。

 すると風の向きが変わり、複雑な方向から僕たちを襲う。


「くっ、あ! ニナ!」


 違う。

 僕だけが影響を受けていない。

 周りにいたニナたちが揃って吹き飛ばされ一か所に集められてしまう。

 ラスト君はもう一度指を鳴らした。

 風は彼女たちを囲むように吹く。

 まるでトルネードの中心に放り込まれたように。


「こ、これは風の壁?」

「んなもんオレがぶっ壊してやるよ!」

「待って!」


 風に向って拳を振るおうとしたジーク君をニナがとめた。

 彼女は炎を操り、風の壁を攻撃する。

 しかし、高密度の炎は一瞬にしてかき消えてしまった。


「それには触れないほうがいいよ。鋼鉄も紙切れのように切断する威力だ。下手に触れれば真っ二つになるよ」

「……どういう、つもりですか」


 みんなは風の壁に捕らえられた。

 僕一人を除いて。


「誰のせいかというのを考えたんだよ」

「え?」


 脈絡もなく彼は語り出す。


「どうして俺の人生は狂った? ニナが俺のものにならないのはどうしてだ? 俺の立場が危うくなったのはなぜだ?」

「そんなの……」


 自業自得だ。

 誰だってそう思うだろう。

 だけど彼は違った。


「気づいたんだよ。俺以外の全てが悪いんだ」

「なにを言って……」

「俺は誰より優れている。誰より正しい。俺に従わない奴らの存在そのものが悪い。だったら全ていなくなればいい。俺に服従する者以外は、この世界に必要ないんだ」

「さっきから何を言ってるんですか? 悪ふざけが過ぎますよ! みんなを解放してください」

 

 彼は不敵に笑う。


「スッキリしたよ。邪魔な奴らを殺すのは……手始めに俺を裏切った馬鹿どもを殺したんだ」

「……え?」


 殺した?

 裏切った馬鹿ども?

 そういえば……彼と一緒にいた取り巻きの三人をずっと見かけない。


「ま、まさか……君が殺したんですか?」

「ああ。奴らも俺の邪魔をした愚か者だ。この世界には必要ない存在なんだよ。それはお前もだ。アレン・プラトニア」


 彼は三度指を鳴らした。

 特に変化は見られない。

 と、思った直後に後ろから声がする。


「あ、アレン! 風が縮まってきてる!」

「なっ……」

「彼女たちは人質だ。俺を止めなければ全員切り刻まれてしまうぞ」

「正気ですか!」


 僕以外の一年生全員が閉じ込められている。

 彼は今、数百人の命を握っている。


「もちろんだよ。俺はとても冷静だ。お前は特に気に入らない。だから苦しめて殺すと決めていた」


 なんだ?

 彼の足元に光が走っている。


「お前のせいでニナたちが死ぬ。恨まれるだろうなぁ」


 そのニヤケ顔よりも目が離せない。

 光の線は円を描き、謎の文字を刻んでいく。

 

 ありえない。

 その力の名前を僕は知っている。

 数々の本の中で描かれ、過去の戦いでも記されていた。

 かつて人類を脅かした者たちの力……。

 彼から感じる違和感の正体に僕は気づいてしまう。


「……魔術?」

「その通りだよ。見えるか? これが俺だ! 俺の本当の力だ!」


 彼は風を纏う。

 風は黒く色づき、壁や天井を削っていく。

 

「さぁ苦しんでもらうぞ! アレン・プラトニア!」


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