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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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23.再会

 筆記試験を終えた僕たちは、次の試験を受けるために移動する。

 向かった先は訓練室だった。

 これから行われる実技試験では、各々のギフトの成長を確認する。

 ギフトによって確認方法は異なる為、僕たちは該当するグループの列に並ぶ。


「ニナはあたしとおんなじ列だよね」

「アレンもだよ」

「そうなの?」

「うん。先生にそうするように言われているんだ」


 僕のギフトは僕固有のもので、他の分類に当てはまらない。

 そういう場合はギフトの効果によって近い系統の試験を受けることになる。

 僕たちが並ぶのは、試験官にギフトの効果を見せる形式だ。


「んじゃオレとフレンダだけ別か」

「あ、えっと、私もここでいいので」

「まじか! オレだけ別かよ」

「残念だったね。脳筋」

「うっせーぞフィオ! てめぇも似たようなもんだろうが!」

「ふ、二人とも落ち着いて。もうすぐ試験が始まるよ」


 この二人は相変わらずだな。

 普段なら温かく見守るところだけど、今は試験中だから宥めないと。


「くっそ、オレだけ仲間外れみてーじゃねーかよ」

「そんなことないよ。同じ部屋にはいるんだし、終わったらすぐ集まろう」

「アレン……やっぱ優しいなお前。どっかの女とは大違いだ」

「あたしはあんたにだけよ」


 ギリギリとにらみ合いながらジーク君は自分の列に向かった。

 残る僕たちは列に並んで順番を待つ。

 先頭の生徒から順番にギフトを披露している。

 雷を操るギフト、治癒のギフト、熱線を出すギフト。

 ここに並んでいる人たちは、効果がわかりやすかったり派だなギフトホルダーだ。

 遠目に試験を受ける人たちを見ながら思う。


「ギフトっていろんな種類があよね」 

「そうだね~ ギフトって、結局誰が配ってるのかな」

「そんなの神様じゃん?」


 フィオさんが答えた通り、ギフトは神様から与えられた恩恵だと言われている。

 試験で問われることのないほど常識だ。

 ニナも当然知っている。

 

「うーん。なんでだろうな~ 時々ね、思うんだ。神様って本当にいるのかなって」

「いるんじゃない?」

「でも私は会ったことないよ」

「あたしだってないよ」


 ニナと同じことを、僕も思ったことがある。

 神様がいるのかどうか。

 もしいるのなら……イジワルだと思ったことがあった。

 人の運命を決定してしまう。

 その人の意思に関わらず、道のりを定めてしまう。

 それがいいことなのかどうか、僕にはわからなかった。


「神様がいるなら会ってみたいよね。ね、アレンもそう思わない?」

「そうだね。会ってみたいな」


 会えたら聞いてみたいものだ。

 どうして神様は、僕にこのギフトを与えたのか。


 雑談で盛り上がり数分が経過した。

 未だに順番は遠い。

 一年生だけでもかなりの人数がいるし、僕たちの列は特に多い。

 まだまだ時間がかかりそうだと思った時、隣の列でジーク君が呼ばれた。


「おっし!」


 ジーク君が試験官の前へ出る。

 彼の前には鉄の柱が用意されていた。


「おらっ!」


 それを思いっきり殴り壊した。

 彼のギフトは肉体を変化、強化させるもの。

 それゆえの効果の確認方法みたいだけど、あれも十分に派手だ。

 粉々になった鉄の柱を前に、ジーク君は満足そうな表情を見せている。


「すごいね。ジーク君は」

「あれくらい普通でしょ。普段からやってることだし」


 僕の独り言にフィオさんが反応した。

 彼女もジーク君を見ていたらしい。

 それに、なんだかんだいって彼のことを認めているのがわかる。


「仲良しだよね。二人とも」

「は、は? 別に普通でしょ? 昔から一緒にいるんだから」


 照れてぶんぶんと手を振る彼女を見て、僕は微笑ましさに笑う。

 それから暇になったジーク君も合流して、他愛のない話をしながら順番を待つ。


「次の者前へ!」

「あ、やっとだね。誰から行く?」

「ニナからでいいと思うよ」

「わかった! じゃあお先に行ってくるね」


 ニナが試験官の前へ出る。

 周囲の視線が彼女に集まった。

 

「では始めなさい」

「はい!」


 彼女は一年生の中でも注目されている。

 猛々しく燃える炎にみんなが反応し、おおーと声を漏らす。


「そこまで」


 あっという間に彼女の順番は終わった。

 戻ってきたニナに僕は言う。


「お疲れ様」

「ありがとう。次はアレンの番だよ!」

「え、いいの?」

「あたしはいいよ」

「私も大丈夫です」


 フィオさんとフレンダさんがそう言ってくれた。

 試験監督が次の生徒を呼ぶ。

 さすがに少し緊張する。


「見せつけてきてよ。アレンの格好いいところ!」

「うん」


 ニナのエールに力を貰って、僕は一歩を踏み出そうとした。

 そんな僕の隣を、一人の男子生徒が通り過ぎる。

 割り込みだ。

 ニナが気付いて注意する。


「あ、ちょっと駄目だよ! 次はアレンの……」


 だけど途中から彼女の声は小さくなった。

 理由は明白だった。

 僕の前に割り込んだのは……。


「ラスト君……」

「やぁニナ、久しぶりだね」


 一月半ぶりに彼の顔を見た。

 学園内に魔獣を持ち込み、大惨事を引き起こした張本人。

 ずっと学園には来ていなかったら、退学させられたという噂も流れていた。

 試験を受けに来ているということは、まだ学園の生徒らしい。


「君も久しぶりだね。アレン」

「……はい」

「どうした? 元気がないじゃないか。もっと堂々としていればいい。魔獣を倒せるくらい強いんだからな」

「っ……」


 今の嫌味だ。

 僕を認めている目じゃない。

 あざ笑っている。

 あの時からなにも変わっていない目に、僕はぞっとする。

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